3 / 10
3. メッツァ古代遺跡群
しおりを挟む
それからカイの宣言通り、昼食をともにするようになった。彼は隣国に留学していたというだけあって博識だ。現代魔術理論と古代魔法文明に関する議論はよく話が盛り上がった。
一通りの事前調査が進み、メッツァ古代遺跡群を一つ一つ攻略していくことになった。こういった遺跡群は現代で失われた魔術の宝庫だ。研究にも直接応用できそう。
今回の出張は一週間、遺跡にほど近いメッツァの集落に宿をとる。
「あら、王都からはるばるどうも。予約のあった王宮魔導士さんたちだね。部屋は二部屋でよいかしら?」
「はい」
「あと食事は朝食だけでよかったかしら?」
「はい」
夕飯までに戻れるか分からないし、外食する予定だから問題なかった。
初日は一番小さい遺跡から攻める。古代王妃の墓所だ。すぐに最深部まで到達した。棺を囲むように、金銀財宝がうずたかく積まれている。
「うわあ、キレイ!」
思わず声をあげた。まばゆいばかりの財宝の中、ひときわ目を引いたのは、大きな赤い宝玉を囲むように金の花弁があしらわれたペンダントだった。たしか、古代文明では自分の瞳の色と同じ石をあしらったペンダントを、結婚の申し込みとして相手に贈る風習があったはず。これはきっと、王が王妃に贈った、愛の証なのだろう。
「おい、不用意に触るなよ。呪いがかけられているかもしれん。」
「言われなくてもわかっています。」
内部の記録をとりながら、呪術がかかっていそうな宝具を呪術プロテクターのついたケースに放り込む。すぐにいっぱいになってしまった。今日のところはこれくらいにしとくか。
「戻るぞ。」
「は、はい。」
二人で部屋を出た時だった。
ごおおおおおおおおおおおおおおおおおお
世界が割れたかと思うほどの轟音が耳に響く。
「きゃあ。」
罠だ。往路で全ての罠を封じたはずだったのに。だから油断していた。部屋を出た直後に作動する仕掛けがまだ残っていたのか。床が抜けてそのまま落下する。
「ブラスト」
カイが落ちていく先に向けて風魔法を発射する。ふわっと押し返されて自然落下が減速した。我々は緩やかに地面に着地した。
「一旦落ち着こう。あの魔法は単純に床を崩落させただけだ。私たちは、亜空間に飛ばされたわけではない。」
天井を見上げると、大穴が開いている。私たちがさっきまでいたのはあそこか。だいぶ落ちてきてしまったな。
「先ほどのように風魔法を連続で発射すれば上まで登れるでしょうか?」
「それでは効率が悪いし、危険も伴う。もう少しいい方法を考えよう。」
それから二人で周辺の調査をした。少し先に行くと、いくつものしゃれこうべが転がっていた。最深部にたどり着く前のどこかのトラップにハマり、この階層に落下した盗賊かなにかの躯だろう。カイは意外と信心深いのか、しゃれこうべたちに女神の祈りを捧げていた。
「おそらくだが、この王妃墓を作った者たちは、この階層に落ちた人間が生存していることを想定していない。」
「そうですね。」
「つまり、この地下層を作った時に使用した階段がまだ残っているんじゃないか?」
「ここは小さい遺跡ですし隈なく探せば痕跡が見つかる可能性はありますね。」
「ああ。」
その後何時間も捜索したけど、見つからない。やっぱり落ちてきた穴から風魔法で出るしかないのか。
「今日はもう遅いから、ここで野宿しよう。」
「ええ!?」
一応、こういうことも想定して、数日くらい閉じ込められても大丈夫なように食料や毛布は持ってきている。水は水魔法で空間中の水蒸気を水に替えることができる。
――唯一最大の問題はこの人と一緒に野宿をするということだろうか?
一通りの事前調査が進み、メッツァ古代遺跡群を一つ一つ攻略していくことになった。こういった遺跡群は現代で失われた魔術の宝庫だ。研究にも直接応用できそう。
今回の出張は一週間、遺跡にほど近いメッツァの集落に宿をとる。
「あら、王都からはるばるどうも。予約のあった王宮魔導士さんたちだね。部屋は二部屋でよいかしら?」
「はい」
「あと食事は朝食だけでよかったかしら?」
「はい」
夕飯までに戻れるか分からないし、外食する予定だから問題なかった。
初日は一番小さい遺跡から攻める。古代王妃の墓所だ。すぐに最深部まで到達した。棺を囲むように、金銀財宝がうずたかく積まれている。
「うわあ、キレイ!」
思わず声をあげた。まばゆいばかりの財宝の中、ひときわ目を引いたのは、大きな赤い宝玉を囲むように金の花弁があしらわれたペンダントだった。たしか、古代文明では自分の瞳の色と同じ石をあしらったペンダントを、結婚の申し込みとして相手に贈る風習があったはず。これはきっと、王が王妃に贈った、愛の証なのだろう。
「おい、不用意に触るなよ。呪いがかけられているかもしれん。」
「言われなくてもわかっています。」
内部の記録をとりながら、呪術がかかっていそうな宝具を呪術プロテクターのついたケースに放り込む。すぐにいっぱいになってしまった。今日のところはこれくらいにしとくか。
「戻るぞ。」
「は、はい。」
二人で部屋を出た時だった。
ごおおおおおおおおおおおおおおおおおお
世界が割れたかと思うほどの轟音が耳に響く。
「きゃあ。」
罠だ。往路で全ての罠を封じたはずだったのに。だから油断していた。部屋を出た直後に作動する仕掛けがまだ残っていたのか。床が抜けてそのまま落下する。
「ブラスト」
カイが落ちていく先に向けて風魔法を発射する。ふわっと押し返されて自然落下が減速した。我々は緩やかに地面に着地した。
「一旦落ち着こう。あの魔法は単純に床を崩落させただけだ。私たちは、亜空間に飛ばされたわけではない。」
天井を見上げると、大穴が開いている。私たちがさっきまでいたのはあそこか。だいぶ落ちてきてしまったな。
「先ほどのように風魔法を連続で発射すれば上まで登れるでしょうか?」
「それでは効率が悪いし、危険も伴う。もう少しいい方法を考えよう。」
それから二人で周辺の調査をした。少し先に行くと、いくつものしゃれこうべが転がっていた。最深部にたどり着く前のどこかのトラップにハマり、この階層に落下した盗賊かなにかの躯だろう。カイは意外と信心深いのか、しゃれこうべたちに女神の祈りを捧げていた。
「おそらくだが、この王妃墓を作った者たちは、この階層に落ちた人間が生存していることを想定していない。」
「そうですね。」
「つまり、この地下層を作った時に使用した階段がまだ残っているんじゃないか?」
「ここは小さい遺跡ですし隈なく探せば痕跡が見つかる可能性はありますね。」
「ああ。」
その後何時間も捜索したけど、見つからない。やっぱり落ちてきた穴から風魔法で出るしかないのか。
「今日はもう遅いから、ここで野宿しよう。」
「ええ!?」
一応、こういうことも想定して、数日くらい閉じ込められても大丈夫なように食料や毛布は持ってきている。水は水魔法で空間中の水蒸気を水に替えることができる。
――唯一最大の問題はこの人と一緒に野宿をするということだろうか?
76
あなたにおすすめの小説
番ではなくなった私たち
拝詩ルルー
恋愛
アンは薬屋の一人娘だ。ハスキー犬の獣人のラルフとは幼馴染で、彼がアンのことを番だと言って猛烈なアプローチをした結果、二人は晴れて恋人同士になった。
ラルフは恵まれた体躯と素晴らしい剣の腕前から、勇者パーティーにスカウトされ、魔王討伐の旅について行くことに。
──それから二年後。魔王は倒されたが、番の絆を失ってしまったラルフが街に戻って来た。
アンとラルフの恋の行方は……?
※全5話の短編です。
ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう
音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。
幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。
事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。
しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。
己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。
修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。
私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。
いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。
「僕には想い合う相手いる!」
初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。
小説家になろうさまにも登録しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる