【R18】お稲荷さんの神隠し~死に場所を探していたら、狐の神使に攫われました

志熊みゅう

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2. 執着

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 俺は、お稲荷様の使いの狐。"穂高"という名前はお稲荷様につけてもらった。300年以上、この土地で、この稲荷神社を守っている。昔は村の人たちが皆親切で、よく油揚げや稲荷寿司をお供えしてくれた。お祭りはとってもにぎやかで、みんながどんちゃん騒ぎをしながら、飲み食いするのを楽しく見守ってきた。

 でも、段々と人が神社の周りから離れ、この辺りは"町はずれ"と呼ばれるようになった。神職もいつの間にかいなくなり、神社は荒れ放題。お稲荷様も来てくれなくなった。俺はずっとずっと一人でこの場所にいた。

 ある日、小さな女の子が神社に来るようになった。毎日お願い事をしている。家族に関する悩みがあるらしい。こんな神様も来ない廃れた神社に来てもしょうがないのに――だから同じくらい年代の少年に化けて、声をかけた。

 その子は"栞"と名乗った。あまり笑わない子だと思ったけれど、俺と話しているとケタケタとよく笑うようになった。それが、とてもかわいらしくて、その陽だまりのような笑顔に心が癒された。栞がたまに来ない日は、日が暮れるまで境内で彼女を待った。いつの間にか――彼女に依存していった。

 だから、自分の力を使って、色々なことをした。神様じゃないから、天気を変えたり、作物を育てたり、そんな大げさなことはできない。でも、眷属けんぞくの自分にも多少のことはできる。彼女のお願いとは裏腹に、彼女が孤独になるように仕向けた。学校で友達ができないように、家で家族に虐げられるように。そうすると、彼女が自分に、自分だけに懐いてくれるようになった。こんなことをしては、ダメだと思ったけれど、止められなかった。

 ――いつしか俺は人間である彼女を本気で番にしたいと思った。番にして、ずっと二人でこの神社を守りたい。

 そんな時だった。スーツを着た仰々しい人たちが、たくさん神社にやってきた。聞けば、この神社を取り壊して、森を切り崩して、新しいショッピングセンターを作るらしい。俺はゾッとした。役目を終えた神の使いは天界に帰らなければならない。そうしたら――二度と栞に会えなくなる。

 だから、意を決して、栞に俺の正体を明かして、番になって欲しい、そう打ち明けようと思った。でも高校を卒業する日、神社に訪れた栞はいつになく、神妙な顔つきをしていた。

「俺、栞に言わなきゃいけないことがある。」

「私、穂高くんに話さないといけないことがあるの。」

 俺たちは、ほぼ同時に言ったと思う。でも栞の表情をみて、栞の話をちゃんと聞かなくちゃと思った。

「穂高くん、私東京で就職が決まっているの。だから、今日でここに来るのは最後。学校は全然友達ができなかったけど、穂高くんに出会えてよかった。今まで仲良くしてくれて、本当にありがとう。」

 そんな、栞をみて何も言えなくなった。東京に行ったら俺の力は届かなくなる。たぶん栞は人間の社会で仕事をし、友達ができ、やがて恋人を作り結婚し、子を成し、家庭を築くだろう。それが一番いい。いいに決まっている。だから『頑張れ』といって見送って、『またな』って言って送り出した。きっと東京みたいに大きくて刺激的な街に出たら、こんな小さくて廃れた神社のことは、すぐに忘れる。その間に神社は取り壊されて自分は天界に戻る。もう二度と会えないだろうと思ったけれど、また会いたいという希望をこめて、無理やり作った笑顔でそういった。

 彼女が去った境内はひんやりとして、妙に静かだった。もともと一人だったはずなのに、心にぽっかり穴が開いて、日に日にその穴が広がっていくようだった。

 お稲荷様からは、もういつでも天界に戻ってきていいと言われた。天界はいいところだ。みんな穏やかに悠久の時を過ごしている。争いも餓えや憂いもない。――でも、もしかしたら栞が戻ってきてくれるんじゃないかと思って、俺は境内を離れられずにいた。

 そうこうしているうちに工事業者が来て、次々と神社を破壊していった。栞と鬼ごっこやかくれんぼをした記憶がよみがえってきて、自然と涙が零れ落ちた。

 ついに本殿が黄色い重機で取り壊された。ぐちゃぐちゃになった本殿をみて、俺はここにはいれないと悟った。本殿の破片を拾い上げて、300年の間のことを思い出した。でも色鮮やかに思い出せるのは、栞と過ごした日々だけだった。栞に会いたい、最後に一目でいいから、栞に会いたい。――そう願った。

 工事が休みの日、俺はぼーっとしながら境内があった場所に座っていた。もうがれきの山になったその場所に。ドサッと、参道の入り口近くで、変な音がした。今日は誰も来ない日のはずなのに……。おかしいなと思って近づくと、ずっとずっと会いたかった人がいた。そのまま「栞」と叫んで、抱きつきたかった。でも様子がおかしい。最後に見た時よりはるかに痩せてしまっているし、目の焦点も定まっていない。

 そのまま彼女の後をつけることにした。自分と同じようにばらばらになった境内をみて、がれきの破片を拾い上げた。そして、優しく元の場所に戻すと、森の中へと消えていった。見失わないように後を追った。

 森の奥で、栞は奇妙な行動をとり始めた。鞄から縄を取り出し、木に括り付けた。何か動物でも罠にかけるつもりなのだろうか?そして、靴を脱ぎ、丁寧にその靴を揃えた。何をやっているのか、ますますよく分からなくなった。不思議に思って彼女を凝視した。すると次の瞬間、思わぬ行動に出た。鞄を踏み台にして、輪になった縄に首をかけようとしたのだ。

「ダメだ!自分で死んだら、現世から魂が離れられなくなる。」

 俺の足が勝手に動いた。気づいた時には、彼女を縄から引きはがしていた。絶対に動けないように後ろから羽交い絞めにした。

「止めないで、離して!私は死にたいの!」

 死にたい?どうして?俺が誰なのか、分からなかったのか、栞は俺の手の中で暴れていた。

「何があったんだ?栞、落ち着け。」

 やっと気づいてくれたのか、栞がこっちを向いた。

「ほだか……くん?」

 俺は、自分がお稲荷様の使いの狐であることを明かした。もっと驚くかと思ったけど、案外素直に栞は受け入れてくれた。それから、栞の東京での生活を聞いた。栞の目から大粒の涙が零れ落ちた。東京の話をする間、栞はずっと泣いていた。栞がこんなつらい思いをするなら、東京に行くなんて、全力で止めればよかった。そして絶対に番にして、天界に連れ帰ると心に決めた。

 俺たち、神の眷属けんぞくは、人間とは違う。番は生涯たった一人だけ。番になると、栞の魂は人間の輪廻から外れる。例え家族であっても人間たちとの縁は切れるし、悠久の時を自分と一緒に過ごすことになる。この辺の説明を、本当はもっとちゃんとしなくちゃいけないのだけど、説明して栞に断られるのが怖かった。彼女が自分ではなく、自死を選んだら、彼女の魂は永遠に現世を彷徨うことになる。そうしたら番にすることもできないし、もう二度と会えなくなる。

「もう人間に戻れなくなるけど、それでもいい?」

「ねえ穂高くん、さっきまで死のうとしていた人にそれ聞く?当てもなく現世を彷徨うなら――いっそ穂高くんと一緒に行きたい。」

 そう言われて、思わず衝動が抑えられず、彼女に接吻をした。彼女は安心したように目を閉じて、静かに俺を受け入れてくれた。でも番になるには、本当の意味での"交わり"が必要だ。

「栞、番ってその……、俺と夫婦になることなんだけど、その覚悟はできている?」

 泣き腫らした赤くうるんだ目でこちらを見つめ、栞は静かに頷いた。

「今すぐにでも栞を連れて行きたいから、今から夫婦になるのに必要なことをしたいんだけどいい?」

「夫婦になるのに必要なこと!?」

 栞の顔が真っ赤になった。俺は鼻を彼女の首筋に鼻をつけた。

「他の雄の匂いがしないから、初めてだよね?優しくするから、俺に身を預けて欲しい。」

「……うん。」

 今の人間は夫婦になる前にも男女の営みをすることがあると聞いていたが、栞にその経験はないようで安心した。そのまま、再び唇を重ねた。今度はもっと深く。舌と舌を絡ませると、栞の表情が蕩けた。

「栞のその顔、かわいい。」

 早く一緒になりたい。でも、人間である彼女に眷属けんぞくである自分の常識や欲望をそのままぶつけてはいけない。栞の着ている衣服を破かないように、一つ一つ丁寧に開けさせる。胸に付けているものの外し方が分からず、少し困った。

「あ、これね。後ろ側のホックを外すの。」

 栞の乳房がむき出しになる。白くて、乳輪が花びらのような桃色だった。ゴクリと唾を飲みこんだ。

「きれいな、乳だね。」

「そ、そうかな?他人と比べたことないから分からないや。」

「ううん。栞のだから、きれいなんだよ。それとここは栞と一緒で恥ずかしがり屋さんかな。」

 宝物を触るように、やわらかい双丘に揉む。乳輪に触れていくと、隠れた乳頭が少しずつ顔を出した。口に含んで舌先でなめると、栞がかわいい声を出した。

「……きゃ!穂高くん。」

「ぷっくりとしてかわいい。」

 そのまま舌先で転がすように、乳頭を舐めあげる。もう片方もおろそかにならないように、指ではじいて、つまんで。栞が気持ちよさそうに身を捩らす。

「あっ、あ、あぅ。」
 
「ねえ?栞、気持ちいい?」

「初めてだからよく分からない。でもお腹がキュッとする。」

「そうかい?じゃあ、もっと気持ちよくしていこうっか?」

 下履きに手を伸ばすと、花びらの中の蜜口に触れた。

「分かる?もう、ここ蜜があふれ出している。まずは栞が一番気持ちよくなれるところを弄っていくね。」

「ひゃあ、あ、あ。」

 一番敏感な花芽をなぶると、先程よりも栞の顔を赤くなって、呼吸も荒くなった。栞がかわいい、好きだ、いますぐにでも一つになりたいという気持ちを何とか抑えて、彼女に聞いた。

「――気持ちいい?栞?」 

「分かんない。でも、でもなんか来ちゃう。変なの来ちゃう。ひゃ。」

「達しそうなんだね。大丈夫だから、一回、気持ちよくなろう。」 

 指の動きが早くして、栞を抱き寄せると、嬌声と共に大きく体が跳ねた。うるんだ瞳でこちらを見つめる栞が愛おしくて仕方がない。

「そんなに悦かった?栞、目がとろんとしている。」

 我慢できなくて噛みつくようにキスをした。貪り合うようなキスをしながら、静かに蜜口に触れ、そのまま中に指を入れた。

「やっぱり狭い。初めてだから痛いかもしれないけど、ゆっくりやるから段々慣れていこうね。」

「うん。」

 下履きをはぎ取って、蜜をこぼさぬように蜜口を舐める。花芽を丁寧に舐めあげていく。

「だめ。そこは汚いから!」

「――栞に汚いところなんてない。心も体もきれいだよ。」

 舌で膨らんだ花芽を舐めて、蜜壺にも指を差し入れる。中はトロトロで蜜が滴り、大きくうねっている。

「一緒に弄っちゃいや。ああ。」

 蜜壺をまさぐっていると、栞の呼吸がまた荒くなった。彼女のいいところはここか。執拗にそこを指でこすりながら、チュッと花芽を吸った。栞はすぐにまた達したようで、身体が大きく跳ねた。こちらを見つめる栞の表情は、快楽を貪る雌そのものだった。

「こんなかわいい栞を見せられて、俺もう限界だよ。」

「……ねえ穂高くん、早く一緒になろう?」

 袴の紐をほどいて、俺の欲望の全てを彼女にぶつけた。初めて味わう栞の中は狭かった。でも、あったかくて、トロトロで、すごくよかった。

「栞、痛いよな。ゆっくりやるから、ごめんな。」

 すぐに痛みで彼女の額に冷や汗がにじんでいるのに気づいた。大事にしてやらないと。両腕で抱き寄せて、頭をなでた。そのまま動かさずにいると、徐々に彼女の中が俺の形に馴染んでいくのが分かった。

「栞の中、あったかい。気持ちいい。少し動いていい?」

「うん。」

 ゆっくりと、じんわりと、少しずつ動きはじめた。そのまま、また深い口づけをして、舌と舌を絡ませる。俺が動くたびに彼女の中は締まっていく。

「もう、そろそろ出すぞ。後戻りできなくなるけど、本当にいい?」

「うん。穂高くん、愛している。」

 そのまま、俺は達し、彼女の中に精を放った。

「栞、好きだよ。栞の中、すごくうねっていて、とっても気持ちよかった。」

 愛おしくて、ギュッと栞を抱きしめた。

「穂高くん、なんか変、身体が変。」

 眷属けんぞくと人間は魂から違う。身体の変化が現れた栞は、戸惑った様子でこちらを見て、俺にしがみついた。

「今は少し苦しいかもしれないけれど、すぐに落ち着くはずだから。」

 この変化は痛みこそないが、身の置き所の無い苦痛を伴う。だから、俺は少しだけ自分の力を使った。栞は意識を失った。

 やがて彼女の耳が獣耳に変わり、にょきっと尻尾も生えた。それが栞が番になった証拠だった。俺と同じ耳と尻尾が愛おしくて何度もなめた。そして、なめられてくすぐったかったのか、栞が薄く目をひらいた。

「やっと……やっと栞を自分のものに出来た。」

 うれしくて、うれしくて、本当にうれしくて、栞にそう告げた。

「あ、あれ!?私にも耳と尻尾が生えている!」

 お尻に生えた尻尾を見て、困惑した顔の栞もかわいかった。

「これで、栞もお稲荷様の眷属けんぞくの狐。立派な俺の番。」

眷属けんぞく?」

「お稲荷様のお使いってこと。日が明けたら、一緒に向こうの世界に行こう。」

「う、うん」

 胸の中の栞のぬくもりが、心にあいた大きな穴を少しずつ埋めていった。

 朝日が、天界へと続く金色の道になって、鳥居の跡から参道に差し込んだ。もう二度と離さないと心に誓い、栞の手をしっかりと握りしめて、その道を歩んだ。
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