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兄のアレは瀕死
しおりを挟む「ただいま」
「おかえり」
兄はまた性懲りもなくきている。
リビングをそっと覗こうとしたら目の前に兄が立っていた。
「ふぁっ?!」
「待っていた」
今まで僕に興味の欠片もなかったはずだが、この間といい、どういう風の吹き回しなのか。
腕を取られてリビングのソファーに誘導される。そのソファーに兄が腰かけ、兄の膝の上に僕が乗せられた。
前回もだが、この構図はおかしい。
「今日はこれを見てもらおうと思って」
前回と同じように動画を見せようとする。
警戒しながら薄目で画面を見ると、壮大な草原に突き抜けるような青い空が映っている。
そこには、シマウマが群れで走り、ライオンの子どもが母親に連れられながら、狩りの見本を見せている野生動物の動画だった。
薄目をやめて改めて内容を見る。
えっちな動画でなくホッとした。
しかし、すぐに場面は切り替わり、ワイルドな営みが映し出される。
「はわわわわわっ!!?」
あっという間にズボンの前が窮屈になった。
ライオンの交尾ごときで勃つとは、我ながら情けない。
「これもか? 朋は節操がないな」
兄はため息をついて顔を横に振る。
なぜそんな呆れた顔をするのか。
──理不尽!!
触れていた指先で形をなぞるように撫でられる。当然触れた瞬間にイッてしまった。
「~~~~っ!!」
撫でられているので、感覚がイッたままなのが辛い。
片手で自分の口元を押さえるが、跳ねる腰は抑えられず兄にしがみつく。
「気持ちよさそうだな」
羨ましそうな視線を向けられ、イラッとした。
この人ならざるロボ兄に、ダメなことだと理解してもらわなければならない。
ということで、同じことを相手にやり返せば、嫌なことなのだと相手は理解すると速水くんは言っていた。
はぁはぁと何回か呼吸を落ちつかせてから、辱められた腹いせのように兄の股間に触れる。
ほんの少しだけ反応はあったような、ないような?
自分のような反応はない。
数度擦ると少しひくりと反応があった。
やはりそれ以上の反応はない。
兄のアレは瀕死なのだろうか?
「朋……」
はぁ、と息を吐く兄に視線を移す。
兄は少し目元を赤くし瞳を潤ませていた。
「な、なに?」
兄に何が起こったのかと心配になる。
「ありがとう」
──なにが?!
嫌がらせを、嫌がらせで返しただけなのに、兄はお礼を言ってきた。
疑問符をいくつも浮かべていると、兄のアレの上に置いていた両手をとられ、再び感謝される。
「今まで反応したことがなかったのに、朋に触れられて生きてるんだって実感した」
やはり瀕死だったのか。
でも、なぜ蘇生したのか謎だ。
「そ、そうですか……それは良かったです?」
「だから、練習をしたいんだ」
「はい?」
「当然、勃たせる練習だ」
聞き間違いだろうか。少し耳が誤変換を起こしたらしい。
「もう一度オネガイシマス」
「勃たせる練習だ」
デジャブとはこのことか。
「が、頑張って?」
ソロプレイがオススメ、と気づいてもらいたい気持ちで応援した。
兄が首を捻って、顎に手を当てる。
「朋はすぐにイッちゃうことを気にしているんだよな?」
「え? まぁ、そうですね……」
気にしていることを言わないで欲しい。
「お互い助け合いが必要だと思うんだ」
「助け合い?」
唇を引き結び力強く兄が頷く。
「俺は試行錯誤した上で、ひとりだけの改善は見込めないということに先ほど思い至った。朋もひとりで改善しようとしても、成果が見られなかったという事だろう?」
ひとりで練習なんてしてないし、そもそも時間が解決してくれるものだと考えていたから、改善しようとする前段階で止めている。
もちろん、諦めているわけでなく、未来に託しているだけだ。
なので、うーんと唸るしかない。
そんなもの肯定も否定もしたくないから。
「お互いの利になるならば、協力すべきだと思う。これは、険しい道のりで、とても過酷なものになるだろうが力を合わせれば、よりよい未来を作れるはずだ」
空気を読まずに、兄は先に話を進めるので聞くのを放棄した。
「…………」
こちらはヌルヌルする中身が気になって気になって仕方がないのだ。敏感になって布が擦れるだけでも辛い。
そそくさと兄の膝から降りて風呂場へと向かった。
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