兄のやり方には思うところがある!

野犬 猫兄

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咥えちゃダメ

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「ただい……ま?」

「おかえり、朋」

 玄関のたたきに置かれた小さな腰掛椅子に、ぼんやりと座っている兄がいた。

「どうしたんですか?」

「朋……俺はダメな人間らしい」

 何を言い出すかと思えば、この歳になって挫折をやっと経験することになったようだ。

 いつも自信満々の兄しか見たことがないので不思議な感じがする。

 なんとなく胸がすくような、優越感を感じるような……その代わり、自分が矮小な生き物になったような気持ちにもなるので、浸るのはすぐにやめた。

 兄に慰められたことなど一度もないが、ここは弟として優しさを見せるべきだろう。

 ロボから、少しでも人間の心を取り戻して欲しい。

「兄さん、誰だってダメなところはあるんじゃないでしょうか? 人間味があると思いますし、完璧な人間なんて面白味に欠けると思うんですよね」

 弱さを見せる兄になら、今の僕も優しくなれるような気がしないでもない。

「そうか。完璧でなくてもいいのだな……」

 なぜかカバンを取り上げられ、小脇に抱えられ、リビングに連れていかれる。僕はそんなに小さい背丈ではないはずだ。それなのに、軽々と抱えられた。

「???」

 ローテーブルには、動画が流しっぱなしになっていた。

 相変わらず卑猥な喘ぎ声がそこから流れているが、兄はまったく気にする様子を見せない。

「?!」

 じわじわと僕の僕が元気になってくる。

 ソファーに座らされると、いきなり兄にジッパーを下ろされズボンを剥ぎ取られ、足を割開いた場所に陣取られる。

「ひゃぁっ?!」

 隠そうと伸ばした手も、兄に片手で拘束されてしまった。

 ──なんという羞恥プレイ!!!?

 今にもイキそうな僕のものをじっと見つめている。

 ふるふると震える哀れな僕のものは、見つめられているからか、深呼吸を繰り返しても萎える様子はない。

 こんなとき自分の身体さえコントロールもできないことに情けなさを感じる。

 ふぅっと兄がそこに息を吹きかけるとヒヤリと冷たい風がかかる。その刺激になんともいえないもどかしさを感じた。

「まだ、この間の返事を聞いてない」

「な、なんの話ですか?!」

「練習の話だ」

 兄がえっちな動画ばかり見ているのは、瀕死なへなちょこさんを元気にするためのトレーニングだというのはつい先日知ったばかりだ。

 しかし、この体勢は兄が話すたびにアソコに風があたり、なんとも言えない気持ちになる。

 腰を離そうとするが、すぐに引き戻された。

 前よりも兄の顔がアソコに近づき、無駄な努力をした気がする。

「うぅっ、なにがしたいんですか!」

「朋はすぐにイッてしまうのを何とかしたいんだったよな」

「そ……そう…でしたっけ?」

 なんとかしたいことになっているらしい。

 しかし、こんなものどうやって克服するというのか。

「どちらも克服できればWin-Winの関係になれると思うんだ」

 兄の話す吐息は、僕のものに刺激を与え続けている。

 だからだろう、ふるふると震える僕のものの先から、ぷくりと光るものが溢れはじめていた。──恥ずかしすぎて、消えてしまいたいっ!

「うぅっ、克服できるならそれに越したことはありませんがっ……あっ、くっ!」

「なにか問題でも?」

「ここここ、この体勢に意味あるんですかっ?!?!」

「もちろんだ。意味がないとでも思っているのか?」

 これは嫌がらせだろうか。

「あっ!」

 くすぐったさに腰を捻る。

 普段無表情な兄がまたもや羨ましげな表情をしている。

 見ている場所があらぬ場所だけに恥ずかしすぎた。

 兄からそっと顔を背けた。

「わ、わかりましたよ。お互いの協力をするという事ですよねっ! 早く顔を退けてくださっ、あっ!」

 再び腰を引き戻される。

「それなら、交渉成立だ」

 その直後パクリと兄は先を含む。

 ?!?!?!

「は?! ぁ~っ!」

 咥える兄にギョッとしながらも、当然のようにイッてしまった。

 しかも兄の口の中に放ってしまった。

 兄を見れば眉を寄せながら飲み込み、ちぅと更に吸っている。

「あっあっ、す、吸わないでっ?!」

 イッてから、吸われる快感で腰の震えが止まらない。

「あっ、あっ、あぅっ……はぅっ」

「今日も気持ちよさそうだな」

 誰のせいで、気持ちよくなっていると思っているのだと怒りたいところだが、瀕死の相棒をもつ兄にとっては禁句だろう。

 数秒後に、別の怒りと困惑がわいてくる。

「兄さん、何飲み込んでるんですか?! 口に入れるものじゃないし、咥えちゃダメなんです!」

 はぁはぁと荒い息をつきながら、羞恥に目頭が熱くなる。

「なぜ? 多角的に分析することは重要なファクターを理解する上でも必須だ。試せることはするべきだろう。何事もチャレンジすることは無駄にはならない。むしろ人生の糧となるものだ」

 兄の話が高度すぎるのか、言い訳がすぎるのか、わからなくなってくる。

「人が嫌なことはしちゃダメだと言っているんですよっ! 毎回、毎回、練習でこんなことするつもりじゃないですよね?!」

 そもそもがおかしい。病院に行って欲しい。いや、すでに行ったらしいが、もう手立てはないと言うことなのだろうか。

「過酷な練習になると言っておいたはずだが……特訓とも言えるな」

 確かにそんなこと言っていたが、巻き込まれた感が半端ない。弟のアレを咥えるなど、兄にとっても過酷すぎやしないか。

 ハードルを上げるのが好きなのか、これくらいのハードルはハードルだとも思っていないのか。

 やはり兄の気持ちはわからない。

「他の方はこんな治療をするんですか?」

「治療というものは医師が施してこそ、治療と呼ぶ。だから、これは練習だと言っているだろう。それに、前例がいくつもあって、そこに複数の要因があり、それを解明し、そして治験で実証され、初めて他者に広がりをみせていくものだ。俺の場合、朋にしか反応を見せないんだから、前例なんてあるわけがないだろう」

 それはそれで、如何なものかと思う。

 なんとか成功事例の母数を増やして欲しいが、対象が僕という固定された極めて稀なケースらしい。

 兄が反応するのは、僕の何かであるらしいが、今もって謎のため兄は解明にまで至っていないようだ。だからこそアレを元気にするための練習及び特訓なのだという。

 しかも、兄の兄が未だに瀕死なので、本当に僕に反応を示しているのかも微妙である。

 窓の外は暗い。

 そろそろ両親も戻ってくるだろう。

「ほら、父さんや母さんが帰ってきますよ。こんなところを見られたら、誤解して卒倒するかもしれません」

「なるほど。それは一理あるな」

「練習と言っても、さすがに理解は得られないでしょうからね」

「秘密の特訓という事だな」

 ロボの思考は一般人にはおおよそ理解不能なので、そうですね。と、頷いておいた。

 とりあえず兄の言など、どうでもいいのだ。兄の都合など優先していたら、理不尽なとばっちりばかりを受けるハメになりそうだ。

 夕飯でも作るかと準備を始める。

 兄は料理を作るその様子を背後から眺めていた。ピタリとそばにいるものだから邪魔で仕方がない。

 まだ、兄も帰らないようなので兄の分も作る。

 作り終えたところで父も母も帰ってきて、久しぶりに家族団欒で過ごした。

 団欒と言っても、会話がないのでものすごく静かだ。

 いつも通りである。

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