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高校3年生編
8.ケンカを売られたので買って対峙してみた
しおりを挟む勝ち誇ったような表情を見せていた主人公君が先ほどとは違い怪訝そうな表情を浮かべている。
それを横目に改めて元生徒会長を見やると、苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべて、怒りを隠そうともせず辺りに響き渡るような声でありもしない罪状を話し始めた。
「『混血のリン』はアヤトが『人間族』である事をバカにして数々の嫌がらせを行った!」
「アヤト?あぁ、そこの『人間族』か…それで?具体的には?」
興味もなかったので名前すら知らなかった…いや、多分、聞いたことはあったのだろうが…全くもってどうでも良いので忘れてしまっていた。
「アヤトの教科書を破いたり、ありもしない噂を流し『純血の一族』を唆す淫乱だと暴言を吐いたのだ!」
いや、最後は正解だろ。というか、その噂はリンが流したものではなく、皆が思っている事であり、たまたまソレを耳にした主人公君がリンを陥れるために利用しようとしたにすぎないだろう…
「それをリンがしたという証拠は?」
「アヤトがそう言って、教科書などは我らに見せてきたわ!」
などと自信満々に言い放つ『純血のライオン族』の元次代当主に「はぁ…」と溜め息をついてしまったのは仕方ないと思う。
「なるほど…ろくに調べもせず、ソレの言葉を盲信していると?」
「貴様!『狼のウィル』如きが!アヤトを『ソレ』呼ばわりか!」
「それはどうでも良い―…何を以てリンが苛めをしたのかと思えば…聞いて呆れる。」
そう言った俺の台詞に青筋を浮かべて何かを言おうとしていたが、俺はソレを遮った。
「先ず、この学園のセキュリティを思い出せ。許可証が持つ本来の趣旨はどのようなものか忘れているわけではないだろう?」
そこまで言うと主人公君があからさまに分からないと言ったような顔をした。
「何だ…『人間族』のお前は知らないのか?この学園に特待生として来たのに…通う学園の事は事前に調べておくものだろう?」
「貴様!」
「許可証無く特級クラスの校舎に侵入しようとしたならば、警報が鳴り即座に取り押さえられている。仮に許可証を発行したとしても、教室に入った際にはその時間帯も詳細に記録されているはずだろう?」
「そんな事、常識だろうが!先程から我らに対して不敬だぞ!」
「はぁ…まーだ分からないのか?許可証を発行した事実もないし、侵入した事実もない―…リンはそこの『人間族』に近寄ってすらいないと証明できたはずだが?」
「っ…し、しかし、外なら―…」
「それこそありえないだろ。お前らがずっと一緒に居たんだから。それに、リンには警護として『純血の熊族』の者が数名ついているし…まだ、無実を認めたくないというのであれば―…あまり使いたくはないが…『純血の狼族』であり、元俺の実家の者たちもリンの無実を証明してくれるようだし、特級クラスの校舎に勤めている者たちもまた証明してくれるんだが?」
そう言った瞬間、元兄の表情が強ばった。そして声を張り上げてくる。
「待て!今、父が証明すると言ったのか!?」
「あぁ。信じられないと言うのであれば、確認すると良い」
その俺の言葉に一同は唖然とした。
「ウ、ウィルは信じてくれないの!?」
「なぜ?初対面と言っても過言ではないお前を信じなくてはならない?」
「何で…信じてくれないの!」
そう言って悲愴に叫んでいる。その主人公君の態度に愚か者たちは騎士を気取っているのだろうか…抱き締めるように庇っている。
しかし、『純血の狼族』の元兄は分かりやすく戸惑ったような表情になっていた。
主人公君を庇うことはなく考え始めている。あの元親父が動いていると知り、しかもソレが俺の方を支持している。
その事実が元兄を追い詰めたのだろう。顔色が分かりやすく悪くなった。
まぁ、元々ゲームの設定では優秀だったようだし、そこまで愚か者でもない…という事なのだろうか?
この目の前にいるキャラたちにどの程度、公式設定が反映されているのか、俺には全く分からんが…
「状況証拠が断定的の場合どちらを信じるかなんて分かりきっていると思うが…お前らは違うのか?」
「俺はアヤトを信じている!」
「僕も信じています」
「俺も…」
「私も信じています」
そう各々が反応を示す中、元兄だけは何の反応も示さなかった。恐らく、全てを察したのだろう。実家が動くとはそういう事であり、先程の俺の言葉を正しく理解したようだ。
主人公君が元兄に呼びかけるも反応は芳しくなく元兄は弱々しく首を横に振った。
その否定的な態度に愉快な仲間たちが吠えているが、元兄の態度は変わらなかった…
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