狼(♂)ですが…狐(♂)に婿入りしました。

スメラギ

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高校3年生編

9.ケンカを売られたので買った結果

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 手遅れではあるが、元兄は他の者よりはまだ・・救いようがあるらしい。
 そして、俺はある・・資料のコピーを奴らの前にばら撒いた。

 主人公君の自作自演の証拠であり、リンの無実を証明するもの…

 「これはお前らのご実家が調べた物でもある。しっかりと捺印もされているだろう?信頼できないのであれば、事実確認を実家にすると良い。」
 「なっ…何だコレは…」

 そう言って資料を凝視し、内容を理解して絶句した後、怒りの矛先は主人公君へと向かった。
 先程とは180度違う態度に周りはさらに萎えるのだが、そうと気づかない愚か者たちは主人公君を罵倒し始める。

 いや、もう何か自分たちの事を棚に上げて責めまくっているので、主人公君が可哀想に思えるくらいには酷かった。

 自業自得と言えば自業自得なんだけど…

 「違う、違う!こんなのシナリオには無かった!」
 「シナリオ?何を訳の分からない事を言っているんだ!」
 「貴方は我々を愚弄しました。それ相応の罰を与えます。」
 「到底許されることではないぞ!覚悟はできているのだろうな?」

 そう声を張り上げて主人公君に乱暴を働こうとしたが、その『純血の一族』たちを制したのは元兄だった。

 「よせ!やめろ!これはもう俺たち界隈で終わる話ではなくなっている!一族の実家が動いたんだぞ!これ以上の愚行は止めた方が良い!」

 そう言って主人公君を庇うように立った。一応、誇り高い一族だっただけの事はある…
 その行動に主人公君もビックリしているが、今まで好意的だった者たちからの罵倒もあり、警戒をしているようだった。

 まぁ、自業自得と言ってしまえば、それまでなんだけどな…

 「そこを退け!責任をとらせる!」
 「いや、確かにアヤトがしたことは許されることではない。しかし、盲目的に信じたのは俺たちの落ち度だ。ソレを棚に上げて責めるのは間違っている。もちろん、アヤトも責任をとるべきだとは思うが…俺たちもまた責任をとる義務があるんじゃないのか?」

 諭すようにそう言って主人公君を見ると分かりやすく主人公君が泣きそうな顔になった。
 しかし、事の重大さを分かっていないのか…分かりたくないのか…元生徒会長が元兄に吠えついた。

 「黙れ!貴様は『純血のライオン族』を敵に回すと?その覚悟はできているのか?」
 「……恐らく、お前の呼び掛けに応えるライオン族は居ないだろう。」

 そう言って静かに元生徒会長を見据える元兄を見ながら『フッ』と昔の思い出が蘇る…

 いつだったかは忘れたが―…自分の周りに敵しかいない中、庇ってくれる者…ヒーローがいれば、ときめいて好きになってしまうと前にリンが熱く語っていたな…

 なんて関係のないことを思い出しながら今現在の主人公君を見て『あー、主人公君、元兄に落ちたなコレは…』と漠然と思っていると…
 元兄が不意にこちらを見てきたので、俺はビクついて気を引き締めた。

 目の前で繰り広げられるソレに思考が思い切り飛んでいたので反省をした…

 「ウィル…お前は言ったな。『いつまで次代当主を気取っている』のかと…」
 「あぁ、言った。」

 確認をとるかのような台詞に肯定の意を示してやると、軽く頷いてからさらに言葉を続けた。

 「その言葉の通りなら現代当主は動いている。ならば、俺たちは既に次代当主からは外されているはずだ。」
 「そうだな。元親父は養子縁組をして既に次代当主を育て初めている。」
 「そうか…やはりな。尚更、呼び掛けに応える者は居ないだろうな。」

 そう言った後、何とも言い難い表情を浮かべ、やがて諦めたように溜め息をついた。
 他の攻略対象たちも心なしか顔色が悪くなっている…

 その元兄の様子を見た主人公君はその事実にさらに驚いており、元兄は主人公君へと向き直って口を開いた。

 「アヤト…お前を盲目的に信じてしまっていたとはいえ、やはり俺はお前を許せないし、きちんと調べなかった俺自身も許せない。でも、まだお前を好きだという心もあって…もう、どうしたら良いのか分からないんだ…全く考えが纏まらないんだ…」
 「ヴェル…ごめん。俺っ…」

 元兄は凄く悔恨の表情を浮かべており、さらに泣きそうな顔で主人公君を見据えている。
 主人公君はそんな様子の元兄の名を呼んで、初めて嘘泣きではない涙を流した。



 結論から言うとリンの無実は証明された。攻略対象たちは去勢をされて実家から勘当された。その後の事は知らん。恐らく実家の監視下には居るだろうけどな…そして、元兄もまた同じ道を辿ったが、他の者とは違いその隣には主人公君がいる。

 リンが主人公君からの謝罪を受け入れ、『今回のような事は二度としない』、『周りに迷惑をかけない。真っ当に生きる』というウマを書かせ、念書にサイン及び拇印を押させて今回は許す事にした。

 いや、俺的には再起不能にしてやろうという感じだったんだけど…リンが主人公君と何かいろいろ・・・・と話をした後に『転生者』である事を確信し、互いに『転生者』である事を認めた後…これまたいろいろ・・・・とあって意気投合してしまったらしく…

 「ウィル様お願~い」とリンから可愛くお願いをされたので、チョロい俺はそのお願いを聞き入れた。

 もう一度、言っておくが、リンの涙目プラス上目遣いでのお願いに簡単に落ちる俺はチョロいと自覚しているが…こればかりはどうしようもない…

 話を戻すが…愚か者たち及び主人公君は特級クラスからはもちろんだが、学園からも追放されている。

 しかし、何やら思うところがあったらしいリンのお願いに落とされたチョロい俺が働きかけて一般のクラスへの残留を認めてもらった。という事だ。

 かなり頑張った!説得やらなんやらいろいろ・・・・と!

 まぁ、その際に本の少しだけ元兄と主人公君の押し問答があったんだけど…

 「俺の事はいいから!ヴェルをどうにかしてあげてほしい。迷惑をかけてこんな事を頼むのは間違ってるんだけど…どうかお願いします。」
 「いや、俺は許されないことをしている。アヤト、俺はいいからお前が残れ…学園を卒業しておけば、これから先、何かあったとしても他よりは優遇される。」
 「ダメっ…そんなのダメだ!ヴェルをお願いします」
 「『人間族』は何かと大変なんだ。俺よりもアヤト、お前が残った方が良い。頼む。アヤトを残してやってほしい」

 そう言って2人ともそろって土下座までしてきたのには内心驚きだった。
 その光景を見ていたリンが泣きそうな顔をしていた。何となくこちらに飛び火してきそうだな~と思っていた矢先に―…

 「アヤト君…ウィル様…」

 なんて主人公君の名前を呼んだと思ったら縋るように俺の名前を呼び見上げてきた。
 『やっぱりな』と思いつつも、リンのその表情に簡単に落ちるチョロい俺は『仕方ないなぁ…』というふうに見えるように努力しながら口を開いた。

 「ならば、2人とも残れるように働きかけよう。だが…今回の件は学園に通う全ての者が知っている。恐らく残れたとしても残りの学園生活は思っているよりも過酷になるかもしれない…それでも良いのか?」

 そう問えば、2人は驚いたように顔を見合せ、俺に頭を下げて感謝の言葉を口にした。
 いろいろとあってなのかは分からないが…元兄の性格も丸くなってしまったようだ。
 こちらをバカにした態度なんて微塵もなく、ただの好青年みたいになっている…

 そういった事もあり、元兄改めヴェルと主人公君改めアヤトは共に学園への残留が決定した。

 復帰したのは去勢手術が終わって暫く経ってからだった…肩身の狭い想いをするだろう事は容易に想像できたが、本人の希望―…意思によりそうなった。

 今ではそれなりに良好な兄弟関係を築けていると思う。そして、その隣には心を入れ換えたらしいアヤトが常におり、献身的に『狼のヴェル・・・・・』を支えている。

 卒業後、2人は密やかに『婚礼こんれい』を行うんだとか…
 まぁ、『ちぎりのさかずき』なんかは無いので本当に簡易的にはなってしまうのだけれど…なんて笑っていたのが印象強かった…

 子どもは望めないがそれでも良いと2人が納得し、幸せそうなので何よりである…

 
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