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Short Story〜旦那様な彼と奥様な僕。〜
02
この世界には『鬼』という者が存在している。崇陽が僕に隠そうとしていた存在だ…。
あの底知れぬ崇陽のビジネスパートナーも『鬼』だった。
しかも、その『鬼』には『番』ー…界隈で密やかに寵妃と呼ばれている者が居るらしい…。
表には一切出ず、出さずの徹底振りから『寵妃』というあだ名が付いた。
その『鬼』と関係を築いている者たちの間ではかなり有名な話だ…。
さらに言うとー…今日、崇陽が会う相手はその『鬼』である…。
『鬼』と関係を築くのは容易ではない。こちらに牙を剥く事になれば破滅しかない。
繁栄をもたらす反面、破滅をもたらしかねない危険な存在…。
しかも、崇陽が懇意にしている『鬼』は敵に容赦ない。
崇陽曰く『約束を反故にしなければ問題ない』らしい…が、僕にはまだ分からない…。
僕の中の評価ではかなり恐ろしい、そんな『鬼』なので、送り出す僕も気が気じゃないがー…リスクは少ないに限る。という事で心を鬼にして崇陽を送り出すのだ。悪く思わないでほしい…。
「崇陽、ダメだよ。行かないと」
そう言って見上げると、悲しそうな雰囲気が全面的に出てきた。心做しか、表情までそう見えてくる…。
だから悲しそうな瞳でこちらを見ないでほしい…。
「分かった。行ってくるがー…」
「分ってる。ヤバくなる前に連絡する。」
「それもあるがー…」
「分ってるから。危ない事はしない、でしょ?」
遮って言葉を続けると、観念したのか、息を付いて由良の頬にキスをする。由良も可愛く崇陽の頬にキスを仕返す。崇陽は口元をフッと歪めると、頭をヨシヨシと撫でてから僕の額にキスをした。
僕は崇陽に屈んでもらって口にキスをする…。ここまでは崇陽が1人で外出をする時の流れである…。
ちなみに、由良はさりげなく崇陽に目隠しをされている。
崇陽は後ろ髪を引かれる想いで出かけて行った。と思う…。いや、確実にそうだろう。
名残惜しいと言ったような雰囲気を出していたので間違いない。
☆
僕は由良とリビングへ戻る。外出はする予定もない。ベランダのサンルームで日光浴もできる。
ちゃっかり崇陽に買い物も頼んだので、しっかりと買って来てくれる事だろう…。
僕から降りた由良は絨毯に座り込み「ぶーぶー」と言いながらミニカーのオモチャを走らせ上機嫌で遊んでいる。
もちろん、床は由良が怪我をしないようにマットを敷いている。オモチャを落とした事による床への傷防止でもある。
僕はソファーには座らずにソファーを背もたれにして由良と同じく絨毯に座っている。
「まー!」
と言いながらトテトテと僕の方へ歩いて来る。そして、膝へ乗り上げてくると、僕を椅子にしてテレビを指差す。
時間を確認する。由良が好きな子ども向け番組が始まる時間帯になっていた。
どうやら由良は時計を見る事ができるらしい…。時間が分かるとは…やはり、由良は賢い。天才だと思う。そして、可愛い!
「まー!!」
なんて少し大きめの声で僕を呼ぶ。ハッとして我が子を見下ろすとプクーっと頬を膨らませている。
髪と瞳の色は違えど、崇陽のミニマム。将来は有望なイケメン確定で今は凄~く可愛い。
「ごめんごめん」
そう言うとテレビをつけてあげる。由良はニコニコでテレビを見始めた。
☆
由良が遊び疲れて寝たので、空調を確認してタオルケットをかけた。
由良が寝ている間に夕飯の支度をしておく事にした。しっかりと崇陽に由良が寝ているという連絡を入れておく…。
冷蔵庫を開けて中身を確認すると食材を取り出す。
包丁で順番に切り分ける。そして、火が通りにくい順番に投入して適度に味付けをしていく…。
料理も終盤に差し掛かった頃、玄関の扉が開いた音がした。由良に配慮をしているのか崇陽は凄~く静かに入ってくる。
服を全部脱ぎ捨てに洗面所に入ったような気配があり、わりと直ぐに出てくる気配があった。そして、こちらに歩いて来る。
リビングの扉が静かに開く。そのまま開けっ放しのキッチンに入ってきた。
「蒼…大丈夫だったか?」
そう言って鍋をかき回している僕の手を止めると、崇陽の方を強制的に向かされる。
「怪我とかはー…ないようだな」
「大丈夫だよ」
「心配性だなぁ」と笑う僕の顔を両手で優しく包み込み顔中にキスをしてくる。
崇陽は気が済んだのか…、最後は口に深いキスをして名残惜しそうに離れていった。
*
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