鬼の花嫁

スメラギ

文字の大きさ
55 / 88
鬼の花嫁―本編―

45

しおりを挟む
 
 徐々に体調を崩れたりする日が増えてきた頃、卒業式を向かえた。
 様子を見ながらだったけど、大丈夫だろうという事で出席して、無事に卒業式を終えた。紅輝も卒業式を見に来ていた。

 舞さんも夏樹同伴で来てくれた。しかも、その時に聞いたが…驚く事に舞さんも妊娠しているらしい…大事な時期に来てくれて嬉しくて泣いてしまった。
 その上、更に嬉しい事にお義母さんやお義父さんも来てくれて余計に泣いてしまった。
 紅輝は優しく涙を拭ってくれて、優しく抱き締めてくれた。

 お互いにバタバタしており、連絡を取り合えていなかったけど、お互いに妊娠しているという事実に驚き、お互いに喜びあった。

 紅輝と夏樹はどうやらお互いに知っていたようだが、僕や舞さんには知らせていなかったらしい…自分の口で伝える事を楽しみにしていたから…とのこと。

 舞さんは妊娠2回目という事もあり、いろいろとアドバイスもしてくれたし、お義母さんも親身になって話を聞いてくれた。 妊娠が分かってからの夏樹の事も教えてくれた。
 行動は紅輝と似たようなものだったので、3人で凄く笑った。

 少しだけ離れた場所に居る紅輝もお義父さんや夏樹に何か言われているようだ。時折、『ウンウン』と頷いていた。そして、お義父さんからは1回叩かれていた。まぁ、足を踏み返していたけれど…
 その後、軽く皆でお祝いもして別れた。



 紅輝だが…今まで以上に過保護になった。
 最近では家事全般を紅輝が担い、僕が何かをしようとすると抱き上げる。
 どうやら、ダメらしい…適度な体操やストレッチには付き合ってくれているし、マッサージまでしてくれる…まさに至れり尽くせりというヤツである。

 このままじゃダメな子になっちゃうよ…という徹底ぶりで、手帳にも紅輝が全て漏れなく書き込んでいる。

 僕がトイレに行こうとすればオロオロしながら後ろをついてくる…その姿が何か可愛い。

 ご飯も栄養満点で消化に良いものを作ってくれている。あまり食べられない時は果物をシャーベットにしてくれて、出来るだけ食べれるようにしてくれるのだ。

 時折、お義母さんやお義父さんも様子を見に来てくれる。住居で野菜を作っていたらしく…訪問時にソレを持ってきてくれたりした。

 「果物に挑戦してみたんだ上手く作れたから―…持ってきたよ」

 そう言って野菜だけでなく果物までお裾分けをしてくれている。
 ちなみにお義母さんたちが住んでいるのは片道3時間くらいの場所。決して近くではない距離だ。感謝しかない。

 そして、お義父さんに限っては―…

 「政義はいつきについて居てやれ」

 そう言って紅輝の家事を分担して手伝ってくれたりする。その間、僕とお義母さんは談笑しているんだけど…
 紅輝に対しては「お前はこっちだ。」と言って引き摺って行ってしまうが…

 ちなみにお義母さんとお義父さんには僕の事を呼び捨てにしてほしいと言ってある。紅輝も渋々ではあったけど許可してくれた。
 2人も最初は渋っていたが―…

 「なら僕も…政義さんと氷夜さんで―…」

 そう言い終わるか、言い終わってないかのタイミングで、「公式の場以外でなら呼び捨てにするよ」と即答してくれた。

 どうやらこの2人は僕が思っているよりも『お義母さん』呼びと『お義父さん』呼びが気に入っているようだ…
 ずるいかなとも思ったが…家族ならこれくらいは許してほしい。

 その他にも、いろいろとお世話などをしてくれ、談笑し、お腹を優しく撫でてくれる。僕の頼みもあり、紅輝も進言してくれたので、最低でも一泊してから帰ってもらっている。

 最長2日で帰ってしまうんだけどね…その事に関して残念に思っていると、紅輝が教えてくれた。

 紅輝曰く「お義父さん氷夜の性欲が抑えきれない」らしい。
 思わず赤面して固まってしまったのは仕方ないと思う。



 そして、ある日の事、悪阻も少し落ち着いた頃…颯が部屋に来た。何でも大事な報告があるらしい。
 改まってどこか緊張した面持ちをした颯の様子にただ事ではないと向かいのソファーに座るように促した。

 紅輝は面白そうに見ている…『何で!?訳とか知ってるの!?』と内心ドキドキして向かいに座る颯に視線を向けると…
 暫く口を開いては閉じてを繰り返していたが、決心がついたらしい彼は一度頷くと口を開いた。

 「つがいが出来た。来週からこのマンションで暮らすから―…よろしく頼む」

 思いもよらぬその発言に吃驚して固まっていたが…紅輝は違ったらしい…

 「漸く紋章を刻んだのか…」
 「あぁ、陽穂ようすいの事もあったし、まぁ、他にもいろいろとあったが―…念には念を入れていた。」

 全部、落ち着いたから紋章を刻んで、報告に来たんだって…
 しかも、報告はそれだけでは終わらなかった…

 そのつがいさんは妊娠までしてるんだって!!それは紅輝も知らなかったらしい。

 「へぇ…お前に子どもが?」

 そう言って驚いていたが、それも一瞬で、「良かったな」と笑って颯を見ている。
 すると、普段は表情がまるで変わらない颯もこの時ばかりは嬉しそうに笑っていたのが印象深かった。

 何この出産ラッシュ…凄い…
しかも、予定日は僕より50日遅いらしい。

 その為、来週までこのマンションを不在にするという許可を貰いに来たんだって…
 紅輝も好きにしろ。と言っており、お互いの事が落ち着いたら顔合わせくらいはしようという事でお開きになった。



 20週目なるとお腹がそこそこ目立ち始めた。悪阻も酷かったり楽になったりとマチマチだが、紅輝の献身的なお世話のお陰か、体重に変化が全くない。

 順調に育っている我が子に笑みが浮かぶ。お腹を撫でる事も増えた。紅輝も撫でて笑みかけてくれる。
 食材や消耗品の買い出しはずっと恭介きょうすけ葉月はづきつかさ咲哉さくや交替こうたいで担ってくれている。

 この4人も話し相手になってくれる。ありがたい限りだ。なんて内心感動していた時に、葉月がなんて事はないような軽い口調で…

 「あーそうだ。言い忘れてたけど、俺、つがい解消したから苗字なくなったんだよね~」

 ニコニコと笑みながら颯とは違った爆弾を落としてくれた。
 言葉には続きがあって…

 「なーんか、邪魔になっちゃったんだよね。ま、前から邪魔だったんだけどね~。それにほら、俺、つがいにしたい子が出来ちゃったから」

 そう続けてヘラリと笑っていたのが印象強かった…
 どうやらその口振りからすると―…まだつがっていないようだ。紅輝も『ふーん…お前が良いなら良いんじゃね』的な態度だったので、深く追求することは止めた。

 政は相変わらず無口であり、僕が質問すると短い答えが返ってくるだけだったし、恭介は季節のお届けと言って小さい鉢植えに花を持ってきてくれたりする。
 サンルームの一画に仲間入りするのだ…
お世話は僕が今は出来ないから全て紅輝がしてくれているんだけどね。

 それに外に出てないって訳でもないんだけどね…まぁ、殆んど部屋の中だから軽く軟禁状態になるのかな?

 舞さんはこんなものだと笑っていたけど…

 いや、まだ、紅輝の方が自由にさせてくれているという事実が判明して吃驚したくらいだった…

 
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。 一つは男であること。 そして、ある一定の未来を知っていること。 エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。 意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…? 魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。 なんと目覚めたのは断罪される2か月前!? 引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。 でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉ まぁどうせ出ていくからいっか! 北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)

雪解けに愛を囁く

ノルねこ
BL
平民のアルベルトに試験で負け続けて伯爵家を廃嫡になったルイス。 しかしその試験結果は歪められたものだった。 実はアルベルトは自分の配偶者と配下を探すため、身分を偽って学園に通っていたこの国の第三王子。自分のせいでルイスが廃嫡になってしまったと後悔するアルベルトは、同級生だったニコラスと共にルイスを探しはじめる。 好きな態度を隠さない王子様×元伯爵令息(現在は酒場の店員) 前・中・後プラスイチャイチャ回の、全4話で終了です。 別作品(俺様BL声優)の登場人物と名前は同じですが別人です! 紛らわしくてすみません。 小説家になろうでも公開中。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...