鬼の花嫁

スメラギ

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鬼の花嫁―本編―

KOUKI side.09

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 発情期も終わり、3週間くらいたった頃…いつきのフェロモンに違和感を感じ始めた。
 他の庇護鬼たちは気づかない程度のものだった。
 最初は微々たるもので、『勘違い?』やら『思い違いか?』と首を傾げる程度…

 それから更に日が経ち、今までずっと、毎日抱き締めていたので、いつきの体温は低いと認識していたが―…ここ最近いつきの体温がいつもより高い気がしていた。

 「身体がダルいとか身体が熱いとか無いか?」

 そういつきに問うが…

 「え?何で?元気だよ?」

 なんて不思議そうな顔をして俺を見上げてくる。
 自分の身体の事なのに、まるで分かっていない様子で『きょとん』としている…

 その可愛い姿に襲いたくなったが、いつきの首もとに顔をうずめて深呼吸をして気持ちを落ち着けた。

 やはり、フェロモンの違和感が強くなっている…

 その後も、いつきの様子を注意深く見つつ日常を送っていた。庇護鬼たちにも事情を話しておいたので、椿つばきひいらぎ、咲哉、葉月は特に気をつけてくれている。

 やはり、4人ともいつきのフェロモンには首を傾げているし、分からないとの事…俺自体、決定的な何かが分かったわけではなかった。

 でも、俺は何となく心当たりというか、疑っている―…

 『いつき…お前、もしかしたら妊娠・・しているのではないか?』と…

 いつきの様子には全く変わりはなかったが…フェロモンは如実に語っている…
 違和感を…



 卒業式の日が1ヶ月を切った頃…俺の庇護鬼にも分かるくらいフェロモンに変化がみられたので、つばさを呼ぶことにした。
 何が何だか状況を理解していない、いつきを見て妊娠しているであろう事を告げるとポカンとしている。
 徐々に目を見開き驚愕の表情に変わった。その表情の変化も可愛いらしい…

 そして、翼の勧めもあり鬼関係専門・・・・・の医療機関へ行く事となり、いつきの妊娠が確定した。

 『つがいよめの健康管理帳』なるものを渡されて記載することになった…
 心配そうに俺を見ているいつきの視線に気がつく。安心させるために頷いた。

 取り敢えず、家に帰ると今後の事について話す。手始めに家事全般は俺が担う事を言うと不満気な顔をしていたが、もう、1人の身体ではないからとムリヤリ納得してもらった。

 適度な体操とストレッチには付き合った。その後のマッサージとかも忘れない。食事の内容も体温や血圧、体重の変化も漏れ無く記入漏れなく記載していく。

 いつきからすればやり過ぎだろうと思っていても可笑しくはないが、それほどまでに鬼との間に子どもは出来にくい。

 かなり貴重で重宝しなくてはならない存在。避けられる危険は避けるにこしたことはない。
 ストレスにならないように適度に外へ連れ出し散歩もしているし、いつきのフェロモンも安定しているし、お腹の子のフェロモンも安定している。

 一応、政義と氷夜にはいつきの妊娠の事を話しておいた。少し驚いた事に政義は知っていたようで、『あ~…アレか、力か』と納得していると…違った。いつきが連絡を取っていたようだ…

 いつの間に?とも思ったが、いつきと政義は凄く仲が良い。たまに、妬きそうになるくらいには、な…

 そして、俺の提案もあり、2人ともいつきの卒業式に合わせてこっちに来る事になった。

 春風にはいつき本人から直接言いたいのだろう。電話で話はしていないようで、会えないかどうかの確認しているが…あちらも何やらバタバタしているみたいだ。

 理由は言うまでもなく妊娠しているからなんだろうけど…どうせ夏樹が部屋から出さないからだろう。
 この分だと暫く会うことは出来ないだろうな…

 俺でもここまではしないが―…春風も享受しているので…口出すことでもない…

 電話の後、いつきがいつも見せる残念そうな顔を見て少し考える…

 どうにかしてやるか…と夏樹に連絡を取っておいた。



 そして―…卒業式当日、政義と氷夜、春風と夏樹が揃っていた。
 そこでいつきは自分の妊娠を改めて報告しており、さらに春風も妊娠している事を知る。
 お互いに喜びあっている姿を見て和んでいると…夏樹と氷夜に引っ張られた…

 「お前も父になるのか」

 なんて言って感慨深そうに頷いている氷夜。
 夏樹も何かニヤニヤとしている。

 「身体の相性良かったんだな。標準より華奢なんだから気を付けてやれよ~」

 なんて言って頭を叩いて来たので、監禁男に言われたくねーよ。という思いを込めて足を踏みつけてやった。

 その後も時折、政義と氷夜はいつきの様子を見に来てくれている。いつきも良い感じに気晴らしを出来ているようなので安心した。
 野菜や果物も持ってきてくれたりして、いつきも喜んでいるので俺も嬉しい。

 そして、春風は夏樹によってまた軟禁状態になっているようだ。しかも、自分の庇護鬼を使ってよめを近づけさせない徹底ぶり…

 椿と柊も呆れているが―…

 夏樹の血が入っているので…お前らも予備軍だ。という言葉は飲み込んでおいた。

 いつきのお腹も徐々に大きくなりつつある。順調に子どもが育っている証拠だ。
 優しい顔をしてお腹を撫でる事が増えた。俺の方を見てフワリと笑むその顔は母親そのものだった。

 寝るときもちゃんとお腹に気をつけているし、いつきの体勢も少し変えたりしている。
 体調にもムラがあるが…悪阻で吐いたりという事はない。
 多少、熱が出て、食欲が落ちたり、暴食したりとその時々で違う。
 一応、その調整もしているけどな…そのお陰か体重に変化はなく良好状態だ。

 定期的な検診の時に凄く褒められたくらいだ。
 夏樹に電話で自慢してやったら、舌打ちされたのは記憶に新しい…
 夏樹も一応、基準的には合格ラインみたいだけどな…



 その後も颯が訪ねてきたり、葉月も来たり、恭介や政も来たりと良い気分転換になっている。まぁ、颯と葉月はお互いに真逆の報告に来ただけだったけどな…

 颯は一時的に庇護鬼の任務から外れた。
 葉月は元つがいを施設に放り出し、しかも、つがってはいないようだが、つがいにしたい相手が出来たとか…
 珍しい事もあるものだと吃驚したが…何か心の変化があったらしい。
 
 逆に颯はつがいを迎える準備を整えたようだ。その上、妊娠しいるという…その事実に驚いたものの良かったと安堵した。


 いつきも驚いていたが…

 「舞さんの所と颯の所と同級生になるね!」

 なんて言って喜んでいたので俺も「良かったな」と頭を撫でて抱き締めてしまったのは仕方ないと思う。

 いや、寧ろ、抱き締めただけにとどまった事を褒めてほしいくらいだな…


 
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