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僕の可愛いアルファ君。
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しおりを挟む数分後、気がついた千歳は目を覚ました。そして、見下ろす僕と目が合った千歳は目を見開いたままビキッと固まった。
「おはよう。よく寝れた?」
そう言って頭を撫でてみると面白いくらいに顔が赤くなっていく。ハッとしたように勢いよく起き上がろうとしてサイドテーブルに、しこたま頭をぶつけて気を失う事はなかったが、痛みで身悶えている。
意図した動きではないものの、僕の股間を刺激してくる千歳の頭に思わず苦笑いが浮かんだ。
「大丈夫?」
「だいじょ、ぶ…。」
全く『大丈夫』じゃない言葉を頂いた僕は、サイドテーブルをわきに追いやり、ぶつけたであろう千歳の頭を撫でてやる。
ピクリと反応した千歳は潤んだ目で僕を見上げてくる。
「何?襲ってほしいの?」
なんて言うと、顔を真っ赤にして意味もなく、パクパクと口を開閉している。
「何でそうなる!?」
「ん~、誘っているようにしか見えなかった…から?」
「というか!そもそも!襲うならアルファの俺からになるんじゃー…」
千歳の意外な言葉に目をパチクリさせてしまった。
「え?襲いたいの?僕とシたいの?」
と言うと、千歳が目尻を染めて視線を反らしてしまった。どうやら、僕は千歳にとってそういう対象になり得るらしい…。
「僕、中古品みたいなモノだよ?」
そう言うと、見た事のないくらいの鬼の形相でガバっと起き上がると僕の膝に跨がり、肩を掴まれた。
「雅輝は中古品じゃない!!俺はそんなふうに思った事なんて一度もない!」
「っ…」
怒った顔のまま深く口づけをされた。一瞬、何が起こったのか理解するのに時間がかかった。
「んっ…はぁ…」
クチュリと離れた唇に寂しさを覚えてしまうのは、あの時の千歳への想いが思い出されそうだからなのか…。
「俺にとって雅輝は一番大切な人なんだ!」
「は?いや、え?」
「出会ったあの日…一目惚れだったんだ…。発情期の時なんて襲わずに居られたのが奇跡なんだよ。襲って雅輝に嫌われたくなかった。拒絶されたくなかった…万が一、襲って拒絶されるのが怖かった。」
なんて寝耳に水だ。全くそういう素振りは見せなかった…。
「でも、俺なんて雅輝につり合わないから…アルファなのに身長は低いし、頼りないし、力はないし…雅輝ほどの権力もないし…」
さっきまでの勢いが嘘のように弱々しくなっていく。
「なら何で他のオンナと婚約したの?」
「当たって砕ける度胸もなかった…。自分の気持ちと向き合う事から逃げて、雅輝への気持ちを誤魔化す為に、あの子を利用した…。最低な奴なんだよ俺は…。」
そう言って力なく手を離した千歳は泣きそうな顔で笑っていた。
「ずっと、好きだった…。あの子を抱きながら思い出すのは、いつも発情期の雅輝の姿だった。乱れる姿を重ねながら抱いてたんだ…。実父をなじる事もできないくらいに俺もクソ野郎なんだ…。あの子は俺に利用された被害者なんだ…。だから、バチが当たったんだ…。まぁ、俺に罰を与えるのが実父になるなんて思わなかったけど…。」
という思っても居なかった千歳の想いを聞く事になった僕は唖然と千歳を見る。
なるほど…頭がおかしくなったと思っていたあの自分を責めていた言葉はそういう事かと納得する。
あのオンナから慰謝料を取らなかったのも、式場のキャンセル料を払おうとしたのもそういう事らしい…。
*
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