鬼の揺籃

スメラギ

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鬼の揺籃―短編―

呼び方*―颯side―

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 奏は相変わらず俺を『颯様』と呼ぶ。つがったのだからそろそろ本格的に呼び方を変えてもらいたい。
 『颯』と呼び捨ててもらいたいのだが、俺の心を知らぬ奏は俺を見ると照れたように、はにかむだけ…
 その姿に俺の心の中は暖かくなる。が…物足りない…

 隣に座ると無防備に身体を預けて甘えてくる奏に俺は胸に燻っているこの思いを告げる事にした。
 今日は必ず『颯』と呼ばせてやると心に決めた。

 「颯さっ…ふぅんんっ…」

 俺の事を呼ぼうとした奏の口を塞いで深く口付けると力が抜けてきたのか、服を弱々しく握り締めてくる手を掴むと2人で腰掛けていたソファーに押し倒した。
 驚いて俺を呼ぼうとしている奏に応えるでもなく服の下に手を滑り込ませると『ぴくり』と身体が震えた。

 「颯…」と呟くと、奏は何を言われたのか分からないような顔をして戸惑ったような声を出した。

 「奏はいつになったら俺を呼び捨てにしてくれるんだ?」
 「え?そ、そんな…僕には無理です!っ…ぁあ…颯さ、まぁ!」
 「呼び捨てにしろ…お前は俺のつがいであり、対等な立場なんだ。」
 「んんっ…で、でもぉっ…」
 「颯だ。は、や、て。簡単だろう?呼び捨てにするだけなんだ。」
 「んっ…ぁ…はや、て、さまぁ…」
 「は、や、て。な…呼び捨てにしてくれないなら―…俺も『様』付けするからな」
 「それこそ、おかし、いです…ゃ…んんっ…」
 「おかしくはないだろう?対等な立場・・・・・なんだから…」

 そう言って目線を合わせてにっこり・・・・と笑うと奏の顔が真っ赤に染まった。

 「ほら、奏様・・、気持ち良い?」と愛撫を止めず、耳元に口を近づけてダメ押しで囁いてみると喘ぎながら抱きついてきた。

 「さま、つけないでぇ…んっ…」
 「対等な立場だからな…まぁ、奏様が呼び捨てにしてくれるなら―…俺も呼び方、戻すけど?」
 「あっ…まっ、てぇ…んんっ…」
 「今日は『颯』って呼び捨てにしてくれるまでイカせないから」
 「そ、そんなぁ…ゃあ!」

 その宣言通り、イきそうになる度に愛撫を止めて達しないようにコントロールする。
 ソファーは既に奏の愛液が溜まりを作り、奏の秘部も卑猥な事になっている。
 『ヒクヒク』と俺を誘っているソコに焦れったいくらいにゆっくりと指を埋め込み、ゆっくりと指を動かしている。

 「は、やてっ…さまぁ…んんっ」お願いお願い。と俺のモノを欲しがる奏は凄くエロいが…今日は我慢すると決めている。俺を呼び捨てにするまでは挿れないし、イカせない。

 グズグズになって俺を求めている事は分かっていたが…俺は敢えてソコには触れずに奏の様子を見ている。
 『様』を付けて俺を呼ぶが首を振って頭を撫でてやる。

 我慢が限界に達したのだろう。涙を流しながら俺の首に腕を回すと、俺の耳元で囁いた。

 「はやてぇ…んんっ…おね、がいぃ…も、がまんっ…できな、いよぉ…ぁあっ!」
 「もっとだ…もっと呼んでくれ」

 俺は奏の返事を待たずに最奥を穿った。歓喜の震えなのか何なのか、俺のを搾り尽くそうと最奥がうねり、轟いている。
 俺の要望に応える素直な奏は何度も、何度も俺の名前を呼び捨てで呼んだ。

 可愛い声で何度も俺を呼び、何度も達した奏は当然だが、痙攣しながら失神した。
 相当良かったらしい…俺も良かった…意識が戻った時に呼び捨てで呼んでくれたら―…もう、言うことはない…

 そして、奏が失神した後、周りを見渡すとソファーの周辺が酷い惨状になっていた。
 お互いの体液でドロドロであり、ソファーに備え付けられていたクッションは濡れて使い物にならないだろうモノに変貌を遂げていた。

 取り敢えず、処分してソファーごと買い替える事にした。正直にソファーも買い替える必要があるほどドロドロになっている。
 買い替える為の手配をササッとして奏を風呂に入れて寝室のベッドへ寝かせると行為セックスの臭いとフェロモンの匂いの残るリビングに入り、ソファーを片しにかかる。

 後で恥ずかしがると思うから空気清浄機を起動させる。ドロドロの床も掃除した。

 その後、数時間後に目覚めた奏は俺を見て真っ赤になった。口をパクパクさせて可愛い顔を晒していたので『颯様』と呼ぶ前に口を塞いで深く口付けた。

 「は、や、て。な…」そう言って笑みを浮かべると涙を浮かべて「颯」と呼び捨てにした。
 その顔に欲情して、我慢出来ずに襲ってしまったのは仕方ないと思う。


 

 
*終*
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