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1章 怪異は放課後に訪れる
怪異との遭遇、クラブとの出会い
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忘れ物を取りに放課後の教室へ戻ると、机の上に一冊の本が置いてあった。ハードカバーの本だった。タイトルに見覚えはない。小説だろうか?
そっとページを開く。ほとんど読まれていない本なのだろう、背表紙のきしむ感覚が指に伝わってくる。同時に古い紙の匂いもした。裏表紙をめくると遊び紙に「贈 祥天高校図書室」というスタンプが押してあった。ということは学校の図書室に寄贈された本なのだろう。でも、どうしてそんなものがここに?
とりあえず、図書室へ持って行ってみるか。調べれば何か分かるかも知れない。勝手に捨てるわけにもいかないし。窓を叩く雨粒の音を聞きながら、僕は教室を後にした。今朝ニュースで梅雨入り宣言されたばかりの、まだ肌寒い六月の初めのことだった。
一年A組の教室を出てすぐ目の前の階段を上がり二階を目指す。二階についたら右手に曲がって、そこから進んだ突き当たりに図書室があった。“見慣れた”両開きのドアを開けて中へ入る。ページをめくる音、シャープペンがノートの上をすべる音、そんな音だけが聞こえるうら寂れた場所だった。遊びやお菓子といった誘惑がないからテスト勉強をするのに向いているけど、今時紙の本を読みたいなんて奴もいない。
それでも僕が図書委員になったのは、静かで落ち着ける場所が良かったからだ。クラスのじゃんけんに負けた結果、委員会をやらされることになったので仕方なく図書委員を自薦した。そんな理由で図書委員を選んだけれど反対する奴は一人もいなかった。というか、誰もそんな委員会に興味がないという感じだったけれど。
「(こんな本、図書室にあったっけ……)」
僕は貸出カウンターの中に入って、教室から持ち出した本をカウンターの上に置いた。本の裏に貸し出し用のバーコードがあるので、それを確かめようとした。バーコードを読み取ればいつどこで買った本か、誰かが借りているのか分かるはず。
けれど――横から知らない誰かの手が、そっと本の表紙に添えられた。びっくりして振り向くと隣に見慣れない生徒が立っていた。身長は僕より少し高いくらい。襟首にある学年章から三年生――先輩だと分かる。
誰だ、この人……。彼は驚いている僕の顔を見て、何故か笑って言った。
「保科 佑(ほしな ゆう)くん」
それが僕のフルネームだった。見知らぬ先輩に突然名前を言い当てられて、頭からさっと怖気が走った。何なんだ、この人は? どうして僕の名前を? 僕が棒を飲み込んだように突っ立っていると、彼は申し訳なさそうに言った。
「いや、一年生の図書委員といえば君しかないだろう? 委員会は各学年から男女一人ずつだ」
彼は僕の学年章を指さして言った。確かに委員会はそういうルールで成り立っている。でもそれは僕の名前を知っている理由にならないだろうと口を開きかけたが
「この学校のことなら、なんでも知ってるよ」
と、あっけなく彼に遮られてしまった。
「けれど、実物を見るのは僕も初めてさ」
そこで彼の興味は僕から本のほうへ移ってしまい、熱心な視線を表紙に注いでいた。
実物――? よく分からないけど、これは結構有名な本だったりするんだろうか。彼は本の表紙をいとおしそうになでながら言う。
「話は聞いていたけど、本当にあったとはね」
「どういうことですか?」
僕はようやくそれだけ言えた。これは一体どういういわくのある本なんだ? 色々聞きたいことはあったが、今この瞬間だけは彼への不信感より本への好奇心が勝った。だからそんなことを言ってしまった。そして、彼の言葉を聞いて後悔した。
「これは、この学校に昔から伝わる呪いの本だよ」
曰く――この本が手元に届いた者は、著者の願いを聞き届けないと三日後に死ぬ。
そっとページを開く。ほとんど読まれていない本なのだろう、背表紙のきしむ感覚が指に伝わってくる。同時に古い紙の匂いもした。裏表紙をめくると遊び紙に「贈 祥天高校図書室」というスタンプが押してあった。ということは学校の図書室に寄贈された本なのだろう。でも、どうしてそんなものがここに?
とりあえず、図書室へ持って行ってみるか。調べれば何か分かるかも知れない。勝手に捨てるわけにもいかないし。窓を叩く雨粒の音を聞きながら、僕は教室を後にした。今朝ニュースで梅雨入り宣言されたばかりの、まだ肌寒い六月の初めのことだった。
一年A組の教室を出てすぐ目の前の階段を上がり二階を目指す。二階についたら右手に曲がって、そこから進んだ突き当たりに図書室があった。“見慣れた”両開きのドアを開けて中へ入る。ページをめくる音、シャープペンがノートの上をすべる音、そんな音だけが聞こえるうら寂れた場所だった。遊びやお菓子といった誘惑がないからテスト勉強をするのに向いているけど、今時紙の本を読みたいなんて奴もいない。
それでも僕が図書委員になったのは、静かで落ち着ける場所が良かったからだ。クラスのじゃんけんに負けた結果、委員会をやらされることになったので仕方なく図書委員を自薦した。そんな理由で図書委員を選んだけれど反対する奴は一人もいなかった。というか、誰もそんな委員会に興味がないという感じだったけれど。
「(こんな本、図書室にあったっけ……)」
僕は貸出カウンターの中に入って、教室から持ち出した本をカウンターの上に置いた。本の裏に貸し出し用のバーコードがあるので、それを確かめようとした。バーコードを読み取ればいつどこで買った本か、誰かが借りているのか分かるはず。
けれど――横から知らない誰かの手が、そっと本の表紙に添えられた。びっくりして振り向くと隣に見慣れない生徒が立っていた。身長は僕より少し高いくらい。襟首にある学年章から三年生――先輩だと分かる。
誰だ、この人……。彼は驚いている僕の顔を見て、何故か笑って言った。
「保科 佑(ほしな ゆう)くん」
それが僕のフルネームだった。見知らぬ先輩に突然名前を言い当てられて、頭からさっと怖気が走った。何なんだ、この人は? どうして僕の名前を? 僕が棒を飲み込んだように突っ立っていると、彼は申し訳なさそうに言った。
「いや、一年生の図書委員といえば君しかないだろう? 委員会は各学年から男女一人ずつだ」
彼は僕の学年章を指さして言った。確かに委員会はそういうルールで成り立っている。でもそれは僕の名前を知っている理由にならないだろうと口を開きかけたが
「この学校のことなら、なんでも知ってるよ」
と、あっけなく彼に遮られてしまった。
「けれど、実物を見るのは僕も初めてさ」
そこで彼の興味は僕から本のほうへ移ってしまい、熱心な視線を表紙に注いでいた。
実物――? よく分からないけど、これは結構有名な本だったりするんだろうか。彼は本の表紙をいとおしそうになでながら言う。
「話は聞いていたけど、本当にあったとはね」
「どういうことですか?」
僕はようやくそれだけ言えた。これは一体どういういわくのある本なんだ? 色々聞きたいことはあったが、今この瞬間だけは彼への不信感より本への好奇心が勝った。だからそんなことを言ってしまった。そして、彼の言葉を聞いて後悔した。
「これは、この学校に昔から伝わる呪いの本だよ」
曰く――この本が手元に届いた者は、著者の願いを聞き届けないと三日後に死ぬ。
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