放課後・怪異体験クラブ

佐原古一

文字の大きさ
18 / 30
5章 学校に降り立つ神

口は災いの元

しおりを挟む
 僕は部室から出た出会い頭に、眼鏡を掛けた女の子とぶつかった。僕はなんとか踏ん張ったけれど彼女は勢いで尻もちをついた。
「あ、ごめ……」
 反射的に謝ろうとしたが、彼女は分厚いレンズ越しに僕をにらみつけている。口まで出かかった言葉が喉まで引っ込む勢いだった。びっくりして黙り込んだ僕に、彼女はこんな言葉をぶつけてきた。
「あなた、呪われてるわよ。今に見ていなさい。バチが当たるから」
 それだけ言うと、わき目もふらずにすれ違って行った。小走りに去っていく彼女の背中を茫然と見つめていると、後ろから声を掛けられた。
「一年B組の林田だな」
 振り返るとすらっとした長身の男がいた。金髪に鋭い目つき。三年生の神木達也(かみきたつや)先輩だ。相変わらず寝起きのような、不機嫌そうな顔をしている。
「あいつ、ああやって周りに『霊感あるアピ』してんだよ。気にすんな」
 ふうん。物好きな人もいたもんだ。というか、先輩は三年生なのに四月に入学したばかりの一年生のことを知っているのか。あの林田さんって人は有名人なのかな? 僕があれこれ想像していると神木先輩はめんどくさそうに言った。
「本当に霊感あるやつはそんなアピールしねぇ」
 そりゃそうだ。そんなことをしたら周りに「本物の幽霊に会わせて」とか言われるし、本人も幽霊が見えるからといって別に進んで会いたいわけじゃないだろう。アピールしたところで面倒なことになるのが分かり切っている。
「でも『バチが当たる』ってどういうことですかね?」
 普通は「悪いことをしたらバチが当たる」もんだ。呪いとはちょっと違う。林田さんがあえて「バチが当たる」なんて言い方をしたのは不思議で、でも何か意味があるように思えた。
「蛇神様に祟られるんだとさ」
「蛇?」
「林田には蛇神様っていう神様が見えてるんだと」
「そんな神様、本当にいるんですか?」
「聞いたことねぇな」
 うーん。イマジナリーフレンドならぬ、イマジナリーゴッドだろうか? 彼女にしか見えない内なる神。
「ま、それでちょいちょい信者を集めてるらしいな。保科も関わらねぇ方がいい」
 そういうと、神木先輩は僕の横を通り過ぎて部室の中へ消えて行った。思えば神木先輩とまともに話をしたのはこの時が初めてのような気がする。いつも先輩は部室で居眠りしていて、起きていても僕のことなんか覚えてなさそうなのに、意外と普通に話しかけてきてくれた(でも話すだけ話すといなくなってしまった。やっぱりちょっと自由な所がある人だ)。
 祟り。神様なのに祟るという発想が不思議だったけれど、それきり僕は林田さんのことをしばらく忘れていた。彼女のことを思い出したのは、ある出来事がきっかけだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...