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リライプル
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第九紀 九五六年
中央大陸リライプル、クルード国南西に12歳の少年がいた、名をウィリアム、親は既に死去し、農村部に住んでいた。
「おばさん!ここでいい?」
そういうと満杯に水が入った壺を台所に置く
「ああ、そこでいいよ」
そう言いながら料理を準備しているのはリリアン、育ての親である
リリアンは獣人であり、犬の耳と尾を生やし、ライトブラウンの明るい色をしている
「そろそろ準備できるからスプーンを用意して」
そう言いながら食器棚を指差す
香辛料のいい匂いに顔を笑顔にさせながら食器を用意する
ウィリアムは出生こそわからないが黒い髪、そして魔術を使える、そのことからミソッド人であり純人類である
きのこのスープを持ってくるとリリアンの息子のヒューズがこちらにくる
「お!早速ご飯か!」
机の前に座り食器を持つ
「ちゃんと薪は売ってきた?」
ヒューズを少し睨みながら言う
「もっもちろんだよ!今日はちゃんと売ってきたって!」
手をバタバタさせながら言う
「ん?今日はって言った?」
「ちがう!今日も!今日のだよ!」
ヒューズの目は泳ぎ続けている
「まあいいや...とりあえず食べなさい...」
呆れた顔をしながら言う
ウィリアムは苦笑いをしつつ食事を始める
「美味しい~!おかわり!」
そういってスープが入ったままの皿を出す
「食べ終わってから言いなさい、前もそれで食べきれなかったんだから」
そう言われるとウィリアムはまた食べ始める
「ところでさ——」
ウィリアムが喋ろうとするとリリアンが立ち上がる
「この臭い...ちょっとこっちに来なさい」
険しい顔をしてウィリアムとヒューズを連れて行く
「まだ食べてるよ?」
リリアンは外を見るとすぐに床下の収納を開けて中身を取り出す
「どうしたの?母さん」
「ちょっとこの中に入ってなさい、すぐ開けるから絶対に自分からは開けないでね」
険しい顔で言うとヒューズとウィリアムを持ち上げて収納に入れる
「いい子だから静かにね」
にこやかに言うと扉を閉める
暗い中で黙って過ごす
すると外からの声が聞こえる
何を言ってるかはわからないが言われた通りに黙って待っていた。
そうして数時間...
「そろそろ出てもいいかな?」
と静かにウィリアムが言う
「ちょっとくらいなら開けてもバレないんじゃね?」
そう言って少しだけ扉を開けるとヒューズはすぐに扉を閉める
息を震わせ動悸は速くなる
「何かあった~?」
そう言ってウィリアムが扉を開ける
そこに映ったのは変わり果てたリリアンの姿であった
体は血まみれ、槍が目に突き刺さり部屋は騒然としていた。
「なに...これ...」
ウィリアムはすぐに収納を出るとリリアンの肩を持ち揺らす
しかし反応は一切ない
涙が溢れ大泣きをしようと口を大きく開けた瞬間にヒューズが口を閉じる
「今は...静かに...魔獣がいるのかも...」
涙をせき止めようとするがポロポロと溢れながら外の様子を見る
燃え尽きた家や崩れ落ちた家など恐ろしいほど静寂に包まれていた
死体が転がり家畜なども殺されている
死体の臭いに吐き気を催しながら歩き回った
そして人がいないことが分かるとウィリアムは泣きヒューズも泣いた。
泣く声だけが響き渡り続けた
三日後...
「準備はできた?」
大きなリュックを持ち木の板で作られた粗雑な鎧を纏うウィリアムがヒューズに向かって言う
ヒューズはリリアンの墓を見て少し手を振ると歩き出した
「どうするの?これから...」
ウィリアムはヒューズに不安げに聞く
「わからない...でもここにいても多分生きていけない、とりあえず王都に行こう、仕事を探して生きることを優先しよう」
ヒューズは顔一つ変えずに言う
そうして土の道を歩きだした
「おばさんを...村を襲ったのって....」
「奴隷商人だろう...遺体の数が合わないし明らかに人が殺してたしな...」
「王都までどれくらいかかるの?」
そう言うとヒューズは地図を開く
「歩きで3~4日だ」
「そんなに歩くのかぁ...」
しょぼくれた顔をしながらも頬を叩き気合を入れる
そうして歩き回った続けると日は落ち暗くなった
「ファイアボール」
ウィリアムが詠唱をすると手のひらから火に球を飛ばし松明に火をつける
「獣人は魔法が使えないから大変だね~、もしも一人だったら怖くて村から出られなかったかもな~」
ニコニコとしながらウィリアムは言う
しかし反応は一切なく静寂が続く
別に忘れたわけではない、ヒューズを励ますために言っているのもあるが自分の心を保つためでもある、そうじゃなければ気が参ってしまうからだ
そうして歩き進めていくと日も明け始めた
中央大陸リライプル、クルード国南西に12歳の少年がいた、名をウィリアム、親は既に死去し、農村部に住んでいた。
「おばさん!ここでいい?」
そういうと満杯に水が入った壺を台所に置く
「ああ、そこでいいよ」
そう言いながら料理を準備しているのはリリアン、育ての親である
リリアンは獣人であり、犬の耳と尾を生やし、ライトブラウンの明るい色をしている
「そろそろ準備できるからスプーンを用意して」
そう言いながら食器棚を指差す
香辛料のいい匂いに顔を笑顔にさせながら食器を用意する
ウィリアムは出生こそわからないが黒い髪、そして魔術を使える、そのことからミソッド人であり純人類である
きのこのスープを持ってくるとリリアンの息子のヒューズがこちらにくる
「お!早速ご飯か!」
机の前に座り食器を持つ
「ちゃんと薪は売ってきた?」
ヒューズを少し睨みながら言う
「もっもちろんだよ!今日はちゃんと売ってきたって!」
手をバタバタさせながら言う
「ん?今日はって言った?」
「ちがう!今日も!今日のだよ!」
ヒューズの目は泳ぎ続けている
「まあいいや...とりあえず食べなさい...」
呆れた顔をしながら言う
ウィリアムは苦笑いをしつつ食事を始める
「美味しい~!おかわり!」
そういってスープが入ったままの皿を出す
「食べ終わってから言いなさい、前もそれで食べきれなかったんだから」
そう言われるとウィリアムはまた食べ始める
「ところでさ——」
ウィリアムが喋ろうとするとリリアンが立ち上がる
「この臭い...ちょっとこっちに来なさい」
険しい顔をしてウィリアムとヒューズを連れて行く
「まだ食べてるよ?」
リリアンは外を見るとすぐに床下の収納を開けて中身を取り出す
「どうしたの?母さん」
「ちょっとこの中に入ってなさい、すぐ開けるから絶対に自分からは開けないでね」
険しい顔で言うとヒューズとウィリアムを持ち上げて収納に入れる
「いい子だから静かにね」
にこやかに言うと扉を閉める
暗い中で黙って過ごす
すると外からの声が聞こえる
何を言ってるかはわからないが言われた通りに黙って待っていた。
そうして数時間...
「そろそろ出てもいいかな?」
と静かにウィリアムが言う
「ちょっとくらいなら開けてもバレないんじゃね?」
そう言って少しだけ扉を開けるとヒューズはすぐに扉を閉める
息を震わせ動悸は速くなる
「何かあった~?」
そう言ってウィリアムが扉を開ける
そこに映ったのは変わり果てたリリアンの姿であった
体は血まみれ、槍が目に突き刺さり部屋は騒然としていた。
「なに...これ...」
ウィリアムはすぐに収納を出るとリリアンの肩を持ち揺らす
しかし反応は一切ない
涙が溢れ大泣きをしようと口を大きく開けた瞬間にヒューズが口を閉じる
「今は...静かに...魔獣がいるのかも...」
涙をせき止めようとするがポロポロと溢れながら外の様子を見る
燃え尽きた家や崩れ落ちた家など恐ろしいほど静寂に包まれていた
死体が転がり家畜なども殺されている
死体の臭いに吐き気を催しながら歩き回った
そして人がいないことが分かるとウィリアムは泣きヒューズも泣いた。
泣く声だけが響き渡り続けた
三日後...
「準備はできた?」
大きなリュックを持ち木の板で作られた粗雑な鎧を纏うウィリアムがヒューズに向かって言う
ヒューズはリリアンの墓を見て少し手を振ると歩き出した
「どうするの?これから...」
ウィリアムはヒューズに不安げに聞く
「わからない...でもここにいても多分生きていけない、とりあえず王都に行こう、仕事を探して生きることを優先しよう」
ヒューズは顔一つ変えずに言う
そうして土の道を歩きだした
「おばさんを...村を襲ったのって....」
「奴隷商人だろう...遺体の数が合わないし明らかに人が殺してたしな...」
「王都までどれくらいかかるの?」
そう言うとヒューズは地図を開く
「歩きで3~4日だ」
「そんなに歩くのかぁ...」
しょぼくれた顔をしながらも頬を叩き気合を入れる
そうして歩き回った続けると日は落ち暗くなった
「ファイアボール」
ウィリアムが詠唱をすると手のひらから火に球を飛ばし松明に火をつける
「獣人は魔法が使えないから大変だね~、もしも一人だったら怖くて村から出られなかったかもな~」
ニコニコとしながらウィリアムは言う
しかし反応は一切なく静寂が続く
別に忘れたわけではない、ヒューズを励ますために言っているのもあるが自分の心を保つためでもある、そうじゃなければ気が参ってしまうからだ
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