生きる世界と冒険譚

山田浩輔

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コーダルの男

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 (青い髪.....北方の怪力民族、コーダル人か....!?)
 「持っている物資をよこせ、そしてすぐ立ち去れば命は助けてやる、そうじゃなけりゃ痛めつけてから奪うぞ」
 相手は盗賊とは違う、汚い目ではなく兵士の目に近い、ウィリアムは話し合おうとも考えるが一旦端に置き、戦いに集中する。
 男は斧を振り上げると同時に走り出しウィリアムを捕らえる、ウィリアムは咄嗟に近くにあった椅子を投げつけるが男は椅子を左手で受け止めて斧を振る。
 咄嗟に机を蹴り上げて斧を防ぐ、しかし斧はこちらにはこず天井のシャンデリアが落ちてくる。
 (ウィリアム、上だ)
 「あっぶね!!」
 受け身を取りつつ後ろに転がるが棚に激突し陶磁器が落ちバラバラになる、破片が目に入らないように手で覆うとミメーシスが指示をする
 (椅子が飛んでくる、右方向に避けろ)
 ウィリアムは判断が遅れ椅子が腕に当たり痛みが走る、目を開けずに運任せにナイフを投げるが、攻撃が外れて天井に突き刺さる

 男が斧を拾おうした瞬間にウィリアムは破片を片手一杯に掴み投げつける、手が血まみれになるが痛みを無視しそのまま真正面に走りポーチに手を入れる。
 「ミメーシス! 任せたぞ!!」
 ウィリアムは叫ぶと煙玉をそこらじゅうに投げ飛ばし部屋を走り回る。
 煙がゆっくりと部屋を包み込み当たるが見えなくなっていく。
 男の攻撃を確実に避けて食器や家具などを投げ、ウィリアムから直接的な攻撃は一才行わず煙が立ち込めていった。

 (正面右の方にいる、我がやつの後ろから叫ぶ、全速力で走り、斬れ)
 ウィリアムはなんとなくだが位置を確認し、準備をする、直剣を抜きその時を確実に待つ。


 「うおおおおおお!!!!」
 ウィリアムはミメーシス、自分の声が耳に入った瞬間に真っ直ぐ突っ込む。
 男の斧の風切り音が鳴る方向へ走る。
 (男が左方向に逃げた、走れ)
 家具や食器など邪魔になるものは全て投げ、端に集めることでウィリアムは一直線に走り込む。
 男の斧がくればミメーシスが教える、避けることを意識しつつ走ると次の瞬間にウィリアムは顔から地面に転けてしまいうつ伏せに倒れる、足元にあったのはウィリアムが投げた嘔吐物であった。
 「煙だらけじゃ見えねえからなぁ、少しは頭が回るようだがここまでだ」
 ドタンと音を立ててしまったため男は迷いなく斧を振り上げる
 (この一撃は避けることに集中しろ、そうすれば勝利だ)
 ウィリアムは右に転がり避け、仰向けになる。
 「終わりだ、小僧!!」

 そう言った時だった。
 「ファイア」
 銃声が鳴り響き金属音を立てる、結衣が発砲したのだ。銃弾は斧に命中し男の斧を落とした。
 ウィリアムはすぐに立ち上がると男を倒して馬乗りになり首元に剣を当てる。
 「コーダルだろ、盗賊なんかする必要ない、この村で何があった...?」
 息切れを起こしつつもウィリアムは問う、男は少しの沈黙をするが口を動かす。
 「山賊だ、この村を支配している、女子供が人質にされた...これ以上関わらないでくれ」
 
 「....山賊だとしても引き——」
 (ウィリアム、こいつらを助けろ)
 突然のミメーシスの声に少し驚くが表情を変えずミメーシスの話をウィリアムは黙って聞く
 (我の名を出しつつ宣教師ということにして問題を解決しろ、そうすれば我はより強力になる)
 言っていることはわかるのだがさっきまで殺し合った相手を助けるのは気が引ける、だが協力するとなんとなくで言ったのもありミメーシスの言うことを嫌々ながらも呑むことにした。
 
 「俺はこう見えて宣教師でな、困っている人は見捨てられないんだ、だから助けてあげよう、ミメーシス様の思し召しだ」
 神などまともに信じたことはなく宗教について詳しくないため、ウィリアムはそれっぽい口調で男に話す。

 「ウィリアムって実は宣教師だったんですか...?」
 結衣がウィリアムの耳元で男に聞こえない声で囁く
 「んなわけねえだろ、後で説明するからとりあえず適当に話を合わせてくれ」
 結衣はこのことについて知らない、今説明すると面倒臭いことになるので話を合わせてもらうように言う。
 結衣は疑問を残しながらも話を合わせる
 「他にも私たちの仲間がいるのでまずは誤解を解かせてください、皆さんを集めてください」
 結衣はそう言って銃を背中に背負うと外に出た。
 「さっき関わるなと言ったが...見捨てるってのは目覚めが悪い、手伝わせてく.......れ....」
 ウィリアムは男の手を取ると引き上げようとするが男は重く引っ張ってもびくともしない両手で全力をだすがびくともせず男が立ち上がるとウィリアムは尻餅をついて倒れてしまった。
 「ああ、ありがとな」
 男はウィリアムの手を掴むとひょいと持ち上げた。
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