生きる世界と冒険譚

山田浩輔

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モブAの夢

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 「なぜお前がここに....!」
 ウィリアムは目に殺気を込めながら女に言うが、女は不敵に笑うと口を開く。
 「言ってなかったわね、私はここの頭領なの、本当はセルジャを囮にして助けてもらった後は皆殺しにするつもりだったけどあなたが殺しちゃったもんね?」
 
 セルジャという名前に一瞬困惑するが女を助ける時に殺したあの男を思い出す。
 「それは残念だったな、まあ結局結果は同じだったしいいじゃねえか」
 ウィリアムは憎まれ口を叩くと女は牢屋の扉を開ける。
 「気に入ったわ、私の名前はパトリシア、あなたみたいな強い気な人は大好きなの、泣き叫ぶ時にゾクゾクしちゃうからね」
 そう言いながらパトリシアは釘を取り出す。
 「ロルフ、押さえなさい」
 パトリシアが言うと後ろの男が小走りでウィリアムに近づき押し倒す。
 
 「あなたはどこを打たれたい? 頭? 目? 指?」
 パトリシアがウィリアムの腕に手を置くと釘を当てる。
 「どこまで耐えられるかしらね?」
 そう言ってハンマーを振り上げる。
 「残念だったな!」
 ウィリアムは鎖を一瞬で解くとパトリシアの顔に向かい蹴りを当てる。
 しかしその蹴りは男の顔で防がれてしまった。
 「残念、でもどうやって抜け出したのかしら?」
 「さあね? そろそろ来たか...?」
 「頭領! 侵入者です!」
 男が扉を開けると叫んだ。
 「あらあら大変ね、本当に面倒な子」
 パトリシアは余裕そうに微笑むとナイフを取り出した。

____________________________________________________________

 「鎖に細工を?」
 フォルトがレオンに聞く。
 「ああ、やり方はシンプル、鎖のつなぎめを糸で繋いで見えないように隠しただけだ、ただ絡まってないかが心配だがな!」
 そう言いながら扉を蹴破り戦闘に入る。
 「とりあえずこいつらをどうにかしねえとな!」
 「そうですね!」
 レオンは木製の椅子を山賊に投げ飛ばすと同時にテーブルを蹴り上げ壁を作ると後ろに隠れる。
 矢が飛び出ていける状況ではない、フォルトが雷鎖剣を身を出さずに当てずっぽうで振り切る。
 あくまで牽制にしかならないが相手を動かさないことに意味がある、人質を解放することが最優先だからである。

 一方3階 結衣とヒューズ、そして村人2人ショールとフランクである。
 3人の山賊と人質たち、人質は皆眠っており手の届く範囲にある、突っ込めば殺されかねない、こちらはバレてはいないものの迂闊に近づけない
 「ヒューズは弓は使えますか?」
 結衣はヒューズに聞くがヒューズは首を横に振る。
 「使えなくはないが後ろの人質に当たる可能性の方が高い、どっちにしろ厳しいな...」
 そうして結衣は考えているとショールが声をかける。
 「あの、私は狩人をやっているのである程度ですが弓が使えます、しかし少し厳しいと思うのでこうしましょう」
 

 正面から弓をヒューズとショールが構えながら部屋に入る。
 山賊は女の髪を掴み首に剣を当てる。
 「止まれ! 弓を離せ、首を切るぞ!」
 ヒューズと村人矢を地面に落としゆっくりと両手をあげ弓を落とす。
 そして山賊が少し警戒をといた瞬間に後ろのわずかな壁の穴から銃身を突き出す。
 「ファイア」 
 銃声が鳴り響き山賊の1人の心臓を撃ち、残り2人も後ろを向く、続いてフランクもわずかな穴から槍を突き出し脇腹を貫通し壁に磔のような状態にする。
 ヒューズがそのまままっすぐ突っ込みタンスを倒して壁のようにして人質に当たらない角度を作り出す。
 「ショール! 打て!」
 ヒューズが叫ぶとショールは弓を構え一瞬にして山賊の肩を射抜いた。
 山賊はバランスを崩し倒れるとヒューズは近くの人質の距離を離し山賊の首を断ち切った。
 「遅れてすまん、パパが助けに来たからな、リスタルト」
 眠って娘にそう言うとギュッと抱いた。
 「うまく行きましたね」
 ショールが安心感からため息をつく。
 「ああ、お前が言う一番安全な策ってやつな」
 フランクはショールの肩を叩き賞賛する。
 「なんとかなりましたね」
 結衣はヒューズに話しかけ労う。
 「だがまだ戦いが終わったわけじゃない、十分気をつけろ」
 相変わらずあまり表情は変わらないが少し穏やかであった。
 「そうですね、では私が皆さんを連れて行きます」
 そう言ってフランクと共に皆を村に連れ帰ることにした。

 「良かったです、私の妻が残した最後の宝ですから、本当にありがとうございます」
 そう言ってヒューズに深々と頭を下げた。
 「お礼はあとで皆に言ってくれ、ミメーシス...?様への感謝も忘れずにな」
 「はい、そうですね、私もあなたたちのよう....な......」
 地面にぽとぽとと血が流れる、胸を貫く剣、ショールはゆっくりと後ろを向くと心臓を貫かれたはずの男が鬼の形相でいた。
  
 「ショール!」
 山賊に蹴り飛ばしたが既に絶命していた、まさに死に物狂いの一撃だったのだろう、ヒューズはショールを抱え剣をゆっくりと引き抜くと布を無駄と分かっていながらも当てる。

 「しっかりしろ! 娘がいるんだろ! こんなところで死ぬな!」
 ヒューズは声をかけるがショールの目はだんだん焦点が合わなくなっていく。
 「.......ヒューズ....さん...もしも....私が死んだら...フランク....に資産を預け...て...ください...あいつなら...きっと......」



 ショールは喋らなくなった、ヒューズはゆっくりと立ち上がるとショールを背負い歩き出す。
 「ここじゃ辛気臭い、せめて外に出しとく..あとでちゃんと墓に入れとくからな...」
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