生きる世界と冒険譚

山田浩輔

文字の大きさ
47 / 77

優しい青年

しおりを挟む

 第四紀 四一〇年
 トゥリアの生まれは、普通の農村であった。
 「良いことって何?」
 トゥリアの言葉に父は答える。
 「それはね、人が喜ぶことをしてあげることさ、世界は不平等さ、でもね、それに流されてはいけないよ」
 「うんわかった! 僕、いっぱいいいことをするね!!」
 
 第四期 四二〇年
 「トゥリアー! 手伝ってくれー!」
 畑を耕す老人がトゥリアに声をかける。
 「はあい!」
 トゥリアはニコニコとしながら桑を持つと、老人と共に手伝いをする、すると次々と村民がパンや飲み物などを持ってきてくれた。
 「いつもありがとうございます」
 トゥリアが皆に言うと皆は笑う。
 「いいんだよ!」
 「いつも俺たちの方が助けられてんだ! こんなもん礼を言われるほどのことじゃねえよ!」
 18歳になったトゥリアは村一番の優しい青年として有名であった、村民達もトゥリアに驕ることなく、とても良い関係性を築いていた、思伝テレパシーにより、人を助けることが得意であった、困っていればすぐに助ける、そうして人に信用されていった。


 第四期 四九三年
 「ああ.....みんな........」
 皆に看取られ、トゥリアは孫の手を握りながら、ゆっくりと目を閉じる。
 (俺は先に行くよ...みんな)


 しかしその時、身体の痛みが突然消え、地面に倒れ伏す、そしてトゥリアがゆっくりと立ち上がると、そこには死んだはずの自分が横たわっていた。
 状況を飲み込めず、トゥリアは手を見る。
 「若返ってる...?」
 そう口にした時であった。
 「父さん!!」
 トゥリアの息子が泣きながら叫ぶ。
 [トゥリア]は死んでいた。
 皆が泣く中、トゥリアはこの事実に困惑した。



 そうしてトゥリアは、様々な人を渡り歩いた、初めはたくさんの人々を笑顔にし、たくさんの人を助け続けた。



      飽きた



 人を助けてみたけど、なぜかだんだんわかってきた、どんな顔をしていくのか、喜ぶ顔、全てが見飽きた。



 冒険をしてみた、巨大なお宝、強いモンスター、仲間との絆、高揚する物だった。


          飽きた
 
 宝も力も絆も、やがて慣れてしまい、何も感じなくなり始めた。
 

 王として過ごしてみた。
 金銀の財宝、酒、女、城酒池肉林の日々、全てが豪華で最高の生活であった。


          飽きた
 

 楽しいのは最初だけ、刺激が少ないその生活はすぐにつまらないものになった。

 

 犯罪を犯してみた、湧き出る興奮、圧倒的なまでの背徳感、殺し、奪い、泣かせ、今までとは違う感覚であった。


          飽きた


 犯罪も慣れてしまえば日常、それ以上の収穫というのはありえなかった。


 もう自分は空っぽだ、自らが何をしても楽しくない、そうだ、今度は物語の主人公になるのではなく、物語を作ってみたい、それをみたら、俺は何か変われるだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...