生きる世界と冒険譚

第十三話 聴取と理解

　～教会～
　「どうも、今日もお目にかかれて光栄です、ココ様」
　ルイスに変装したフォルトがココに挨拶をする。
　「おはよ！！」
　ココは元気よくフォルトに挨拶をするとココは手を出す。
　「あの甘いやつちょうだい！！」
　「甘いやつ.......砂糖ですね、少々お待ちください」
　「やったー！」
　ココは喜びのあまりに飛び跳ね、フォルトはそれを奇怪な目で見そうなるが冷静になり食堂へと向かう。
　「砂糖は...これですかね？」
　角砂糖の入った瓶を取り出すとココの元へ向かい、手に角砂糖を一粒、ココの手の上に乗せるとココはひょいと一口で食べると頬を抑える。
　「うめえ！」
　ココはフォルトの手をブンブンと振りながらもっと欲しいと言わんばかりに口を大きく開ける。
　「どうぞどうぞ」
　フォルトはココの口にどんどん角砂糖を投入していくと頬いっぱいに角砂糖が溜まった所で口を閉じる。
　「ん～！」
　(やはりそうだ、この子はあくまで利用されているされているだけのただの子供だ、しかしカルダー人ではない、どこかの国から輸入された奴隷か？)
　ゆっくりとしゃがむとココの耳元に手を伸ばす。
　「ココ様、ゴミがついてます」
　「ありがとぉ」
　フォルトはココの耳元の主従媒体が付いてないかを確認するがどちらにも付いてないことを確認するとゆっくりと立ち上がる。
　「ココ様....あなたは元々どのような場所にいましたか？」
　幼い子供ということもありココに出生を聞くとココは不満そうに口を開く。
　「前は言おうとしても聞かなかったくせに～」
　「あはは、まあいいじゃないですか、教えてください」
　優しげな笑顔を見せるとココは答える。
　「私は森でお母さんと一緒にいたの、だけど急になくなっちゃって」
　「死んでしまったのかい？」
　「わかんない、急にいなくなったの」
　ココは悲しげな表情を見せることなく淡々と答える。
　「そうですか、それは大変だったでしょうに...あなたのお母さんも羽が生えていたのですか？」
　「うん、そうだよ！」
　「そうですか...お父さんは？」
　「うーん、わかんない、見たことない！」
　「お父さんは知らない...続けてください」
　「それでね、お母さんは言ってたの、人間には見つかったら酷い目に遭わされるって、でもみんな優しくて、私もみんなこと好きだよ！」
　「...そうですか、私もあなたのことが好きですよ」
　フォルトは微笑むとゆっくりと立ち上がる。
　「ありがとうございます、食事の用意ができてます、後で部屋に来てください」
　フォルトは一言言うと部屋から出ていった。
　
　「ココ様ー！！」
　ホセはココの前まで走って来ると息を切らしながら話す。
　「置いて....いかずに....起こして...ください...！」
　「ごめんごめん」
　ココはホセの頭を撫でながら宥めるとホセの顔色はみるみる良くなりにこやかな顔になる。
　「まあ仕方ないですね！　僕が悪かったです！」
　すっかりホセの機嫌は治り、二人は食堂へと向かうのであった。




　「以上のことからココは利用されているだけの可能性が高いです」
　「そうですか...報告ありがとうございます...そうなるとよりルイスが怪しくなりましたね...」
　アルスは顎を手にやり考え込む。
　「その反応...やっぱり何を言っても答えませんか」
　「ええ、何も喋らない、悲鳴こそあげますが何をしても答えません、一言も」
　「そうですか...」
　「ラルクさんの容態は？」　
　「ラルクは...最近は血を出すようになり始めて...もう長くはないかと...」
　
　「...ミメーシスさん、ラルクさんは本当に助からないんですか？」
　(不可能だ、細胞が破壊されている以上は死を待つ以外の選択肢はない)
　
　「こんな所で一人失うのは惜しいですね...」
　「死と隣り合わせの仕事ですけど...ムードメーカーのような存在が死んでしまうのはとても辛いです、簡単に人は死にますから」
　アルスは悲しそうな表情で静かに話した。