混色の元ダンジョンマスター様。

摂政

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変貌と、新天地。

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「ふふっ♡ マスティスさん♡」

 つんつん、と指で俺のほっぺた(らへんの骨)を優しく触って来るソラハさん。ちょっかいをかけている、そんな悪戯心が分かるからこそ、俺は「アハハ……」と力なく笑っていられるが、内心心臓バクバクだった。
 いや、心臓なんてないからなんてツッコミや指摘は勘弁ね。今、言いたいのはそう言う事ではないから。

 ジョルグジョルグさまの部下であるグリマと、3日間の修業を終えたソラハさん。
 彼女は自分の《青の力》を用いて、グリマの作り出した空間に時の流れを遅くした。時の流れを一時的に遅くる事によって、彼女は3日という時間を3年という長期的な時間に変えた。
 戻って来た頃には教育していたグリマは疲労困憊、そしてソラハさんの魔力の塊である尾の数は倍の4本になっていた。

 ソラハ・テンジョウインの成長は、純粋に戦力アップとして嬉しい。ただそれは、あくまでも"ソラハ・テンジョウインとしての成長"に関してである。
 断じて、ソラハ・テンジョウイン"らしきもの"ではない。
 尻尾の本数が4本となって戻って来た彼女。そこに以前のような純粋な輝きはなく、妖艶な女の瞳であった。

 試しに前の事を覚えてるかと聞くと、尻尾が2本の頃だった時のことを話し始めたのである。
 俺が聞きたかったのは勇者となる前の話であったのだが、前の事と聞いてそれが出てくる辺りから、彼女の魂が変わっていると感じたのである。


=====
名前;ソラハ・テンジョウイン
職業;【勇者】 【妖狐】の勇者 青の者 元転生者 四の尾
保有スキル;獣化 魔術の才能 雷魔術 探知 《魔術カスタム》 《青の力》 毒魔術 自然の力 詠唱短縮 魔法攻撃力上昇 魔法攻撃力増加 魔法耐性
筋力;E→C-
耐久力;F→E+
敏捷性;B
魔力;S++→EX;1

元転生者
……転生者としての知識を失った者の称号。転生知識による知能技術の補正はなくなるが、成長性が上昇する。

四の尾
…四本の尾を持つ、特殊な獣人の称号。古に失われたはずの種族である。

毒魔術
……毒を作り出し、自由自在に操る魔術。毒の威力と効果、時間なども決めることが出来る。

自然の力
……物体の力を貸りて、魔法の効果を高めます。炎魔術ならば炎、水ならば水など要素が必要となって来ます。

詠唱短縮
…魔法の詠唱時間を短縮します。攻撃力や範囲などには変化は有りません。

魔法攻撃力上昇
…魔法による攻撃力を上昇させます。他の魔法能力変化系と重複可です。

魔法攻撃力増加
…魔法による攻撃力を増加させます。他の魔法能力変化系と重複可です。

魔法耐性
…魔法による攻撃を軽減します。毒や麻痺などの状態異常にかかる可能性も軽減します。
=====


(……なんだ、この魔法砲台は)

 魔法に関する上昇補正が強すぎる。
 『魔法攻撃力上昇』と『魔法攻撃力増加』の2つによって魔法の攻撃力を上げ、さらに『詠唱短縮』によって魔法の発動時間を短縮して攻撃の速度アップ。『自然の力』を使うために用意して置けばさらに攻撃力を上げる事も出来る。
 恐らく、魔法に関してで言えば、彼女の右に出る者は居ないだろう。居たとしても相当少ないはずだ。

「魔法が弱点な敵は、ソラハさんにお願いしよう」

「うふふ♡ 任せて♡」

 ……だからその言い方が、どこか怖いのだけど。

「むぅぅぅぅぅ!」

 そんな俺とソラハさんとの会話に、ササはとても不満気だったが。


「あっ! あそこに魔物が居ますよっ! 倒して良いですかっ!」

 どこか投げやりな様子で、ササは目の前に出て来た魔物を指差す。
 ササが指差したのは、スクラというゴーレムの亜種3体である。


=====
スクラ
…ゴーレムの亜種。土くれではなく、人間などが落とした道具や生物の死骸などから生まれたモンスターであり、ゴーレムと同じく中心部であるコアが弱点。
=====

 どうやらあれは、生物の死骸から生まれたパターンであるようだ。
 身体の大きさに反して腕や足が小さすぎる、まるでそこいらに落ちていたモノに合いもしない手足を無理矢理取り付けたかのようだ。大きさからしても、そんなに強そうではなさそうである。

「あれくらいなら、ゴブリン達でいけるんじゃないか?
 ほら、ゴブリン達に与えた赤い糸の武器の具合も見るのにも」

「……っ! そうですわね! ご主人様の言う通り、ゴブリン達にやらさせますっ!」

 ササが嬉しそうな様子でゴブリン達に指示を出すと、赤い服と赤い糸で作った武具を与えられたゴブリン達が、スクラ達に向かっていく。
 スクラ達はゴブリン達に襲われて抵抗するが、赤い服によって防がれているからなのか、まったくダメージになっていない。むしろ襲われている事にも気付いていないのかも知れない。

 そして、肝心の攻撃の方。
 赤い糸が先についた棍棒でゴブリン達が殴ると共に、まるで柔らかい何かを殴ってるかのようにスクラ達はゴブリン達の攻撃で一撃で倒される。

「……ゴブリン達で一撃か。これは良い戦力アップだな」

 スクラは弱い魔物ではあるが、断じてあそこまで柔らかい魔物ではない。
 ある意味、硬さが取り柄みたいな部分があるスクラの身体に、あそこまであっさりとやれていたら、それは重要な戦力として数えて良いだろう。

「褒められて嬉しいです、ご主人様!
 ――――ふふんっ! どーだぁ」

 と、ササは上半身の豊満な女らしい身体の胸を張って得意げである。
 それに対して、ソラハさんは笑うも、その眼はちっとも笑っていなかった。

「私も、失礼しますね。
 魔法の試し打ちをば」

 そう言って、ソラハさんは指をゴブリン達の方向に向けると、その指先から小さな雷光が走る。
 小さな雷光はゴブリン達の脇を通り抜けると、そのまま後ろの方から新たに現れたスクラの胸を貫いていた。

「おおっ、正確な攻撃だなぁ」

「えぇ、狙いは外してません」


 する~り、と雷光がすぐ脇を通ったゴブリンの服が、ぺろりと落ちていった。

「あの蜘蛛が作った服も、大した事がありませんでしたね」

 煽るように言うと、カチンと来たササが、ソラハさんの服を掴んでいた。

「この女狐が……!」
「やりますか、この淫乱蜘蛛……」


 ……どうか、仲良くして欲しいものである。

 そうこうしている内に、俺達は目的地の大陸へと辿り着いた。

 俺が安らかな余生を送るために来た、新天地のサクリ大陸に。
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