409 / 459
第409話 ジュールちゃんは大会に興味がないようです配信
しおりを挟む
「はっきり申すアル。まったく、興味がわかないネ」
「だよねぇ~」
スコティッシュさんの操る飛竜に乗って、シュンカトウ共和国のドラスト商会へとやって来た私。早速、食堂で働いているジュールちゃんを会議室にまで呼び出してもらった。そして、大会がある件を話したんだけど、ジュールちゃんの反応はこのような形である。
そりゃあ、そうか。ジュールちゃんにとって、メニューに載っている料理は全てラーメンか、それ以外か。そして、ラーメン以外の料理は全てラーメンを引き立てるモノでしかないのだから。
「せめて、ラーメン勝負なら、この『ラーメン業務特化型アルファ・ゴーレムサポートシステム搭載型ゴーレム・モード"仕事"』、一世一代の大仕事としてお受けする予定アルが」
「それだと、ワットちゃんが不利すぎるでしょ」
ワットちゃんの領分は、洋食。洋食の様々な料理でお客様をもてなすのが彼女に与えた命題であり、だからこそ1つ1つの料理はお客様に提供する分としては問題ないが、競うとなると話は別だ。
――――そう、2人とも商売には向いているが、大会というモノに向いてなさすぎる。
そもそも、2人に料理で決着をつけようという気概はない。
あくまでも周囲の、彼女達の店のお客様が、「2人が料理対決したらどちらが勝つんだろう?」という悩みを持っていて、そのために対決しようと言い出しているだけの話なのだ。
2人に料理人としての因縁みたいなモノはないから、出来るとすれば売上対決くらい? でもそれだと、回転率の高さを売りにしているジュールちゃんの圧勝になっちゃうのは言うまでもない話だろう。
「こりゃあ、やっぱりエコロさんの方には私からお断りしておくよ。多分、ワットちゃんも勝負にならないと思うし」
「そうして欲しいアル。それじゃあ、私はそろそろ店の仕込みに――――」
ジュールちゃんが立ち上がろうとしたその時、会議室の扉が大きな音と共に開かれる。
「大将。こちらに居られましたか」
そこに居たのは、綺麗な扇子を持った、3mを越える和服の長身美女。頭には鉢巻きを巻いており、黒いエプロンをしているのが実にシュールであった。
「【アオギ】……いま、私はススリア代表と話している所アル。些細な用件なら、あんたに任せるヨ」
「――――っ! こっ、光栄のいたり! では、早速、食材の買い出しに行ってまいりますぅ!」
ジュールちゃんに褒められて、一瞬、女の子がしちゃいけないようなヤバい顔を見せた彼女は、即座に走り去っていった。
「ジュールちゃん、彼女は……?」
「私の弟子の、オウギワシの獣人族のアオギという女アル。なんでも、ラーメンに感動して、自分もラーメンを作りたいと直談判してきたネ」
オウギワシ……確か、飛ぶ鳥の中で最も重い鳥として有名な鳥だったはず。その重さは、大型の鳥であるグンカンドリやコンドルをも上回り、頭の羽根が扇のような形に見えるからその名がつけられた。
最大の特徴は、その握力。140㎏の握力にて、最強の猛禽類と数えられるオウギワシは、自分の重さの2倍であろうとも軽々と持って飛ぶことができるという。
「あの巨体ながら、狭いところであろうとも、軽々と通り抜けられるから、配達員として重宝されていたので、試しにとラーメン配達に出したところ、すっかりファンになって、今ではうちの副店長になってしまったアルヨロシ」
「実力はあるのか」
……ふむ。そうか、副店長レベルとなると、あるいは――――
「――――? ススリア代表、大丈夫アルか? ラーメン作って、食べて元気になるヨ!」
「いや、大丈夫だ。それよりも、もしかするとこの大会の話、なんとかなるかもしれない」
とは言っても、それを通すには、ワットちゃんの情報も探らないといけないけど。
「はぁ……まぁ、代表が元気なら、それで良いアルが」
「まぁ、という訳で今日はジュールちゃんのメンテナンスをしようかな」
私はそう言って、分解用の道具をジュールちゃんに近付けていく。
「だっ、代表? その手は何ネ? その道具で、なにするアルか?」
「なぁに、簡単な話だ。ジュールちゃんを開発した際にはなかった、新たな力があるだけの事」
そう、ジュールちゃんを開発した際、【オーラ】はあったが、【スピリッツ】はなかった。
あらゆるものを引き寄せたり、離したりするこの能力があれば、彼女の仕事能力はさらにパワーアップする事、間違いなしである。
「しっ、しかし、代表? 一度出来ている身体をバラすという事は、それなりに苦痛が伴うって、デルタちゃんからの情報にはあったネ。もし戦闘用じゃなかったら、耐えられなかったかもって」
「まぁ、確かに、言ってみれば腕を分解して、新たな腕を付けるようなモノだから。でもまぁ、凄い能力が手に入ると思えば――――あっ、逃げるな! 待って、ジュールちゃん!」
その後、泣いて懇願するジュールちゃんを捕まえた私は、無事、ジュールちゃんに【スピリッツ】の能力を与える事に成功したのでした。
「だよねぇ~」
スコティッシュさんの操る飛竜に乗って、シュンカトウ共和国のドラスト商会へとやって来た私。早速、食堂で働いているジュールちゃんを会議室にまで呼び出してもらった。そして、大会がある件を話したんだけど、ジュールちゃんの反応はこのような形である。
そりゃあ、そうか。ジュールちゃんにとって、メニューに載っている料理は全てラーメンか、それ以外か。そして、ラーメン以外の料理は全てラーメンを引き立てるモノでしかないのだから。
「せめて、ラーメン勝負なら、この『ラーメン業務特化型アルファ・ゴーレムサポートシステム搭載型ゴーレム・モード"仕事"』、一世一代の大仕事としてお受けする予定アルが」
「それだと、ワットちゃんが不利すぎるでしょ」
ワットちゃんの領分は、洋食。洋食の様々な料理でお客様をもてなすのが彼女に与えた命題であり、だからこそ1つ1つの料理はお客様に提供する分としては問題ないが、競うとなると話は別だ。
――――そう、2人とも商売には向いているが、大会というモノに向いてなさすぎる。
そもそも、2人に料理で決着をつけようという気概はない。
あくまでも周囲の、彼女達の店のお客様が、「2人が料理対決したらどちらが勝つんだろう?」という悩みを持っていて、そのために対決しようと言い出しているだけの話なのだ。
2人に料理人としての因縁みたいなモノはないから、出来るとすれば売上対決くらい? でもそれだと、回転率の高さを売りにしているジュールちゃんの圧勝になっちゃうのは言うまでもない話だろう。
「こりゃあ、やっぱりエコロさんの方には私からお断りしておくよ。多分、ワットちゃんも勝負にならないと思うし」
「そうして欲しいアル。それじゃあ、私はそろそろ店の仕込みに――――」
ジュールちゃんが立ち上がろうとしたその時、会議室の扉が大きな音と共に開かれる。
「大将。こちらに居られましたか」
そこに居たのは、綺麗な扇子を持った、3mを越える和服の長身美女。頭には鉢巻きを巻いており、黒いエプロンをしているのが実にシュールであった。
「【アオギ】……いま、私はススリア代表と話している所アル。些細な用件なら、あんたに任せるヨ」
「――――っ! こっ、光栄のいたり! では、早速、食材の買い出しに行ってまいりますぅ!」
ジュールちゃんに褒められて、一瞬、女の子がしちゃいけないようなヤバい顔を見せた彼女は、即座に走り去っていった。
「ジュールちゃん、彼女は……?」
「私の弟子の、オウギワシの獣人族のアオギという女アル。なんでも、ラーメンに感動して、自分もラーメンを作りたいと直談判してきたネ」
オウギワシ……確か、飛ぶ鳥の中で最も重い鳥として有名な鳥だったはず。その重さは、大型の鳥であるグンカンドリやコンドルをも上回り、頭の羽根が扇のような形に見えるからその名がつけられた。
最大の特徴は、その握力。140㎏の握力にて、最強の猛禽類と数えられるオウギワシは、自分の重さの2倍であろうとも軽々と持って飛ぶことができるという。
「あの巨体ながら、狭いところであろうとも、軽々と通り抜けられるから、配達員として重宝されていたので、試しにとラーメン配達に出したところ、すっかりファンになって、今ではうちの副店長になってしまったアルヨロシ」
「実力はあるのか」
……ふむ。そうか、副店長レベルとなると、あるいは――――
「――――? ススリア代表、大丈夫アルか? ラーメン作って、食べて元気になるヨ!」
「いや、大丈夫だ。それよりも、もしかするとこの大会の話、なんとかなるかもしれない」
とは言っても、それを通すには、ワットちゃんの情報も探らないといけないけど。
「はぁ……まぁ、代表が元気なら、それで良いアルが」
「まぁ、という訳で今日はジュールちゃんのメンテナンスをしようかな」
私はそう言って、分解用の道具をジュールちゃんに近付けていく。
「だっ、代表? その手は何ネ? その道具で、なにするアルか?」
「なぁに、簡単な話だ。ジュールちゃんを開発した際にはなかった、新たな力があるだけの事」
そう、ジュールちゃんを開発した際、【オーラ】はあったが、【スピリッツ】はなかった。
あらゆるものを引き寄せたり、離したりするこの能力があれば、彼女の仕事能力はさらにパワーアップする事、間違いなしである。
「しっ、しかし、代表? 一度出来ている身体をバラすという事は、それなりに苦痛が伴うって、デルタちゃんからの情報にはあったネ。もし戦闘用じゃなかったら、耐えられなかったかもって」
「まぁ、確かに、言ってみれば腕を分解して、新たな腕を付けるようなモノだから。でもまぁ、凄い能力が手に入ると思えば――――あっ、逃げるな! 待って、ジュールちゃん!」
その後、泣いて懇願するジュールちゃんを捕まえた私は、無事、ジュールちゃんに【スピリッツ】の能力を与える事に成功したのでした。
0
あなたにおすすめの小説
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる