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第453話 バンブリアの怪奇ファイル配信(1)
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~~シュンカトウ騎士団四天王第四の槍 氷魔のエスエース~~
「本当にどこに消えたんだか……」
私、エスエースは、このバンブリアの内情を探っていた。この村の内情を探っている目的は、この村が同じシュンカトウ騎士団四天王の仲間であるピエームの故郷だからだ。
私は元々はウミヅリ王国の魚人族であるが、それでも今はシュンカトウ騎士団の一員だ。同じ騎士団の仲間として、その仲間が困っているのならば助ける。それは至極、当たり前の事だ。
私はその時はまだ騎士団に所属していなかったので、あくまでも人伝に聞いただけなのだが。どうやらその仲間は自分の力が他の騎士達よりも劣っているのを悩み、あろう事か悪魔と契約するなんて馬鹿な選択をしてしまった。その結果、自分の記憶と記録を、悪魔によって奪われてしまったのである。
騎士団の仲間ならば、同じ騎士に相談すれば良いだろうと思うのだが、それは私の考えであり、ピエームの考えではない。
「記憶がないって辛い事だよなぁ。せめて、自分の種族が何者かくらい、聞かせてやりたいよ」
皆は、このバンブリアに来ればピエームの記憶がうっすらとだが蘇ったり、あるいは悪魔に消されずに済んだ何らかの記録が見つかると考えているようだが、私はそんな楽観的な考えは持ち合わせていない。
そんな私がなんでこのバンブリアに来たのかと言えば、ここがバンブーエルフの故郷だと聞いたからだ。
ピエームは、エルフの中でも希少なバンブーエルフという種族だ。あまりにも希少な種族なために、その生態に関してはまだまだ分かっていない事が多すぎる。
例えば私であれば、ペンギンの魚人族であるため、氷属性の力を持っているという事は、幼い頃から知っていた。しかしながら、最近になって極寒の地にて暮らしていくために、火属性の力を持っているという事が分かった。つまり私だけなら、自分が火属性の力を持っているだなんてずっと知らずにいたという事だ。
バンブーエルフにだって、彼女が知らないだけで、バンブーエルフにしかない特別な力があるかもしれない。そういう由来を知る事だって、大事だと私はそう考えているのだ。
「しかし、由来以前に、誰も居ないとは、どういう事だ? この料理の皿に至っては、湯気まで立ってると来た」
湯気が立っているという事は、まだ冷めていないという事。つまりは、ついさっきまでこの場でこの料理を食べようとした者が居たという事だ。
荒らされた形跡も、ましてや一心不乱に逃げ出したという様子もない。
「本当に、この村で何があったんだ?」
私は、頭を使うタイプというよりかは、その頭を使って考える人の指示で動くタイプだというのに。こうなれば、そういう事が得意なザザードとかに、話を聞きに行くとしよう。
1人で探すのは――って、あれ?
「私、いつから一人だった?」
おっ、おかしい。私は自分自身が、そんなに頭が良くないと自負している。だからこそ、自分と一緒に考えてくれる人と共に、この村を捜索していたはずだ。
それなのに、どうして今、私は1人きりなんだ?
――ずるずる。
――ずるずるずるっ。
そんな事を考えていると、背後から何かが引きずる音が聞こえて来る。
振り返ると、そこには棺を引きずる、全身を包帯でグルグルに巻いた大男が数人立っていた。明らかに敵意むき出しであり、同時に明らかにバンブーエルフではなさそうだ。
「なるほど。バンブーエルフを探しているうちに、私もバンブーエルフを連れ去った相手の術中にハマってしまったという事か」
こう言うのをなんというんだったか? そうだ、確か『ミイラ取りがミイラになる』と教わった覚えがある。ミイラという魔物を倒そうとしたら、返り討ちにあって逆にミイラという同族の魔物にされてしまうという話で、ベータちゃんが配信で教えてくれたんだった。
その時に教えてくれたミイラとやらの容姿が、全身を包帯という、白い紙でグルグルに巻いたという、目の前の男にそっくりの容姿だったのだ。
敵の術中にハマってしまった。そう悲観すべきところではあるが、私はそうは思わなかった。むしろ、チャンスだと考えていた。
「話が早くて助かる。このミイラ達を倒して行けば、このミイラ達を操る元凶も、それからミイラによって連れ去られたバンブーエルフ達も見つかるはずだ」
私はそう考えて、自分の拳に氷を纏わせる。直接触るのは、本能で危険だと判断したためだ。
「(連れ去られたのが私だけとは考えにくい。プロトンやダラ、ザザード、ピエームなんかも、それからサビキとトカリ、ススリア、ゼータなどもこの術中に巻き込まれているかもしれない)」
あくまでも可能性でしかないが、誰かが私のように閉じ込められていると考えた方が、希望がムクムクと、この包帯男どもを倒す気概も湧いて来るというモノだ。
「さぁ、行くぞ! 我の名前はエスエース! シュンカトウ騎士団所属にして、シュンカトウ騎士団四天王の1人! 別名、氷魔のエスエース! 皆まとめて、氷漬けにしてあげますよ!」
私はそう言って、ミイラ達に戦いを挑むのであった。
「本当にどこに消えたんだか……」
私、エスエースは、このバンブリアの内情を探っていた。この村の内情を探っている目的は、この村が同じシュンカトウ騎士団四天王の仲間であるピエームの故郷だからだ。
私は元々はウミヅリ王国の魚人族であるが、それでも今はシュンカトウ騎士団の一員だ。同じ騎士団の仲間として、その仲間が困っているのならば助ける。それは至極、当たり前の事だ。
私はその時はまだ騎士団に所属していなかったので、あくまでも人伝に聞いただけなのだが。どうやらその仲間は自分の力が他の騎士達よりも劣っているのを悩み、あろう事か悪魔と契約するなんて馬鹿な選択をしてしまった。その結果、自分の記憶と記録を、悪魔によって奪われてしまったのである。
騎士団の仲間ならば、同じ騎士に相談すれば良いだろうと思うのだが、それは私の考えであり、ピエームの考えではない。
「記憶がないって辛い事だよなぁ。せめて、自分の種族が何者かくらい、聞かせてやりたいよ」
皆は、このバンブリアに来ればピエームの記憶がうっすらとだが蘇ったり、あるいは悪魔に消されずに済んだ何らかの記録が見つかると考えているようだが、私はそんな楽観的な考えは持ち合わせていない。
そんな私がなんでこのバンブリアに来たのかと言えば、ここがバンブーエルフの故郷だと聞いたからだ。
ピエームは、エルフの中でも希少なバンブーエルフという種族だ。あまりにも希少な種族なために、その生態に関してはまだまだ分かっていない事が多すぎる。
例えば私であれば、ペンギンの魚人族であるため、氷属性の力を持っているという事は、幼い頃から知っていた。しかしながら、最近になって極寒の地にて暮らしていくために、火属性の力を持っているという事が分かった。つまり私だけなら、自分が火属性の力を持っているだなんてずっと知らずにいたという事だ。
バンブーエルフにだって、彼女が知らないだけで、バンブーエルフにしかない特別な力があるかもしれない。そういう由来を知る事だって、大事だと私はそう考えているのだ。
「しかし、由来以前に、誰も居ないとは、どういう事だ? この料理の皿に至っては、湯気まで立ってると来た」
湯気が立っているという事は、まだ冷めていないという事。つまりは、ついさっきまでこの場でこの料理を食べようとした者が居たという事だ。
荒らされた形跡も、ましてや一心不乱に逃げ出したという様子もない。
「本当に、この村で何があったんだ?」
私は、頭を使うタイプというよりかは、その頭を使って考える人の指示で動くタイプだというのに。こうなれば、そういう事が得意なザザードとかに、話を聞きに行くとしよう。
1人で探すのは――って、あれ?
「私、いつから一人だった?」
おっ、おかしい。私は自分自身が、そんなに頭が良くないと自負している。だからこそ、自分と一緒に考えてくれる人と共に、この村を捜索していたはずだ。
それなのに、どうして今、私は1人きりなんだ?
――ずるずる。
――ずるずるずるっ。
そんな事を考えていると、背後から何かが引きずる音が聞こえて来る。
振り返ると、そこには棺を引きずる、全身を包帯でグルグルに巻いた大男が数人立っていた。明らかに敵意むき出しであり、同時に明らかにバンブーエルフではなさそうだ。
「なるほど。バンブーエルフを探しているうちに、私もバンブーエルフを連れ去った相手の術中にハマってしまったという事か」
こう言うのをなんというんだったか? そうだ、確か『ミイラ取りがミイラになる』と教わった覚えがある。ミイラという魔物を倒そうとしたら、返り討ちにあって逆にミイラという同族の魔物にされてしまうという話で、ベータちゃんが配信で教えてくれたんだった。
その時に教えてくれたミイラとやらの容姿が、全身を包帯という、白い紙でグルグルに巻いたという、目の前の男にそっくりの容姿だったのだ。
敵の術中にハマってしまった。そう悲観すべきところではあるが、私はそうは思わなかった。むしろ、チャンスだと考えていた。
「話が早くて助かる。このミイラ達を倒して行けば、このミイラ達を操る元凶も、それからミイラによって連れ去られたバンブーエルフ達も見つかるはずだ」
私はそう考えて、自分の拳に氷を纏わせる。直接触るのは、本能で危険だと判断したためだ。
「(連れ去られたのが私だけとは考えにくい。プロトンやダラ、ザザード、ピエームなんかも、それからサビキとトカリ、ススリア、ゼータなどもこの術中に巻き込まれているかもしれない)」
あくまでも可能性でしかないが、誰かが私のように閉じ込められていると考えた方が、希望がムクムクと、この包帯男どもを倒す気概も湧いて来るというモノだ。
「さぁ、行くぞ! 我の名前はエスエース! シュンカトウ騎士団所属にして、シュンカトウ騎士団四天王の1人! 別名、氷魔のエスエース! 皆まとめて、氷漬けにしてあげますよ!」
私はそう言って、ミイラ達に戦いを挑むのであった。
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