配信スローライフをしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです

摂政

文字の大きさ
453 / 459

第453話 バンブリアの怪奇ファイル配信(1)

しおりを挟む
 ~~シュンカトウ騎士団四天王第四の槍 氷魔のエスエース~~

「本当にどこに消えたんだか……」

 私、エスエースは、このバンブリアの内情を探っていた。この村の内情を探っている目的は、この村が同じシュンカトウ騎士団四天王の仲間であるピエームの故郷だからだ。
 私は元々はウミヅリ王国の魚人族であるが、それでも今はシュンカトウ騎士団の一員だ。同じ騎士団の仲間として、その仲間が困っているのならば助ける。それは至極、当たり前の事だ。

 私はその時はまだ騎士団に所属していなかったので、あくまでも人伝に聞いただけなのだが。どうやらその仲間は自分の力が他の騎士達よりも劣っているのを悩み、あろう事か悪魔と契約するなんて馬鹿な選択をしてしまった。その結果、自分の記憶と記録を、悪魔によって奪われてしまったのである。
 騎士団の仲間ならば、同じ騎士に相談すれば良いだろうと思うのだが、それは私の考えであり、ピエームの考えではない。

「記憶がないって辛い事だよなぁ。せめて、自分の種族が何者かくらい、聞かせてやりたいよ」

 皆は、このバンブリアに来ればピエームの記憶がうっすらとだが蘇ったり、あるいは悪魔に消されずに済んだ何らかの記録が見つかると考えているようだが、私はそんな楽観的な考えは持ち合わせていない。
 そんな私がなんでこのバンブリアに来たのかと言えば、ここがバンブーエルフの故郷だと聞いたからだ。

 ピエームは、エルフの中でも希少なバンブーエルフという種族だ。あまりにも希少な種族なために、その生態に関してはまだまだ分かっていない事が多すぎる。
 例えば私であれば、ペンギンの魚人族であるため、氷属性の力を持っているという事は、幼い頃から知っていた。しかしながら、最近になって極寒の地にて暮らしていくために、火属性の力を持っているという事が分かった。つまり私だけなら、自分が火属性の力を持っているだなんてずっと知らずにいたという事だ。
 バンブーエルフにだって、彼女ピエームが知らないだけで、バンブーエルフにしかない特別な力があるかもしれない。そういう由来ルーツを知る事だって、大事だと私はそう考えているのだ。

「しかし、由来ルーツ以前に、誰も居ないとは、どういう事だ? この料理の皿に至っては、湯気まで立ってると来た」

 湯気が立っているという事は、まだ冷めていないという事。つまりは、ついさっきまでこの場でこの料理を食べようとした者が居たという事だ。
 荒らされた形跡も、ましてや一心不乱に逃げ出したという様子もない。

「本当に、この村で何があったんだ?」

 私は、頭を使うタイプというよりかは、その頭を使って考える人の指示で動くタイプだというのに。こうなれば、そういう事が得意なザザードとかに、話を聞きに行くとしよう。
 1人で探すのは――って、あれ?



いつから・・・・一人・・だった・・・?」



 おっ、おかしい。私は自分自身が、そんなに頭が良くないと自負している。だからこそ、自分と一緒に考えてくれる人と共に、この村を捜索していたはずだ。
 それなのに、どうして今、私は1人きりなんだ?

 ――ずるずる。
 ――ずるずるずるっ。

 そんな事を考えていると、背後から何かが引きずる音が聞こえて来る。
 振り返ると、そこには棺を引きずる、全身を包帯でグルグルに巻いた大男が数人立っていた。明らかに敵意むき出しであり、同時に明らかにバンブーエルフではなさそうだ。

「なるほど。バンブーエルフを探しているうちに、私もバンブーエルフを連れ去った相手の術中にハマってしまったという事か」

 こう言うのをなんというんだったか? そうだ、確か『ミイラ取りがミイラになる』と教わった覚えがある。ミイラという魔物を倒そうとしたら、返り討ちにあって逆にミイラという同族の魔物にされてしまうという話で、ベータちゃんが配信で教えてくれたんだった。
 その時に教えてくれたミイラとやらの容姿が、全身を包帯という、白い紙でグルグルに巻いたという、目の前の男にそっくりの容姿だったのだ。

 敵の術中にハマってしまった。そう悲観すべきところではあるが、私はそうは思わなかった。むしろ、チャンスだと考えていた。

「話が早くて助かる。このミイラ達を倒して行けば、このミイラ達を操る元凶も、それからミイラによって連れ去られたバンブーエルフ達も見つかるはずだ」

 私はそう考えて、自分の拳に氷を纏わせる。直接触るのは、本能で危険だと判断したためだ。

「(連れ去られたのが私だけとは考えにくい。プロトンやダラ、ザザード、ピエームなんかも、それからサビキとトカリ、ススリア、ゼータなどもこの術中に巻き込まれているかもしれない)」

 あくまでも可能性でしかないが、誰かが私のように閉じ込められていると考えた方が、希望がムクムクと、この包帯男ミイラどもを倒す気概も湧いて来るというモノだ。

「さぁ、行くぞ! 我の名前はエスエース! シュンカトウ騎士団所属にして、シュンカトウ騎士団四天王の1人! 別名、氷魔のエスエース! 皆まとめて、氷漬けにしてあげますよ!」

 私はそう言って、ミイラ達に戦いを挑むのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

処理中です...