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第1章『俺の召喚獣だけレベルアップする/雪ん子の章』
第21話 さすらいの幽鬼(1)
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今まで、冒険者という存在は、冒険者ではない一般人にとって、《テレビの中で活躍する芸能人》のような存在であった。
芸能人は確かに存在するし、会う事だって出来る。
けれども、あくまでもテレビでしか見ない、自分とは別世界で働いている人間、という印象の人もいるだろう。
冒険者は、一般人にとってはその程度の認識であった。
活躍は耳にするも、実際に自分達にどれほど関係があるかと言われれば、さほどない、という程度の。
----そんな、どこにでもあるような均衡を、一体の魔物が破った。
ダンジョンの外、魔物が出ない安全地帯(※1)であるはずの現代日本。
ちょっと大きめの武器を持っているだけで、捕まってしまうような法治社会に解き放れし、怪物。
特殊進化個体として、ダンジョンの外にでも活動できてしまう、"幽鬼タケシ・ハザマ"なる怪物。
その怪物が襲うのは、冒険者のみならず、時には近くに居た一般人をも襲って、その死体すら見つからないのだとか。
「(物騒な世の中だな……)」
テレビでは、このことに対し、多くの批判が相次いでいる。
歯に衣着せぬ物言いで人気の芸能人やらが、「冒険者の怠慢だ」「国に任せるのが間違ってる」「そもそもダンジョン出現の原因って何?!」みたいなことを言っているが、結局は誰も良い案を出せない。
一種の過激的な意見としては、殺人鬼や死刑囚が出た方がまだマシだって声もある。
なにせ、殺人鬼や死刑囚ならば、警察でも殺せるから。
かのバケモノは、魔物の分類----つまりは、冒険者が倒すべき、冒険者しか倒せない相手なのだから。
そんな中、かのバケモノと同じクエストを受けていた俺は、かなり怯えていた。
情報がほとんどない、それどころかいつ襲って来るかも分からない相手。
そんなの、天災の類……いや、それらは今だったら気象予報なんかで分かるから、それ以上の厄介ごとである。
雪ん子が殺された時、俺はそこまで動揺しなかった。
確かに愛らしいし、主戦力である事には変わらないが、どれだけ強かろうが、雪ん子は所詮は召喚獣である。
【召喚士】である俺にとって、召喚獣である雪ん子が殺されても、また召喚すれば良いだけだ。
【魔法使い】が魔法を使うのと、ほとんど同じ感覚である。
けれども、それが自分の命となると話は変わってくる。
もしかしたら殺されると思うと、途端に背筋がぞくぞくっと、恐怖心が沸き上がるのを感じていた。
「(あの場に集まっていた他の冒険者も、何人かソイツの、幽鬼によって殺されて消えてしまったらしい)」
一般人を襲う方もあるが、それでも圧倒的にヤツは同じクエストを受けた冒険者を襲っている。
1人、また1人と、幽鬼はダンジョンの内外に関わらず、消して行ってる。
俺が襲われる順番になるのも、時間の問題かもしれない。
いつ、自分に襲ってくるんだろう?
いつ、この恐怖は消えるんだろう?
考えれば、考えるほど、この恐怖はどんどんと膨らんでくる。
「(いっそ、ダンジョンの中で襲ってくれれば楽なのに)」
それか、果たし状みたいな、自分に襲い来る手紙みたいなのがあれば……。
「いや、待てよ?」
"いつ襲って来るか分からない相手"が怖いなのだから、"いつ襲われても良い状況"なら!
万全の準備の上で、敵と対峙するなら……それほど、恐怖はないかもしれない。
「よしっ! そうと決まれば!」
俺は早速、行動に移した。
まず数日分の食糧を、鞄にありったけ詰め、そして学校に無期限の休学届を出した。
学校も俺が狙われてる(かも?)な状況を市役所から聞いてたらしく、申請はすんなりと通った。
そして俺は----ダンジョンに籠った。
ダンジョンの外で襲うから怖いのだから、それだったらダンジョンの中で対峙した方がまだマシだ。
「さぁ、来るなら来い!」
俺以外の冒険者が倒してくれる可能性を第一に考えつつ、俺はダンジョンにこもるのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
かのバケモノが姿を現したのは、俺がダンジョンに引きこもっておよそ4日後のことだった。
俺がこもっていたダンジョンは、Fランクダンジョン《木こりが暮らす水辺》。
俺が初めてクリアしたと言って良い、思い出のダンジョンだ。
草木が生い茂る、果物などもいっぱいのダンジョン。
そんなダンジョン風景が、突如として一変する。
草木は消え、代わりにどこまでも続く山々の風景に。
壁には青白い炎を灯した蝋燭が並び、地面のあちこちには人間の骸骨がちらほらと。
どこからか聞こえるカラスの声も、不気味さを演出していた。
===== ===== =====
幽鬼タケシ・ハザマが ダンジョンに 介入を開始します
限定的結界により ダンジョンから 出られなくなりました
===== ===== =====
そして、メッセージを確認して、ほんの数十秒後。
元が人間だとは思えない、異形の化け物が姿を現した。
「グォォォォ! シネ、シネ、シネ、シネェェェェ!」
醜悪な呪いのような言葉をまき散らし、かの化け物は巨大な腕を振るう。
一度振るうだけで、地面は抉られ、そして周囲に飛び散る。
「元は【格闘家】という話だが、全然それっぽくないな」
【格闘家】というよりかは、駄々をこねて暴れる子供みたいだ。
「シネェェ! ボンブハ、シネェェ! オレガ、テンサイノオレサマガ、イキカエルンダ!」
===== ===== =====
【幽鬼タケシ・ハザマ】は 特殊クエスト 【生還ノススメ】を 進行中です
達成率;09/19
===== ===== =====
巨大な腕を振るう幽鬼の上には、そのようなメッセージウインドウが浮かんでいた。
「09/19……?」
もしや、あの数字とクエストの名前から察するに、農業クエストを受けていた19人を殺せば、蘇るとかなのだろうか……?
そして、そのうちの1人が、俺、と。
「10ニンメェ! オマエデ、10ニンメェ! コロスゥ、コロシテヤルゥゥゥ!」
「俺は10人目じゃないからな。むざむざ殺されないからな」
そのために、わざわざダンジョンで待ち構えてたんだよ。
お前を倒すための、俺の武器を使うためにな。
と言う訳で、例によって例のごとく!
俺のエースたる雪ん子を、召喚!
そして剣を渡す!
「----ピィッ!」
召喚された雪ん子は、手にした剣を幽鬼の方へ突き付けていた。
「ジャマモノ! コロス! コロスゥ!」
「ピィッ! ピピッ!」
幽鬼はまるでゴリラのように腕を前に出して向かってきて、それに対抗するかのようにうちの雪ん子も剣を片手に向かって行く。
「(幽鬼よ。俺が今できる最大限の戦力で、立ち向かわせてもらうぜ!)」
……ところで、雪ん子よ。
お前の服、ちょっと変わってない?
なんか、裾の辺りが、黒っぽくなってないか?
(※1)安全地帯
ダンジョンに現れる、魔物達が入って来れないエリアの事。主に冒険者達の休息場所などに用いられる
芸能人は確かに存在するし、会う事だって出来る。
けれども、あくまでもテレビでしか見ない、自分とは別世界で働いている人間、という印象の人もいるだろう。
冒険者は、一般人にとってはその程度の認識であった。
活躍は耳にするも、実際に自分達にどれほど関係があるかと言われれば、さほどない、という程度の。
----そんな、どこにでもあるような均衡を、一体の魔物が破った。
ダンジョンの外、魔物が出ない安全地帯(※1)であるはずの現代日本。
ちょっと大きめの武器を持っているだけで、捕まってしまうような法治社会に解き放れし、怪物。
特殊進化個体として、ダンジョンの外にでも活動できてしまう、"幽鬼タケシ・ハザマ"なる怪物。
その怪物が襲うのは、冒険者のみならず、時には近くに居た一般人をも襲って、その死体すら見つからないのだとか。
「(物騒な世の中だな……)」
テレビでは、このことに対し、多くの批判が相次いでいる。
歯に衣着せぬ物言いで人気の芸能人やらが、「冒険者の怠慢だ」「国に任せるのが間違ってる」「そもそもダンジョン出現の原因って何?!」みたいなことを言っているが、結局は誰も良い案を出せない。
一種の過激的な意見としては、殺人鬼や死刑囚が出た方がまだマシだって声もある。
なにせ、殺人鬼や死刑囚ならば、警察でも殺せるから。
かのバケモノは、魔物の分類----つまりは、冒険者が倒すべき、冒険者しか倒せない相手なのだから。
そんな中、かのバケモノと同じクエストを受けていた俺は、かなり怯えていた。
情報がほとんどない、それどころかいつ襲って来るかも分からない相手。
そんなの、天災の類……いや、それらは今だったら気象予報なんかで分かるから、それ以上の厄介ごとである。
雪ん子が殺された時、俺はそこまで動揺しなかった。
確かに愛らしいし、主戦力である事には変わらないが、どれだけ強かろうが、雪ん子は所詮は召喚獣である。
【召喚士】である俺にとって、召喚獣である雪ん子が殺されても、また召喚すれば良いだけだ。
【魔法使い】が魔法を使うのと、ほとんど同じ感覚である。
けれども、それが自分の命となると話は変わってくる。
もしかしたら殺されると思うと、途端に背筋がぞくぞくっと、恐怖心が沸き上がるのを感じていた。
「(あの場に集まっていた他の冒険者も、何人かソイツの、幽鬼によって殺されて消えてしまったらしい)」
一般人を襲う方もあるが、それでも圧倒的にヤツは同じクエストを受けた冒険者を襲っている。
1人、また1人と、幽鬼はダンジョンの内外に関わらず、消して行ってる。
俺が襲われる順番になるのも、時間の問題かもしれない。
いつ、自分に襲ってくるんだろう?
いつ、この恐怖は消えるんだろう?
考えれば、考えるほど、この恐怖はどんどんと膨らんでくる。
「(いっそ、ダンジョンの中で襲ってくれれば楽なのに)」
それか、果たし状みたいな、自分に襲い来る手紙みたいなのがあれば……。
「いや、待てよ?」
"いつ襲って来るか分からない相手"が怖いなのだから、"いつ襲われても良い状況"なら!
万全の準備の上で、敵と対峙するなら……それほど、恐怖はないかもしれない。
「よしっ! そうと決まれば!」
俺は早速、行動に移した。
まず数日分の食糧を、鞄にありったけ詰め、そして学校に無期限の休学届を出した。
学校も俺が狙われてる(かも?)な状況を市役所から聞いてたらしく、申請はすんなりと通った。
そして俺は----ダンジョンに籠った。
ダンジョンの外で襲うから怖いのだから、それだったらダンジョンの中で対峙した方がまだマシだ。
「さぁ、来るなら来い!」
俺以外の冒険者が倒してくれる可能性を第一に考えつつ、俺はダンジョンにこもるのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
かのバケモノが姿を現したのは、俺がダンジョンに引きこもっておよそ4日後のことだった。
俺がこもっていたダンジョンは、Fランクダンジョン《木こりが暮らす水辺》。
俺が初めてクリアしたと言って良い、思い出のダンジョンだ。
草木が生い茂る、果物などもいっぱいのダンジョン。
そんなダンジョン風景が、突如として一変する。
草木は消え、代わりにどこまでも続く山々の風景に。
壁には青白い炎を灯した蝋燭が並び、地面のあちこちには人間の骸骨がちらほらと。
どこからか聞こえるカラスの声も、不気味さを演出していた。
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幽鬼タケシ・ハザマが ダンジョンに 介入を開始します
限定的結界により ダンジョンから 出られなくなりました
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そして、メッセージを確認して、ほんの数十秒後。
元が人間だとは思えない、異形の化け物が姿を現した。
「グォォォォ! シネ、シネ、シネ、シネェェェェ!」
醜悪な呪いのような言葉をまき散らし、かの化け物は巨大な腕を振るう。
一度振るうだけで、地面は抉られ、そして周囲に飛び散る。
「元は【格闘家】という話だが、全然それっぽくないな」
【格闘家】というよりかは、駄々をこねて暴れる子供みたいだ。
「シネェェ! ボンブハ、シネェェ! オレガ、テンサイノオレサマガ、イキカエルンダ!」
===== ===== =====
【幽鬼タケシ・ハザマ】は 特殊クエスト 【生還ノススメ】を 進行中です
達成率;09/19
===== ===== =====
巨大な腕を振るう幽鬼の上には、そのようなメッセージウインドウが浮かんでいた。
「09/19……?」
もしや、あの数字とクエストの名前から察するに、農業クエストを受けていた19人を殺せば、蘇るとかなのだろうか……?
そして、そのうちの1人が、俺、と。
「10ニンメェ! オマエデ、10ニンメェ! コロスゥ、コロシテヤルゥゥゥ!」
「俺は10人目じゃないからな。むざむざ殺されないからな」
そのために、わざわざダンジョンで待ち構えてたんだよ。
お前を倒すための、俺の武器を使うためにな。
と言う訳で、例によって例のごとく!
俺のエースたる雪ん子を、召喚!
そして剣を渡す!
「----ピィッ!」
召喚された雪ん子は、手にした剣を幽鬼の方へ突き付けていた。
「ジャマモノ! コロス! コロスゥ!」
「ピィッ! ピピッ!」
幽鬼はまるでゴリラのように腕を前に出して向かってきて、それに対抗するかのようにうちの雪ん子も剣を片手に向かって行く。
「(幽鬼よ。俺が今できる最大限の戦力で、立ち向かわせてもらうぜ!)」
……ところで、雪ん子よ。
お前の服、ちょっと変わってない?
なんか、裾の辺りが、黒っぽくなってないか?
(※1)安全地帯
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