俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
21 / 354
第1章『俺の召喚獣だけレベルアップする/雪ん子の章』

第21話 さすらいの幽鬼(1)

しおりを挟む
 今まで、冒険者という存在は、冒険者ではない一般人にとって、《テレビの中で活躍する芸能人》のような存在であった。

 芸能人は確かに存在するし、会う事だって出来る。
 けれども、あくまでもテレビでしか見ない、自分とは別世界で働いている人間、という印象の人もいるだろう。

 冒険者は、一般人にとってはその程度の認識であった。
 活躍は耳にするも、実際に自分達にどれほど関係があるかと言われれば、さほどない、という程度の。


 ----そんな、どこにでもあるような均衡を、一体の魔物が破った。


 ダンジョンの外、魔物が出ない安全地帯(※1)であるはずの現代日本。
 ちょっと大きめの武器を持っているだけで、捕まってしまうような法治社会に解き放れし、怪物。
 特殊進化個体として、ダンジョンの外にでも活動できてしまう、"幽鬼タケシ・ハザマ"なる怪物。
 その怪物が襲うのは、冒険者のみならず、時には近くに居た一般人をも襲って、その死体すら見つからないのだとか。

「(物騒な世の中だな……)」

 テレビでは、このことに対し、多くの批判が相次いでいる。
 歯に衣着せぬ物言いで人気の芸能人やらが、「冒険者の怠慢だ」「国に任せるのが間違ってる」「そもそもダンジョン出現の原因って何?!」みたいなことを言っているが、結局は誰も良い案を出せない。

 一種の過激的な意見としては、殺人鬼や死刑囚が出た方がまだマシだって声もある。
 なにせ、殺人鬼や死刑囚ならば、警察でも殺せるから。
 かのバケモノは、魔物の分類----つまりは、冒険者が倒すべき、冒険者しか倒せない相手なのだから。
 
 そんな中、かのバケモノと同じクエストを受けていた俺は、かなり怯えていた。

 情報がほとんどない、それどころかいつ襲って来るかも分からない相手。
 そんなの、天災の類……いや、それらは今だったら気象予報なんかで分かるから、それ以上の厄介ごとである。

 雪ん子が殺された時、俺はそこまで動揺しなかった。
 確かに愛らしいし、主戦力である事には変わらないが、どれだけ強かろうが、雪ん子は所詮は召喚獣である。
 【召喚士】である俺にとって、召喚獣である雪ん子が殺されても、また召喚すれば良いだけだ。
 【魔法使い】が魔法を使うのと、ほとんど同じ感覚である。

 けれども、それが自分の命となると話は変わってくる。
 もしかしたら殺されると思うと、途端に背筋がぞくぞくっと、恐怖心が沸き上がるのを感じていた。

「(あの場に集まっていた他の冒険者も、何人かソイツの、幽鬼によって殺されて消えてしまったらしい)」

 一般人を襲う方もあるが、それでも圧倒的にヤツは同じクエストを受けた冒険者を襲っている。
 1人、また1人と、幽鬼はダンジョンの内外に関わらず、消して行ってる。
 俺が襲われる順番になるのも、時間の問題かもしれない。

 いつ、自分に襲ってくるんだろう?
 いつ、この恐怖は消えるんだろう?

 考えれば、考えるほど、この恐怖はどんどんと膨らんでくる。

「(いっそ、ダンジョンの中で襲ってくれれば楽なのに)」

 それか、果たし状みたいな、自分に襲い来る手紙みたいなのがあれば……。

「いや、待てよ?」

 "いつ襲って来るか分からない相手"が怖いなのだから、"いつ襲われても良い状況"なら!
 万全の準備の上で、敵と対峙するなら……それほど、恐怖はないかもしれない。

「よしっ! そうと決まれば!」

 俺は早速、行動に移した。

 まず数日分の食糧を、鞄にありったけ詰め、そして学校に無期限の休学届を出した。
 学校も俺が狙われてる(かも?)な状況を市役所から聞いてたらしく、申請はすんなりと通った。


 そして俺は----ダンジョンに籠った。


 ダンジョンの外で襲うから怖いのだから、それだったらダンジョンの中で対峙した方がまだマシだ。

「さぁ、来るなら来い!」

 俺以外の冒険者が倒してくれる可能性を第一に考えつつ、俺はダンジョンにこもるのだった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 かのバケモノが姿を現したのは、俺がダンジョンに引きこもっておよそ4日後のことだった。

 
 俺がこもっていたダンジョンは、Fランクダンジョン《木こりが暮らす水辺》。
 俺が初めてクリアしたと言って良い、思い出のダンジョンだ。
 草木が生い茂る、果物などもいっぱいのダンジョン。

 そんなダンジョン風景が、突如として一変する。
 
 草木は消え、代わりにどこまでも続く山々の風景に。
 壁には青白い炎を灯した蝋燭が並び、地面のあちこちには人間の骸骨がちらほらと。
 どこからか聞こえるカラスの声も、不気味さを演出していた。


 ===== ===== =====
 幽鬼タケシ・ハザマが ダンジョンに 介入を開始します
 限定的結界により ダンジョンから 出られなくなりました
 ===== ===== =====


 そして、メッセージを確認して、ほんの数十秒後。
 元が人間だとは思えない、異形の化け物が姿を現した。

「グォォォォ! シネ、シネ、シネ、シネェェェェ!」

 醜悪な呪いのような言葉をまき散らし、かの化け物は巨大な腕を振るう。
 一度振るうだけで、地面は抉られ、そして周囲に飛び散る。

「元は【格闘家】という話だが、全然それっぽくないな」

 【格闘家】というよりかは、駄々をこねて暴れる子供みたいだ。

「シネェェ! ボンブハ、シネェェ! オレガ、テンサイノオレサマガ、イキカエルンダ!」


 ===== ===== =====
 【幽鬼タケシ・ハザマ】は 特殊クエスト 【生還ノススメ】を 進行中です
 達成率;09/19
 ===== ===== =====


 巨大な腕を振るう幽鬼の上には、そのようなメッセージウインドウが浮かんでいた。

「09/19……?」

 もしや、あの数字とクエストの名前から察するに、農業クエストを受けていた19人を殺せば、蘇るとかなのだろうか……?
 そして、そのうちの1人が、俺、と。

「10ニンメェ! オマエデ、10ニンメェ! コロスゥ、コロシテヤルゥゥゥ!」
「俺は10人目じゃないからな。むざむざ殺されないからな」

 そのために、わざわざダンジョンで待ち構えてたんだよ。
 お前を倒すための、俺の武器を使うためにな。

 と言う訳で、例によって例のごとく!
 俺のエースたる雪ん子を、召喚!
 そして剣を渡す!

「----ピィッ!」

 召喚された雪ん子は、手にした剣を幽鬼の方へ突き付けていた。

「ジャマモノ! コロス! コロスゥ!」
「ピィッ! ピピッ!」

 幽鬼はまるでゴリラのように腕を前に出して向かってきて、それに対抗するかのようにうちの雪ん子も剣を片手に向かって行く。

「(幽鬼よ。俺が今できる最大限の戦力で、立ち向かわせてもらうぜ!)」

 ……ところで、雪ん子よ。
 お前の服、ちょっと変わってない?

 なんか、裾の辺りが、黒っぽくなってないか?





(※1)安全地帯
 ダンジョンに現れる、魔物達が入って来れないエリアの事。主に冒険者達の休息場所などに用いられる
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...