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第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』
第171話 ある姉妹の選択
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「----はぁ~、あれは美しかった。まるで可愛いボクのように」
悪癖龍マルガリータは、うっとりと、嬉しそうな表情を浮かべていた。
彼女が嬉しそうな表情を浮かべているのは、この間見た千山鯉の魔法を思い返しているからだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
----古代龍魔法。
古の龍のみが使えるとされた、現代では失われし魔法技術。
何故、失われたかといえば、古の龍以外に使える者が居ないからである。
圧倒的なる才覚と、膨大なる魔力。
その2つを持ち合わせるのが、古の龍しか居ないから。
使える者が居ないのなら、いくら強力な魔法といえども、失われるのが当然の流れ、である。
普通の魔法は対応する魔法文字を一文字一文字ずつ組み合わせて生み出す。
だが、古代龍魔法は現存する魔法文字全てを1つの帯のように編み込み、編み込み方や長さなどを変えることによって初めて発動する、未知の魔法。
原理は分かれども、どのようにして魔法文字を編み込むかが分からないし、本当にどうやって発動しているかが分からない魔法なのだ。
同じ龍の血を継ぎし者、そして同じ《マナ》使いであるマルガリータでも、どうすればその頂に辿り着けるか分からない。
ただ、あの美しすぎる魔法が、マルガリータの心を捕えて、離さなかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あぁ、妾もそう思った物じゃよ、リタ」
自身もあの魔法に魅了されている事を肯定しつつ、ココアは妹に自分の考えを語る。
「単純に、全身に"らいなー"、魔力痕が刻み込まれているからといって、使えるようになる代物ではないじゃろう。あれは」
そんな事で使えるようになれば、失われることもなかっただろう。
古の龍にしか使えなかった、そんな失われた魔法を再び使えるようにするという事が、そんな簡単に行くはずがない。
「恐らくは、彼女自身も相応の努力と覚悟を持って、会得したのじゃろうな。あの古代龍魔法を。
雪ん子が、【オーバーロード】の力を使えるようになったように、相当の努力をして」
雪ん子は、相手を確実に倒すという覚悟と、それから【ネットショッピング】で買ったアクセサリーの効果で、【オーバーロード】を使えるようになった。
そして、恐らくは千山鯉もまた、同じように頑張った後に、あの古代龍魔法を使えるようになったのだろう。
どちらも努力し、どちらも覚悟を持って、どちらも強力な力を得たのだろう。
それは、ココアにも、勿論マルガリータにも分かっている事であった。
「でしょうね、可愛いボクもそう思うよ。……ねぇ、妾の姉御」
「どうしたんじゃ、リタ?」
龍の妹の問いに、狐吸血鬼の姉は優しく聞き返した。
「雪ん子ちゃんと千山鯉ちゃん、どちらも一緒にボスの配下になるのはダメなのかな?」
それは、マルガリータの兼ねてよりの疑問だった。
2人は争うよりも、一緒にボスである冴島渉の召喚獣になれば、皆一緒に冒険できる。
それで済む話ではないのか、と。
「……それは、出来ぬ相談じゃな。あの2人はただの召喚獣ではないからのぉ」
しかし、それは無理だと、ココアは言う。
「雪の精霊である、雪ん子。龍ではなく山住みを選んだ鯉である、千山鯉。
2人は全く違う召喚獣ではあるが、"冴島渉が【召喚 レベルアップ可能】を初めて行った召喚獣"という点で同一の存在じゃ。そして、この世に同じ物は2つとない」
「あんなに、姿が違うのに?」
「姿の差など、些細な問題なのじゃ。あの2人の召喚獣は互いが互いの"どっぺるげんがー"、という所なのじゃろうな」
ドッペルゲンガーとは、召喚獣の一種であり、魔物の一種であり、そして霊的現象である。
自分自身と全く同じ姿をした者が、もう1人存在しているという現象なのだが、ドッペルゲンガーの厄介な所は、とある伝承が広まっている事。
その伝承とは----『自分のドッペルゲンガーに出会うと死ぬ』というもの。
そういう伝承が世界各地に根深く伝わっており、同時に召喚獣と魔物にも、そういう効果を持っている。
いくつか制約はあるみたいなのだが、相手と同一の姿に化け、相手1人に対する極大なる特攻能力を持つというものなのだ。
「つまりは、妾が何を言いたいかと言えば、雪ん子と千山鯉の2人は、『互いに互いを殺す』という宿命を帯びた2人なのじゃ。あの2人は仲間になる事はなく、ぶつかり合えばぶつかり合うほど互いの存在をすり減らす。
----妾達に出来る事は、主殿に相応しい召喚獣を1人に絞る事だけ。それだけじゃ」
冴島渉が知らないうちに2人の召喚獣を手放し、その代わりに2人の召喚獣を得たという、そんな単純な話ではない。
本物との絆を消され、代わりにドッペルゲンガーとの絆を与えられた。
「もはや、どちらが本物かなんて、どうでも良いのじゃ。問題なのは、この先、どちらが本物として、主殿の召喚獣になるのかという話じゃ」
「----だったら、可愛いボクは千山鯉ちゃんと仲間になりたい」
マルガリータは、そう姉に言った。
「可愛いボクは、ボスの仲間としては一番の新参者の召喚獣。雪ん子ちゃんも、ファイントちゃんも、あんまり絆はない。可愛いボクは正直な所、どちらでも良い。
----だったら、あんな綺麗な魔法を放つ千山鯉ちゃんと、仲間になりたいんですよ!」
ココアは、面食らっていた。
マルガリータは、妹は----今までの雪ん子達との絆ではなく、新たな千山鯉達との絆を選んだのである。
家族を、絆を大切にしようとするココアにとっては、裏切りに近い行為である。
しかしながら、家族や絆を大切にするココアにとっては、妹であるマルガリータの願いは叶えたい。
「ねぇ、妾の姉御。可愛いボクは、間違ってるかな?」
マルガリータの言葉に、ココアの返答は----
(※)ドッペルゲンガー
世界各地に伝わるオカルト現象の1つ、またはそれを基に生み出された魔物や召喚獣のこと。相手の姿と全く同じ姿に化け、相手に対して極大の特攻能力を発揮する。ただし、その特攻は自分に対しても作用する
『自分のドッペルゲンガーに出会うと死ぬ』という伝承から、相手か自分のどちらかが完全に消滅するまで、この勝負は終わることはない
弱点は、ドッペルゲンガーに対して罵倒したり、感謝したりする事。要するに、自分とは全く別の存在であると、自分と相手も認める事である。こうすることで、ドッペルゲンガーの変身状態を解くことが出来ると言われている
悪癖龍マルガリータは、うっとりと、嬉しそうな表情を浮かべていた。
彼女が嬉しそうな表情を浮かべているのは、この間見た千山鯉の魔法を思い返しているからだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
----古代龍魔法。
古の龍のみが使えるとされた、現代では失われし魔法技術。
何故、失われたかといえば、古の龍以外に使える者が居ないからである。
圧倒的なる才覚と、膨大なる魔力。
その2つを持ち合わせるのが、古の龍しか居ないから。
使える者が居ないのなら、いくら強力な魔法といえども、失われるのが当然の流れ、である。
普通の魔法は対応する魔法文字を一文字一文字ずつ組み合わせて生み出す。
だが、古代龍魔法は現存する魔法文字全てを1つの帯のように編み込み、編み込み方や長さなどを変えることによって初めて発動する、未知の魔法。
原理は分かれども、どのようにして魔法文字を編み込むかが分からないし、本当にどうやって発動しているかが分からない魔法なのだ。
同じ龍の血を継ぎし者、そして同じ《マナ》使いであるマルガリータでも、どうすればその頂に辿り着けるか分からない。
ただ、あの美しすぎる魔法が、マルガリータの心を捕えて、離さなかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あぁ、妾もそう思った物じゃよ、リタ」
自身もあの魔法に魅了されている事を肯定しつつ、ココアは妹に自分の考えを語る。
「単純に、全身に"らいなー"、魔力痕が刻み込まれているからといって、使えるようになる代物ではないじゃろう。あれは」
そんな事で使えるようになれば、失われることもなかっただろう。
古の龍にしか使えなかった、そんな失われた魔法を再び使えるようにするという事が、そんな簡単に行くはずがない。
「恐らくは、彼女自身も相応の努力と覚悟を持って、会得したのじゃろうな。あの古代龍魔法を。
雪ん子が、【オーバーロード】の力を使えるようになったように、相当の努力をして」
雪ん子は、相手を確実に倒すという覚悟と、それから【ネットショッピング】で買ったアクセサリーの効果で、【オーバーロード】を使えるようになった。
そして、恐らくは千山鯉もまた、同じように頑張った後に、あの古代龍魔法を使えるようになったのだろう。
どちらも努力し、どちらも覚悟を持って、どちらも強力な力を得たのだろう。
それは、ココアにも、勿論マルガリータにも分かっている事であった。
「でしょうね、可愛いボクもそう思うよ。……ねぇ、妾の姉御」
「どうしたんじゃ、リタ?」
龍の妹の問いに、狐吸血鬼の姉は優しく聞き返した。
「雪ん子ちゃんと千山鯉ちゃん、どちらも一緒にボスの配下になるのはダメなのかな?」
それは、マルガリータの兼ねてよりの疑問だった。
2人は争うよりも、一緒にボスである冴島渉の召喚獣になれば、皆一緒に冒険できる。
それで済む話ではないのか、と。
「……それは、出来ぬ相談じゃな。あの2人はただの召喚獣ではないからのぉ」
しかし、それは無理だと、ココアは言う。
「雪の精霊である、雪ん子。龍ではなく山住みを選んだ鯉である、千山鯉。
2人は全く違う召喚獣ではあるが、"冴島渉が【召喚 レベルアップ可能】を初めて行った召喚獣"という点で同一の存在じゃ。そして、この世に同じ物は2つとない」
「あんなに、姿が違うのに?」
「姿の差など、些細な問題なのじゃ。あの2人の召喚獣は互いが互いの"どっぺるげんがー"、という所なのじゃろうな」
ドッペルゲンガーとは、召喚獣の一種であり、魔物の一種であり、そして霊的現象である。
自分自身と全く同じ姿をした者が、もう1人存在しているという現象なのだが、ドッペルゲンガーの厄介な所は、とある伝承が広まっている事。
その伝承とは----『自分のドッペルゲンガーに出会うと死ぬ』というもの。
そういう伝承が世界各地に根深く伝わっており、同時に召喚獣と魔物にも、そういう効果を持っている。
いくつか制約はあるみたいなのだが、相手と同一の姿に化け、相手1人に対する極大なる特攻能力を持つというものなのだ。
「つまりは、妾が何を言いたいかと言えば、雪ん子と千山鯉の2人は、『互いに互いを殺す』という宿命を帯びた2人なのじゃ。あの2人は仲間になる事はなく、ぶつかり合えばぶつかり合うほど互いの存在をすり減らす。
----妾達に出来る事は、主殿に相応しい召喚獣を1人に絞る事だけ。それだけじゃ」
冴島渉が知らないうちに2人の召喚獣を手放し、その代わりに2人の召喚獣を得たという、そんな単純な話ではない。
本物との絆を消され、代わりにドッペルゲンガーとの絆を与えられた。
「もはや、どちらが本物かなんて、どうでも良いのじゃ。問題なのは、この先、どちらが本物として、主殿の召喚獣になるのかという話じゃ」
「----だったら、可愛いボクは千山鯉ちゃんと仲間になりたい」
マルガリータは、そう姉に言った。
「可愛いボクは、ボスの仲間としては一番の新参者の召喚獣。雪ん子ちゃんも、ファイントちゃんも、あんまり絆はない。可愛いボクは正直な所、どちらでも良い。
----だったら、あんな綺麗な魔法を放つ千山鯉ちゃんと、仲間になりたいんですよ!」
ココアは、面食らっていた。
マルガリータは、妹は----今までの雪ん子達との絆ではなく、新たな千山鯉達との絆を選んだのである。
家族を、絆を大切にしようとするココアにとっては、裏切りに近い行為である。
しかしながら、家族や絆を大切にするココアにとっては、妹であるマルガリータの願いは叶えたい。
「ねぇ、妾の姉御。可愛いボクは、間違ってるかな?」
マルガリータの言葉に、ココアの返答は----
(※)ドッペルゲンガー
世界各地に伝わるオカルト現象の1つ、またはそれを基に生み出された魔物や召喚獣のこと。相手の姿と全く同じ姿に化け、相手に対して極大の特攻能力を発揮する。ただし、その特攻は自分に対しても作用する
『自分のドッペルゲンガーに出会うと死ぬ』という伝承から、相手か自分のどちらかが完全に消滅するまで、この勝負は終わることはない
弱点は、ドッペルゲンガーに対して罵倒したり、感謝したりする事。要するに、自分とは全く別の存在であると、自分と相手も認める事である。こうすることで、ドッペルゲンガーの変身状態を解くことが出来ると言われている
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