俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
328 / 354
第9章『失楽園のツクり方/冒険者サエジマ・ワタルの章』

第312話 "アイドル"

しおりを挟む
~前回までのあらすじ~
 【魔黄金龍マルガリータ・ラードン】へと進化した、マルガリータ。
 彼女は、敵に洗脳されているヘミングウェイと戦い、進化したことによって得たスキルを駆使し、【黄金の林檎・改】を使って相手を動けないように無力化することに成功する。

 しかし、絶望スカレットによって事前に仕掛けられていたスキル【敵前調理ゲリドンサービス】によって、ヘミングウェイは【悪国戦乱姫ヘミングウェイ・アーク】へと進化した。

 全身真っ黒な影のような姿と化したヘミングウェイは、マルガリータが気付くことも出来ないほど素早く、マルガリータの身体に大きな穴を開けていたのであった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 ----自分の身体に、大穴を開けられていた。

 マルガリータがそう認識すると共に、彼女の身体はそれを傷として認識し、大量の血が彼女の身体から外へと流れていく。
 明らかな致命傷……それでもなんとかマルガリータが生きていられるのは、彼女がヒトではなく、召喚獣だからだ。

 しかし、血が流れたのは、確実に彼女の身体に悪影響を及ぼしていた。

「(力が……全然入らない……)」

 いくらレベルが上がって、強力な力を得たといっても、所詮は身体を持っているのには変わりない。
 血が大量に流れれば、それだけ身体に悪影響が出るのは当然の事である。

「【敵消滅まで、残り15秒】」

 その一方で、そんな攻撃を為したヘミングウェイは、まるで機械のような口調でそう宣言する。
 いや、もはや既にそういう風に行動する召喚獣モノとして、再構築されてしまったのだろう。

 今のヘミングウェイは、先程までのドエムな感じは一切感じられない。
 
「(いつ、可愛いボクに攻撃したのかも分からないくらい速く動けるなら、避けるのだって容易いはずですよね)」

 今までは、ドエムだったから、攻撃を喰らっていた。
 しかし今のヘミングウェイが、攻撃を喰らってくれる雰囲気は、まるで感じられなかった。

 ----打つ手なし。

 マルガリータにとって絶望的なその状況の中、ヘミングウェイが口を開く。

「【疑問】」

 そう言って、ヘミングウェイは、鋭く尖らせた右腕をマルガリータの顔へと向ける。


「【何故、笑う?】」


 そう言われて、マルガリータは初めて、自分が"笑っている"という事を認識した。


「あれ……? なんででしょう?」

 
 今の機械的なヘミングウェイに対して、有効的な手は何一つない。
 自分の勝率は、もはや0.00001%も存在していないだろう。

 しかしそんな状況下で、マルガリータは笑っていた。
 それも自分でも気づかぬうちに、だ。

「案外、これが可愛いボクが憧れている"アイドル"なのかも」

 ----どんな状況であろうとも、ファンに辛い姿を見せない。
 その信念の裏には、どんな状況だろうとも希望を見出すという、強く輝く、誇り高い魂がある。


「(そうだ、可愛いボクはそう無意識に思ったからこそ、アイドルを目指していたんだ。こんな絶望的不利であろうとも、アイドルを目指すボクには、希望が見える。
 ----ここから勝つという、そういう明るい明日が!)」


「【理解不能。敵対者に質問、ドエムなのか?】」
「あなたにだけは、言われたくないよ。ヘミングウェイ」

 マルガリータはそう返し、ガシッと突き付けられていた右腕を掴む。

「いつ、どうやって攻撃しているかは、可愛いボクでも分かりませんでした。でも流石に、"右腕を掴んだ今"は、きちんと触れていますよね?」
「【----?!】」

 そして、ヘミングウェイの【百頭のドラゴン】という並列思考を可能とするスキルは、その瞬間、どうすれば良いかという最適解を見出していた。


「----【二人三脚】、【黄金の林檎・改】に【妖狐神】の職業ジョブスキルを使用」


 まず、ヘミングウェイは【二人三脚】のスキルを使用し、ココアと繋がる。
 本来であれば体力などを共有するだけのこのスキルを使用し、ヘミングウェイはココアの持つ【妖狐神】の職業ジョブの力----魔術属性の改変----を発動させる。
 これによって、身体を改変させる力を持つ【黄金の林檎・改】を改変させる。

 身体を改変させる効果はそのままに、改変させる部分は2つ。

 1つは【相手の年齢ではなく、別の種族への変更】。
 人間からエルフへと変わるように、食べた相手の種族そのものを変更させる。

 もう1つは【効果範囲】。
 当てた相手全てではなく、"一部分"のみに、そのスキルの効果が発動するように設定した。


 2つの改変を終えた【黄金の林檎・改】を、マルガリータは、躊躇なく、ヘミングウェイに向けて放つ。
 そして、【黄金の林檎・改】は、その効果を発動し----


「【----?! 身体に不調?!】」


 ヘミングウェイの身体に、異変が起きるのであった。



(※)【二人三脚】+【百頭のドラゴン】
 本来、【二人三脚】のスキルは、別の相手と体力を共有する程度のスキルしかなく、もう片方の相手の持つ能力が使えるようになるというなどの効果はなかった
 しかし、並列思考を可能とする【百頭のドラゴン】のスキルを併用する事により、スキルで繋がってるだけのもう片方の相手のスキルを使用するための専用の自分自身を作成する事に成功。それにより、相手のスキルも使える事が可能となった

(※)"アイドル"
 マルガリータにとって、アイドルとは、『どんな状況でも希望を持って前に進む者』
 どんな苦境も楽しみ、明るい希望を常に信じている。そして辛い姿を、表に絶対に見せない----卵の頃から、本能レベルで彼女はそれに憧れている
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...