333 / 354
第9章『失楽園のツクり方/冒険者サエジマ・ワタルの章』
第317話 エンジン≠車体
しおりを挟む
「かはっ……」
スカレットは口から血反吐を吐き、その場に倒れる。
雪ん子とファイント、そしてスカレットの戦いは、スカレットの敗北に終わっていた。
スカレットの能力、それは確かに強力無比な代物であり、【無限の距離】という超強力な防御スキルを持つ彼女----恐らく、普通に戦えば、雪ん子とファイントの敗北も十分にあり得た。
スカレットが敗北した理由は、たった1つ。
----彼女の身体が、あまりに弱かった事。
スカレットは、世界を救った元勇者である赤坂帆波の、【街】における姿。
世界を救った元勇者である彼女は、レベルにして見ればⅩ以上……いくら強くなったとはいえども、雪ん子とファイントでは2人がかかりであったとしても、勝利するのは難しかった。
しかし、そんな赤坂帆波は、この世界に帰って来た空海大地が起こした時空震----時空の歪み----に巻き込まれ、ルトナウムという代物になってしまう。
今のスカレットは魂こそレベルⅩ相当の元勇者としての実力はあれども、身体自体はレベルⅤの召喚獣であるファントム。
いくら魂自体はレベルⅩ相当であろうとも、身体はレベルⅤ----まるでそれは、エンジンこそ立派ながら、それを扱う車体があっていないのと同じ。
いかに強力な力を持つスカレットであろうとも、それでは十分に自分のスペックを発揮できずに、結果としてスカレットの敗北となったのであった。
「いやはや、言い訳するつもりは毛頭ないが、私の身体がきちんとしていれば、勝負は私の勝ちだっただろうね」
それは負け惜しみでもなんでもなく、正しい分析であった。
彼女が本気で戦えば勝っていたのは彼女であり、それが出来ない状況だからこそ、雪ん子達は勝てたのだから。
現に対戦相手であるファイントもまた、この戦いで勝てたのは自分の運が良く、相手の運が酷かったと最初に認めていたくらいなのだから。
「何はともあれ、勝ったのはこちらです。さっさと冴島渉の居る所に案内してくださいな」
ファイントの言葉に、スカレットは懐からスイッチのような物を出して応える。
彼女がボタンを押すと、いきなり宙に黒い穴のような物が出現し、雪ん子とファイントの2人はその中から冴島渉の気配を色濃く感じ取っていた。
冴島渉以外にも、そこからはココアやマルガリータ、ヘミングウェイの気配も感じられ、どうやら全員合流しているようであった。
「《ぴぴ! ご主人、いま行く!》」
待ちきれないとばかりに雪ん子が行き、その後を続こうとしてファイントは、スカレットの身体に変化を感じていた。
感覚からして、スカレットがなんらかのスキルを使ったのであろうことは、ファイントは分かっていた。
「……あなた、何をしたの?」
ファイントは脅すようにそう言い、スカレットは「悪あがきだよ」と応える。
「【パティシエ】のスキルを使って、我が魂の源であるルトナウムを保護しただけの事。これ以上は、このファントムの身体も持たないし……せめて身体もこの魂と同じだけのレベルがあれば、世界全体を私好みに出来たんだけどなぁ……。
第一ラウンドは、君達の勝ちだよ」
「第一ラウンド……?」
スカレットの言葉に何らかの違和感を感じつつも、ファイントがそれを聞くことはなかった。
スカレットは煙のように消え去り----ファイントはそれを確認しつつ、雪ん子に続く形にて、黒い大穴の中に消えていくのであった----。
(※)絶望スカレット
【街】の実質的なリーダー的存在。担当する役職は、絶望
本気で戦えば世界全体を変えるほどの実力を持っているが、身体を構築している召喚獣であるレベルⅤ【ファントム】がそれに耐えられないため、いま現在は出力を抑えて戦っていた
本来の実力であれば、この世界そのものを改変し、自らの住みやすい、それこそ理想の【街】を作れるだけの才覚の持ち主
スカレットは口から血反吐を吐き、その場に倒れる。
雪ん子とファイント、そしてスカレットの戦いは、スカレットの敗北に終わっていた。
スカレットの能力、それは確かに強力無比な代物であり、【無限の距離】という超強力な防御スキルを持つ彼女----恐らく、普通に戦えば、雪ん子とファイントの敗北も十分にあり得た。
スカレットが敗北した理由は、たった1つ。
----彼女の身体が、あまりに弱かった事。
スカレットは、世界を救った元勇者である赤坂帆波の、【街】における姿。
世界を救った元勇者である彼女は、レベルにして見ればⅩ以上……いくら強くなったとはいえども、雪ん子とファイントでは2人がかかりであったとしても、勝利するのは難しかった。
しかし、そんな赤坂帆波は、この世界に帰って来た空海大地が起こした時空震----時空の歪み----に巻き込まれ、ルトナウムという代物になってしまう。
今のスカレットは魂こそレベルⅩ相当の元勇者としての実力はあれども、身体自体はレベルⅤの召喚獣であるファントム。
いくら魂自体はレベルⅩ相当であろうとも、身体はレベルⅤ----まるでそれは、エンジンこそ立派ながら、それを扱う車体があっていないのと同じ。
いかに強力な力を持つスカレットであろうとも、それでは十分に自分のスペックを発揮できずに、結果としてスカレットの敗北となったのであった。
「いやはや、言い訳するつもりは毛頭ないが、私の身体がきちんとしていれば、勝負は私の勝ちだっただろうね」
それは負け惜しみでもなんでもなく、正しい分析であった。
彼女が本気で戦えば勝っていたのは彼女であり、それが出来ない状況だからこそ、雪ん子達は勝てたのだから。
現に対戦相手であるファイントもまた、この戦いで勝てたのは自分の運が良く、相手の運が酷かったと最初に認めていたくらいなのだから。
「何はともあれ、勝ったのはこちらです。さっさと冴島渉の居る所に案内してくださいな」
ファイントの言葉に、スカレットは懐からスイッチのような物を出して応える。
彼女がボタンを押すと、いきなり宙に黒い穴のような物が出現し、雪ん子とファイントの2人はその中から冴島渉の気配を色濃く感じ取っていた。
冴島渉以外にも、そこからはココアやマルガリータ、ヘミングウェイの気配も感じられ、どうやら全員合流しているようであった。
「《ぴぴ! ご主人、いま行く!》」
待ちきれないとばかりに雪ん子が行き、その後を続こうとしてファイントは、スカレットの身体に変化を感じていた。
感覚からして、スカレットがなんらかのスキルを使ったのであろうことは、ファイントは分かっていた。
「……あなた、何をしたの?」
ファイントは脅すようにそう言い、スカレットは「悪あがきだよ」と応える。
「【パティシエ】のスキルを使って、我が魂の源であるルトナウムを保護しただけの事。これ以上は、このファントムの身体も持たないし……せめて身体もこの魂と同じだけのレベルがあれば、世界全体を私好みに出来たんだけどなぁ……。
第一ラウンドは、君達の勝ちだよ」
「第一ラウンド……?」
スカレットの言葉に何らかの違和感を感じつつも、ファイントがそれを聞くことはなかった。
スカレットは煙のように消え去り----ファイントはそれを確認しつつ、雪ん子に続く形にて、黒い大穴の中に消えていくのであった----。
(※)絶望スカレット
【街】の実質的なリーダー的存在。担当する役職は、絶望
本気で戦えば世界全体を変えるほどの実力を持っているが、身体を構築している召喚獣であるレベルⅤ【ファントム】がそれに耐えられないため、いま現在は出力を抑えて戦っていた
本来の実力であれば、この世界そのものを改変し、自らの住みやすい、それこそ理想の【街】を作れるだけの才覚の持ち主
0
あなたにおすすめの小説
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
異世界帰りのハーレム王
ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。
で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか?
異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕!
異世界帰りのハーレム王
朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる