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最終話 悪
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そして、時は流れ、時代は昭和六十四年の現在……私、湯川 恵子は『湯川昭和建設』の事務所で電話を受けていました。
「ええ、そうですか。それでは後始末はよろしくお願いします」
頼んでいた大きな仕事が終わったとの連絡を受け、私は少しだけ安堵しました。
そして、目の前に座る老人に深々と頭を下げます。
「この度は若い方を貸していただき、ありがとうございます」
「ええよ、青森の方に系列の組があったからの。それに……あの『湯川昭和建設』の恵子社長の頼みじゃ、今時のやくざ者は逆らえねぇさ」
老人は細々と笑います。今や自身の組を持つまでに出世をした鷲尾の今の姿です。
今もこうして彼のコネを使い、やくざを雇って様々な悪事を働いている次第です。そのお蔭は、今や『池田昭和建設』の後身である『湯川昭和建設』は関西の裏社会を牛耳るほどの規模へと成長していました。
「それにしても……ここまでする必要があったのかい」
「どういうことです?」
「わざわざ自分の実家を標的に詐欺を仕掛け、家も財も全て騙し取る。ほんで絞れるだけ絞ったら皆殺しにして、売れそうな臓器を引き抜いて残りは青森の海に沈めろやなんて、聞いた時は耳を疑ったで?」
流石の鷲尾も今回の私の依頼には随分と驚いていました。なぜなら、私は私の家族を騙し、殺すよう彼に依頼したのです。
「私の家族ですから、私が一番彼らの事をよく知っています。だから、最も脆く、弱い部分も知っている。だからこそ、やりやすい家族を標的にしたまでです」
肉親だからこそ、標的としてやりやすいのは確かでした。
けれど、それ以上に私のためでもありました。池田の時と同じです。私にとって、肉親など既に私の殺した心を再び侵食する脅威でしかなかったのです。
池田を殺した時、鷲尾さんは喜んでいました。池田を超える悪人が現れたと。
それから私は鷲尾を相棒とし悪事を働き続けています。もちろん、殺しや解体も私が池田の『完璧な悪』を引き継いで、行っています。
「……これで、私にとっての大切な人たちはこの世からいなくなりました。私の心を弱らせる脅威は、もうこの世には存在しないのです。これで、私の心は完全に息絶えたのです」
「池田も、実の家族すらも手にかけた……恵子ちゃんにはもう、怖い物なんてないんやろな」
池田も、家族も私の心を揺るがす大切な人たちはもういない。もう、怖いものなど無い。
私の心を脅かすものなど、最早存在しません。
「ええ。何をするのにも、恐怖も躊躇もありません。唯一、あるとすればそれは私が半端者へと堕落し、空虚な自分へと逆戻りしてしまう事。だからこそ、私は『怪物』で居続けなければならないのです」
空虚な私に、生きる意味を与えてくれた。『悪人』としての自我を、植え付けてくれた。だから、それを失えば私は『怪物』でも『人間』でもない、ただの人形になってしまう。
「これはもう、池田を超えた『怪物』やで。『昭和の怪物』もめでたく襲名かい」
「いえ、それは池田のおじさまの名です。それに、もうじき昭和も終わります。これからは、新しい時代で、『完璧な悪』を演じる『悪の極み』……『平成の怪物・湯川 恵子』として悪事を働き続けなければ、私は私を保てない」
私が私を保ち続けるために、私は悪を演じ続けます。
「だから、私は……『完璧な悪』を演じ続けます」
「ええ、そうですか。それでは後始末はよろしくお願いします」
頼んでいた大きな仕事が終わったとの連絡を受け、私は少しだけ安堵しました。
そして、目の前に座る老人に深々と頭を下げます。
「この度は若い方を貸していただき、ありがとうございます」
「ええよ、青森の方に系列の組があったからの。それに……あの『湯川昭和建設』の恵子社長の頼みじゃ、今時のやくざ者は逆らえねぇさ」
老人は細々と笑います。今や自身の組を持つまでに出世をした鷲尾の今の姿です。
今もこうして彼のコネを使い、やくざを雇って様々な悪事を働いている次第です。そのお蔭は、今や『池田昭和建設』の後身である『湯川昭和建設』は関西の裏社会を牛耳るほどの規模へと成長していました。
「それにしても……ここまでする必要があったのかい」
「どういうことです?」
「わざわざ自分の実家を標的に詐欺を仕掛け、家も財も全て騙し取る。ほんで絞れるだけ絞ったら皆殺しにして、売れそうな臓器を引き抜いて残りは青森の海に沈めろやなんて、聞いた時は耳を疑ったで?」
流石の鷲尾も今回の私の依頼には随分と驚いていました。なぜなら、私は私の家族を騙し、殺すよう彼に依頼したのです。
「私の家族ですから、私が一番彼らの事をよく知っています。だから、最も脆く、弱い部分も知っている。だからこそ、やりやすい家族を標的にしたまでです」
肉親だからこそ、標的としてやりやすいのは確かでした。
けれど、それ以上に私のためでもありました。池田の時と同じです。私にとって、肉親など既に私の殺した心を再び侵食する脅威でしかなかったのです。
池田を殺した時、鷲尾さんは喜んでいました。池田を超える悪人が現れたと。
それから私は鷲尾を相棒とし悪事を働き続けています。もちろん、殺しや解体も私が池田の『完璧な悪』を引き継いで、行っています。
「……これで、私にとっての大切な人たちはこの世からいなくなりました。私の心を弱らせる脅威は、もうこの世には存在しないのです。これで、私の心は完全に息絶えたのです」
「池田も、実の家族すらも手にかけた……恵子ちゃんにはもう、怖い物なんてないんやろな」
池田も、家族も私の心を揺るがす大切な人たちはもういない。もう、怖いものなど無い。
私の心を脅かすものなど、最早存在しません。
「ええ。何をするのにも、恐怖も躊躇もありません。唯一、あるとすればそれは私が半端者へと堕落し、空虚な自分へと逆戻りしてしまう事。だからこそ、私は『怪物』で居続けなければならないのです」
空虚な私に、生きる意味を与えてくれた。『悪人』としての自我を、植え付けてくれた。だから、それを失えば私は『怪物』でも『人間』でもない、ただの人形になってしまう。
「これはもう、池田を超えた『怪物』やで。『昭和の怪物』もめでたく襲名かい」
「いえ、それは池田のおじさまの名です。それに、もうじき昭和も終わります。これからは、新しい時代で、『完璧な悪』を演じる『悪の極み』……『平成の怪物・湯川 恵子』として悪事を働き続けなければ、私は私を保てない」
私が私を保ち続けるために、私は悪を演じ続けます。
「だから、私は……『完璧な悪』を演じ続けます」
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