Delution;Days-電脳の地獄-

柘榴

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第1話 電脳の牢獄Ⅰ

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 20XX年、著しく技術が発達した時代。電脳世界はもう一つの生活の場として人間にとっては無くてはならないものとなっていた。
 現在稼働中の『Delusion;Days』……通称DDは国内最大規模の電脳世界サービスであり、ほとんどの人間がこのサービスを利用しているという状況だった。
 ヘッドギア型の本体を頭に取り付けるだけで人間は、もう一つの世界へと旅立てるようになった。
 中性ヨーロッパをモチーフとした世界観に豊富なゲームシステム。
 それはゲームの次元を超え、もはや人間にとっての生活の一部として取り入れられていた。その電脳世界では主婦が戦士になることも、老人が子供になることも叶う。
 誰もが魔法使いや戦士となり、モンスターを倒して報酬を得るような刺激的な生活を味わうことができる。
 誰しもが理想の自分を体現することが可能なのだ。その魅力に全ての人間が没頭し、夢中になった。
 中には現実世界を忘れ、電脳世界を生活の中心として生きる者もいた。
 それが私、藤ヶ谷 飛鳥だ。
 私は現実世界では半身不随の少女だった。けれど、この世界では野原を自由に駆け巡る戦士。 私は現実を忘れ、この電脳世界に没頭した。 
 なぜなら、私にとってのリアルはとっくに電脳世界になっていたのだから。
 しかし、ある日、私のリアル……電脳世界において、バグが起こった。

『えー日頃からのご利用、誠にありがとうございます。こちら運営部の原田と申します。現在、システム全体の不具合により各ユーザー様の任意でのログアウト機能が困難な状況となっております』
 各ユーザーに送信された音声案内。それは運営の不具合を報告する案内だった。
『現在、普及の目途は立っておらず定期ログアウト時刻の午前0時まではDDに留まっていただくことになると思われます』
 ログアウト不可能……実装初期にはよくあったバグだけど、今時珍しい。
 まぁ、私は電脳世界がメインになっているしログアウトできない事に不満も何もないけど。
 でも現実世界で仕事や学校がある人は困るだろうなと他人事のように考える。
 けど、現代では電脳世界サービスは理解が高まっている。バグによって電脳世界からログアウト不能となっても、それを公的に証明できればなんの問題も生じない。
 例えるなら、電車の遅延と同じようなものだ。電脳世界は、鉄道と同じように我々の生活に不可欠なものとなっているのだ。
『もちろんお詫びはさせていただくつもりです。仮想通貨1000000Pをシステム普及後に各ユーザー様にお支払するつもりです』
「ええっ!?」
 私は思わず声が漏れた。仮想通貨とはこの電脳世界内でのお金のようなもの。
 だがその価値は1P=1円。つまり、10000000円を全員に配布するということだ。
 電脳世界であってもPで買い物をしたり、食事をする。今まではそのPを現実で課金して手に入れていた。
 つまり10000000Pは現実で10000000円を課金したのと同様。大金であるのは確かだ。
『ただ3時間程度ログアウト不能になった程度で100000P……腑に落ちないでしょう。それには理由があります。それは、運営部全体が一時的に機能を失っていることを考慮してのことです』
 確かに、電脳世界の存在が公的に認められた現代で数時間のログアウト不能のバグなど大した問題ではない。それは電車の遅延の様に、仕方のない物なのだから。
『運営部の機能、それは現実世界での警察のようなものだ。電脳世界での犯罪や悪事を取り締まり、安全をあなた方ユーザーへ提供する。電脳世界といえど、やっていいことと悪いことはある。だが、今それを取り締まる機能が停止している。つまり無法地帯だ』
 このDDでは運営部が全ての権利を持っている。だからこそ、不適切な行為や悪事を行うプレイヤーに対処し、健全な運営を行うのも彼らの仕事だ。
 だが、今その機能が失われているという。つまり、現実世界において警察の機能が停止した状態だ。
『その状況を考慮しての対処です。だが安心してほしい、周知の通り電脳と現実は干渉しない。ここで傷を負ったから現実でそれが反映される……なんてことは無い。ただ、こんな状況下に皆様を置いてしまうことに対し、我々自身への戒めとしてもこのような大規模なお詫びをご用意させていただきました』
 この電脳世界の最も魅力的な点は、現実世界との隔絶である。この世界で何をしようが、現実には何も反映されない。
 極端な話、ここで大怪我をしようが死のうが現実では何の影響もない。つまり、脳内で起こった夢の一部として片づけられてしまうのだ。
 だからこそ、この世界では何でもできる。現実世界では到底できないことができてしまう。
「……あと3時間か」
 電脳世界がメインの私にとって3時間ログアウト不可だなんて大した問題じゃなかった。
 むしろ、3時間待つだけで10000000Pももらえるなら、これほど美味しい話は無い。
「1000000Pか、これはなんておいしいイベントなんだ。ただ3時間ここに居座るだけで……っへへ、やっぱりここは最高だ。あんなクソッたれの世界とは違って……」
 この世界では私は輝いていた。高難易度クエストを何度もクリアしている凄腕戦士でありながらその美しい外見(アバター)から「姫」として崇められている有名ユーザー。
 この電脳世界ではかなりの有名ユーザーだ。
 あの……クソったれな世界の、クソったれの自分とは違って……。

 現実の私は、半身不随だった。
 幼いことに交通事故に遭い、半身不随になったと両親から聞いた。それ以降、ずっと車椅子生活。
 だからそれなりに苦労はした。生活においても、人間関係においても。
 中学校は地元の公立に入学した。普通の学校に入り、普通の子と一緒に過ごすことが私の為だと考えた両親の方針だった。
「藤ヶ谷さん、車椅子だと大変だね。移動教室は私が押してあげるから」
「安心して、クラスみんなでサポートするから! 困ったらいつでも……」
 最初の方、クラスメイトは親切だった。私が身体が不自由なことは明白だったから、クラスのみんなが移動や生活の面倒を見てくれた。
 けれど、それは親切心ではなく単なる自己満足だった。時間が経てば皆、私の周りから消えて行った。自分自身が満足したか、もしくは物珍しい私に飽きたから。
 そうなれば誰も助けてはくれない。移動教室も、登校も下校も自分だけで何とかしなきゃいけない。
 けれど、車椅子じゃ限界がある。私は次第に学校にも遅刻し、授業にも遅れるようになっていた。
 そしてあの日……私の全てが汚された日。
「藤ヶ谷さんじゃん、何サボり? 似合わねー!」 
 体育の授業、私は着替えることもできずに廊下で茫然としていた。
 この身体では1人で着替えることも、校庭に向かうこともできない。だから、授業が終わるまで待つしかなかったのだ。
 そこに、行内屈指の不良と噂される桐ケ谷とその取り巻きの合計3人が現れたのだ。
 こいつらも授業をサボって校内を徘徊しているらしい。
「隣のクラスの? ああー……」
 取り巻きの1人の小太りが私を見て言う。
「いや……次体育なんだけど、その……」
 私は小さな声で答える。
 仕方ないとはいえ、授業をサボっていた事をあまり堂々とは言えない。。
「何だよ、クラスの連中は君だけ置いてったわけ? 薄情だなぁ」
 桐ケ谷が茶化したように言う。
 確かに薄情だとは思うが、それが普通だとも思う。
 皆、私に構うほど暇でも余裕があるわけでもない。
 私はクラスメイトを恨む気は無かった。人間、誰しも自分が1番だ。わざわざ私なんかに構って時間を犠牲にする方がどうかしてる。
「でもさ、それ言い訳にしてサボる藤ヶ谷さんもどうかなぁ」
「え……」
 桐ケ谷は意外な言葉を口にした。
 これまでそんなことを言われたことは無かった。だって、仕方ないんだもの。
 身体が不自由なのだから、出来ないことが多くても仕方無いと、そう思っていたのに。
 私自身が非難されるなんて、初めてだった。
「連れて行ってて頼まない君も駄目じゃない? それとも自分は優しくされて当然だと思ってる?」
「いや、私は……」
 そんなことは無い。自分自身の身体が不便だと感じていたにしろ、その不満を誰かに持ったことは無い。
 ましてや親切にされるたびに私は感謝と罪悪感を感じていた。当たり前だなんて、思ったことは無い。
「じゃあさ、頼んでみてよ。外に連れて行ってくださいって」
 桐ケ谷がからかうように私の顔を覗き込む。
 確かに授業をサボるのは私の本意ではない、こんな奴らであっても、移動の手伝いをしてくれるなら……
「……お願いします。外まで、連れて行ってくださいっ」
 私は深々と頭を下げる。
「うん、いいよ。俺たちが最後まで面倒見てやるから」
 桐ケ谷は二カっと凶悪な笑みを浮かべ、私の車椅子に手を掛ける。
 そして、校庭ではなく人気のない校舎裏へと移動を始める。
「え、ちょっと……校庭に」
「だって体育なんだから着替えないとねえ。その手伝いだって」
 桐ケ谷は私を校舎裏に連れて行くと、私が着ていたセーラー服を強引に脱がせ始めた。
 取り巻きの2人もその手伝いを始める。
「やめて……やぁ!」
 私は精一杯抵抗する。けれど車椅子からは動けない。
 男3人に敵うはずもなくあっという間にセーラー服を脱がされ下着姿となる。
「おい口塞げ! どうせ動けねぇんだ、口さえ塞げばなんもできねぇぜこいつ」 
 取り巻きの1人が私の口にタオルを押し込む。
 声を出すどころか、呼吸すら苦しい。
「へぇ~、動けないくせにいい身体してんじゃん? もったいないなぁ」
「んんっ……ん!」
「……うるせーって。あんま騒がれると萎えるんだよ。俺がその気になれば、お前なんてすぐに殺せるんだからな? そこんとこ覚えとけ」
 桐ケ谷が強引に胸を揉む。しかし、私の身体では抵抗することもできない。
 取り巻き2人がその様子を笑いながら見つめている。
 私を隙を見て口からタオルを吐き出した。
「いや……やめてくださいっ……いや」
「駄目だって。普段迷惑かけてる分ちゃんとお返ししてもらわないとなぁ?」
 桐ケ谷は下衆な笑みを受かべながら私の身体を触り続ける。
「木村、お前どうせ女の身体なんて見たことも触ったこともねぇだろ? よーく味わっとけよ」
 桐ケ谷が取り巻きの内、小太りの男へ声を掛ける。
 小太りの男は、桐ケ谷に便乗して私の身体に触れ始める。
「すごい……こんな柔らかくて、綺麗だなんて」
 木村は荒い鼻息を立てながら私の身体に触れ、興奮している。
「工藤、お前もこういうタイプの女は初めてだろ?」
 桐ケ谷がもう一人の取り巻き……工藤に声を掛ける。
「ああ、ここまで無抵抗の女を一方的に嬲れるなんて……最高だ」
 工藤と言うどこか知的な雰囲気を持つ男が、私の頬を思い切り殴った。
「……ぐっ」
「その顔、最高だよ。これからお前、もっとすごい事になるんだぜ?」
 殴られて鼻血を流す私を見て、工藤はねっとりとした口調で言った。
 そして桐ケ谷は、私の下着に手を掛けていた。
「そんじゃ、遠慮なく。抵抗しないんだから、良いってことだよね」
 そう言って、桐ケ谷は私の下着を引きちぎった。
「いやああああああああああああああ!」
 そこから先は……地獄だった。
 何度も何度も……3人の男に暴行された。

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