鑑定士(仮)の小話らしいですよ?

あてきち

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2018年 季節小話

季節小話『3月14日はホワイトデー』

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◆◇◆2018年3月14日 本編にて掲載した小話の転載です。



こんにちは。ワタクシ、本編とは一切関係のないインタビュアーです。
今日は3月14日ホワイトデー。
当作品のキャラクター達の過ごし方を取材してみようと思います。

おや、早速第一キャラクター発見です。

未だ本編にちゃんと出番のない主人公の友人組。

新藤大樹君と豊月恭子さんですね。

新藤君、ホワイトデーはどうお過ごしですか?

「……暇だ」

暇ですか?

「おうよ。……だって、誰もチョコくれなかったし。返す相手なんていませんしー……けっ」

おっと。早速藪蛇です。……豊月さんは忙しくはないのですか?

「私はクラス協定で本命以外にはチョコをあげないことになってて」

ああ、確か書籍の方でそんな話が出てましたね。
本命はいないので? おやおや、微笑むだけですか、そうですか。

そういえば、いつも一緒の山原亜麻音さんはどちらに?

「そういえば見てないな……恭子ちゃん、知ってる?」

「いえ、どこにいるんでしょう?」

そうですか。ありがとうございました。

それでは次のキャラクターを探してみましょう。



おや、美しい金髪のエルフを発見。書籍一巻以来本編に出番のないエマリアさんですね。

こんにちは、エマリアさん。
ホワイトデーはいかがお過ごしですか?

「え? ホワイトデー?」

はい。どなたかからお返しをいただくご予定は?

「……えーと」

はい。

「……ホワイトデーって、何?」

……おぅ。

失念しておりました。この世界にはバレンタインデーもホワイトデーもありませんでしたね。

「姉さん、これを受け取ってくれ」

おや、突然現れたのは正直印象のうっすいエマリアさんの弟さんのラクリシアさんですね。

「存在感が薄くて悪かったな!」

ところでそれはもしかしてマシュマロですか?

「ふわふわして可愛いわね」

ラクリシアさん、ホワイトデーをご存知なのですか?

「ああ、つい最近知ったんだ。バレンタインに姉さんからチョコをもらっていないが、別に俺から姉さんに贈り物をするくらい構わないだろう?」

「これ、食べ物なの?」

「そうだよ。ふわっふわでもちもちの甘いお菓子さ」

「へえ……ぱく。……ぅわ、軽い歯応え。それに、甘くて美味しい。ありがとう、ラクリシア」

おやおや、正式なホワイトデーではありませんが、兄弟愛を感じるとても素敵な光景ですね。

「そうだろう、そうだろう。ふわふわで柔らかくて甘い。そう、まるで姉さんの美巨乳・・・のように!」

――ピシリ。

おっと、一気に空気が凍り付きました。ですが、ラクリシアさんはそれに気づいていないようです。

「まだ触れたことはないが、きっと姉さんの胸もこのマシュマロのようにトロふぎゃあああああああああああああああああああ!」

「まさか贈り物でセクハラされるとはね。なかなかやるじゃない、ラクリシア」

「姉ざんんん! 頭が頭蓋骨がああああああ! 今の姉さんと俺じゃレベル差が! ぎゃああああああああああああああああ!」

エマリアさん、セクハラなんて言葉知ってたんですね。
そ、それでは次のキャラクターの元へ向かいましょう。



さて、ここで本命。
当作品の主人公ヒビキ君のホワイトデーを取材してみましょう。

こんにちは、ヒビキく――おや?

「ヒ、ヒビキ様! そ、その……う、ううう、受け取ってください!」

「クロード? わあ、キャンディー? 甘いお菓子大好き。ありがとう。でもどうして?」

「さ、先程、本日はホワイトデーなる日だと伺いまして。なんでもお慕いしている方に飴を贈る日だとか。日頃から敬愛しているヒビキ様には絶対にお渡ししなければと」

こんにちはー。インタビュアーです。

「え? どちらさま?」

本日限定のインタビュアーです。ホワイトデーをどうお過ごしか取材をしています。

「へえ、それはそれはお疲れ様です」

いえいえ、ところで今クロードさんからキャンデーをいただいたようですが、バレンタインにチョコをプレゼントなさったのですか?」

「いや、俺がバレンタインにチョコを贈るわけないでしょ。クロードがちょっと勘違いしてるみたいで」

「勘違い? どういうことですか、ヒビキ様?」

「えーと、まずはバレンタインのついてなんだけど。2月14日のバレンタインは好きな人にチョコを贈る日なんだ。それでホワイトデーっていうのは、チョコをもらった人がチョコをあげた人へお返しをする日なんだよ」

「そ、そうなのですか? 申し訳ございません、どうやら仕入れた情報に間違いがあったようです」

「気にしないで。それに、キャンディー自体はもらって嬉しかったし。ありがとう、クロード」

「は、はい! ヒビキ様!」

とても平和な光景にインタビュアーの私も思わずほっこりしてしまいますね。
さて、それでは次のキャラクターへ……。

「クロードさん、ヒビキさんにはキャンディーを贈るんですね」

「ユ、ユーリ!?」

おやおや、何やら不穏な空気ですね。
ユーリさん、クロードさんにチョコを贈っていたのですか?

「元々この世界にチョコはないじゃないですか。私、未だにみたことありませんし」

これがチョコレートです。どうぞ。

「……まさか本編じゃないところでチョコが見つかるなんて。これを贈っていればクロードさんは私にも何か贈ってくれたんでしょうか」

「ユ、ユーリ。あの、その……す、すまん?」

「なんで疑問形なんですか! どうせ私なんて、クロードさんからすればヒビキさんよりも優先順位は低いですよ!」

「いや、別にそんなことは言って……ないが……」

「なんで目を逸らすんですかああああああああ!」

ほほほほ、何やら主人公パーティーにスキャンダルの予感でしょうか。三角関係?

「もう、何が三角関係だよ。リリアン、ヴェネくん、飴食べる?」

「うん、食べる」

「わーい、飴ちゃんにゃー!」

あらあら、主人公は修羅場を退避ですね。
それでは次のキャラクターの取材に行ってみましょうか。




こんにちは、パトリシアさん、クレアンナさん。
ホワイトデーはいかがお過ごしですか?

「……」

……?

「……」

……えーと、パトリシアさん?

「……え? あ、何?」

あの、インタビュアーです。ホワイトデーはいかがお過ごしですか?

「……ホワイトデー?」

おや、これはパトリシアさんもホワイトデーを知らない感じでしょうか。

「そう、今日はホワイトデーだったのね。……仕事が忙しくてすっかり気が付かなかったわ」

ああ、忙しすぎて曜日の感覚を失ったお父さんのような目ですね。
クレアンナさんはどうですか?

「私は完璧でありますよ! 既に多方へチョコを配布済み、あとはお返しを待つばかりであります!」

おやおや、ここにきてようやくまともなホワイトデーの取材ができそうです。
して、いかほどのお返しが?

「今はまだであります。うーん、それにしては少々遅いでありますね。全員にきちんと配りましたのに」

配ったということは友チョコとかでしょうか?
ちなみに、どんなチョコをプレゼントしたのですか?

「チ〇ルチョコであります」

……んん? 今、なんと?

「〇ロルチョコであります。作者の人が、『チョコレートといえばチロ〇チョコ』と言っていたのを参考にしたのでありますよ」

それは……えーと……。

「おかげで全員なかなかの反応だったであります。驚きのあまり笑顔が引きつっていたでありますよ。早くお返しを持ってきてほしいものであります」

……お返し、来るといいですね。
そ、それでは次のキャラクターの元へと参りましょう。



こんにちは――。

































ふぅ、これで粗方キャラクターの取材は終わりましたね。

とはいえ、四人ほど見つかっていないのですが……。
特にホワイトデーのような記念日には絶対に動きそうなキャラクター二名が行方知れずです。

一体どこに……おや?
見つかっていない四人のうちの二人を発見しましたよ。

こんにちは、山原亜麻音さん、ジュエルさん。
ホワイトデーはいかがお過ごしですか?

「超忙しいの。あんまり話し掛けないでくれる?」

「同じく忙しいですわ」

お忙しいのですか? 一体何をしていて――。

「生ごみ廃棄よ」
「粗大ごみを捨てに」

お二人とも大きな箱を引っ張ていますが、それがそうなのですか?
あの箱には一体何が入っているのでしょう?

ガタガタガタ、ガタガタガタ!

あ、あの、お二人の箱が物凄く動いているのですが。

「気のせいよ」
「気のせいですわ」

「「フガフガフガアアアアアアアア!(ここから出してくれええええええ!)」」

あ、あの、箱の中から成人男性二名の声がフガフガと聞こえている気がするのですが。

「気のせいよ」
「気のせいですわ」

「「フガフガフガ、フガアアアアアアア!(ヒビキのところへ行くんだああああああ!)」」

……えーと。

「気のせいよ(ニコリ)」
「気のせいですわ(ニコリ)」

…………そうですね。気のせいですね。

「「フガフガアアアアアアア!(見捨てないでえええええええええ!)」」

……あんな怒気をはらんで笑顔に、一介のインタビュアー程度が逆らえるはずもありませんね!

以上でホワイトデーの取材を終わります。

それではカメラを本編へ戻します。
みなさま、本編もよろしくお願いします~。


















『ちょっとおおおおお! どうしてお兄さんのところには取材に来てくれないんだよおおおおおおおおおおおお!』


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