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アニメ化記念番外編
冒険者ギルドにて【ジュエル視点】
時系列は小説第1巻。アニメ第2話でエマリアが旅立つ直前くらい。
【以下より本文】
カリカリとペン先が紙を滑る音だけが、静まり返った室内に細く響いていました。ほかには何も聞こえない、副ギルドマスターの執務室。その机に向かい、私はクリスタルホーンラビットの買い取り受領書へと筆を走らせていました。
最後の一筆を書き終え、コトリとペンを置きます。視線を落として文面をなぞり、誤りがないことを確かめると、小さく息を吐きました。
「これで大丈夫ですね。急ぎませんと」
椅子の背にもたれかける余裕もなく、すぐに書類を整えます。本当なら、もう少し落ち着いて進めたかったところですが、取引相手であるエマリア様が急遽ローウェルを発つと決まってしまいました。ゆっくりしている暇はありません。
ヒビキ様はまだ冒険者になったばかり。こうした手続きまで任せるには、さすがに負担が大きすぎるでしょう。
ふと、机の上に置かれていたそれへと手を伸ばしました。掌に収まる、水晶の角。指先でそっと持ち上げると、光を受けて透き通る輝きが揺れ、思わず息が漏れます。
「本当に美しい角ですね。これが鑑賞用の飾りではなく、薬の材料になるなんて……少し、もったいなく感じますわ」
エマリア様とヒビキ様が持ち込んだこの角は、万能薬の材料となる極めて稀少な品。視線を滑らせるたび、内部に閉じ込められた光がかすかに揺らめき、その価値を改めて思い知らされます。
クリスタルホーンラビットは『逃げ足』のスキルを持つ魔物。一流の狩人であっても容易には捕捉できないと聞きます。
こんなものを、どうやって手に入れたのかしら。
喉元まで浮かびかけた疑問を、すぐに胸の奥へと押し戻しました。冒険者の手札を詮索するのは無作法というものです。犯罪が絡まない限り、踏み込むべき領域ではありません。
「ふふふ。これを王都のオークションに出したら、いくらになるのかしら」
角を眺めたまま、自然と口元が緩みます。
バルス様はこれを金貨七百枚で購入されました。確かに我がギルドにとっては予算を大きく上回る額で、あの場では私も思わず給金からの天引きなどと口にしてしまいましたけれど……。
この大きさ、この品質であれば、むしろやや安いくらい。
単に、これほどの高額素材の買い取りを想定していなかっただけのこと。そう考えれば、あの即断はさすが元Sランク冒険者といったところでしょう。
勘がいいと言うべきか何と言うか……天引きはいたしますけれど。
元Aランク冒険者にして、バルス様の元パーティーメンバーだった私があの方を甘やかすわけには参りません。しっかりしていただかなくては。
万能薬。どんな病にも効くと謳われる魔法薬。
私は実物を見たことはありませんが、不治の病すら癒やすと巷では言われています。誇張が含まれていたとしても、それだけの効力を期待されているのは確かでしょう。
事実、この角が出回るたび、王都のオークションは活気に満ちると聞きます。
三年前、同じ素材が金貨二百枚で取引されたとエマリア様は仰っていました。けれどそれは、あくまで入手した冒険者への支払い額。王都では、その十倍以上の値がついたと耳にしています。
それほどまでに需要があるのです、この角には。
ただし、効くのは病のみ。怪我や毒には効果がないとも聞きます。
もっとも、それらは回復魔法の『ヒール』や『キュア』で賄えますから問題はありません。むしろ回復魔法では病を癒やせないのですから、互いに補い合う関係といったところでしょう。
だからこそ、万能薬は求められています。
とはいえ、素材の段階でこれほどの値がつく以上、完成した薬が市井に広まることはまずないでしょう。
指先で角の縁をなぞりながら、私は静かに息を吐きました。この金額ですもの。王侯貴族のものとなるのは避けられません。市井の医学が発展することを願うばかりですわ。
書類を整え、角を元の位置へと戻すと、私は席を立ちました。扉を開け、執務室を後にします。
ギルドのホールに足を踏み入れると、旅支度を整えたエマリア様の姿がすぐに目に入りました。
「エマリア様、こちらが買い取り受領書になります。お納めくださいませ」
「ありがとう、ジュエル」
書類を手渡しながら、軽く会釈を添えます。
「お支払いはギルド銀行への入金でよろしかったのですよね?」
「ええ、今から旅に出るのにそんな大金持ち運べないもの」
「そうですわね。美人なうえに大金まで持っていたら、野盗に襲ってくれと言っているようなものですわ」
頬に手を添え、改めてエマリア様を見つめます。
褐色の肌を持つ私とは対照的な、透き通るような白い肌。陽光を思わせる金色の髪が肩で揺れ、その一つひとつが目を引きます。整った顔立ちと均整の取れた体躯は、同じ女性である私ですら思わず見入ってしまうほど。
自然と息が漏れました。
私の言葉に、エマリア様は頬を染めて視線を逸らします。
「もう、そういうのやめてよね。恥ずかしいわ」
「ふふふ。でも気を付けてくださいませ。お一人で行かれるのでしょう?」
エマリア様は私の倍以上の年齢。けれどエルフゆえか、こうして見せる表情にはどこか幼い愛らしさが残ります。
つい、からかいたくなってしまうのは仕方がないでしょう。
小さく笑うと、エマリア様はしばらく照れたままでしたが、やがて表情を引き締めました。
「それより、ヒビキのことお願いね。ホントに危機感が足りないっていうか、常識を知らないというか、放っておけないのよ」
「まあ、確かにそんな雰囲気でしたね」
交渉の場での様子が脳裏に浮かびます。どこかのんびりとした、掴みどころのない空気。
エマリア様の言葉には、思わず頷いてしまいました。
「お任せください。ヒビキ様のことは副ギルドマスターである私が、責任を持ってフォローしますわ。頭を撫でたりなどすればよろしいのでしょう?」
「もう、ジュエル!」
軽く肩をすくめると、思わず笑みがこぼれます。
エマリア様をからかうのは、少し楽しいものです。
とはいえ、その懸念がもっともであることも理解しています。
エマリア様が旅立たれたあとは、私が相談に乗り、必要な支えとなって差し上げるべきでしょう。
……などと、少しばかり上から考えていたのですが。
まさかこの先、私の方がヒビキ様に大変お世話になるとは、この時の私は思いもしていなかったのです。
★★★ あとがき ★★★
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
TVアニメ鑑定士(仮)は、ご視聴いただけましたでしょうか?
まだの方はPrime Video等で好評配信中なので、ぜひ一度見てみてくださいね!
dアニメストア・ABEMAでは1週間早く先行配信を実施しています。
Prime Video等でご覧いただけた方には、ぜひ★だけでいいので評価をつけていただけると嬉しいです。
作品を一緒に盛り上げていきましょう!
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カリカリとペン先が紙を滑る音だけが、静まり返った室内に細く響いていました。ほかには何も聞こえない、副ギルドマスターの執務室。その机に向かい、私はクリスタルホーンラビットの買い取り受領書へと筆を走らせていました。
最後の一筆を書き終え、コトリとペンを置きます。視線を落として文面をなぞり、誤りがないことを確かめると、小さく息を吐きました。
「これで大丈夫ですね。急ぎませんと」
椅子の背にもたれかける余裕もなく、すぐに書類を整えます。本当なら、もう少し落ち着いて進めたかったところですが、取引相手であるエマリア様が急遽ローウェルを発つと決まってしまいました。ゆっくりしている暇はありません。
ヒビキ様はまだ冒険者になったばかり。こうした手続きまで任せるには、さすがに負担が大きすぎるでしょう。
ふと、机の上に置かれていたそれへと手を伸ばしました。掌に収まる、水晶の角。指先でそっと持ち上げると、光を受けて透き通る輝きが揺れ、思わず息が漏れます。
「本当に美しい角ですね。これが鑑賞用の飾りではなく、薬の材料になるなんて……少し、もったいなく感じますわ」
エマリア様とヒビキ様が持ち込んだこの角は、万能薬の材料となる極めて稀少な品。視線を滑らせるたび、内部に閉じ込められた光がかすかに揺らめき、その価値を改めて思い知らされます。
クリスタルホーンラビットは『逃げ足』のスキルを持つ魔物。一流の狩人であっても容易には捕捉できないと聞きます。
こんなものを、どうやって手に入れたのかしら。
喉元まで浮かびかけた疑問を、すぐに胸の奥へと押し戻しました。冒険者の手札を詮索するのは無作法というものです。犯罪が絡まない限り、踏み込むべき領域ではありません。
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この大きさ、この品質であれば、むしろやや安いくらい。
単に、これほどの高額素材の買い取りを想定していなかっただけのこと。そう考えれば、あの即断はさすが元Sランク冒険者といったところでしょう。
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元Aランク冒険者にして、バルス様の元パーティーメンバーだった私があの方を甘やかすわけには参りません。しっかりしていただかなくては。
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それほどまでに需要があるのです、この角には。
ただし、効くのは病のみ。怪我や毒には効果がないとも聞きます。
もっとも、それらは回復魔法の『ヒール』や『キュア』で賄えますから問題はありません。むしろ回復魔法では病を癒やせないのですから、互いに補い合う関係といったところでしょう。
だからこそ、万能薬は求められています。
とはいえ、素材の段階でこれほどの値がつく以上、完成した薬が市井に広まることはまずないでしょう。
指先で角の縁をなぞりながら、私は静かに息を吐きました。この金額ですもの。王侯貴族のものとなるのは避けられません。市井の医学が発展することを願うばかりですわ。
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書類を手渡しながら、軽く会釈を添えます。
「お支払いはギルド銀行への入金でよろしかったのですよね?」
「ええ、今から旅に出るのにそんな大金持ち運べないもの」
「そうですわね。美人なうえに大金まで持っていたら、野盗に襲ってくれと言っているようなものですわ」
頬に手を添え、改めてエマリア様を見つめます。
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エマリア様の言葉には、思わず頷いてしまいました。
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