最強の職業は勇者でも賢者でもなく鑑定士(仮)らしいですよ?

あてきち

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6巻

6-1







「失礼しまーす……て、響生ひびきだけか?」

 恐る恐る扉を開けたのは、俺、真名部まなべ響生が半年ぶりに再会した親友、新藤大樹しんどうたいきだった。
 ここは、地底都市テラダイナスのお屋敷にある会議室。第五聖殿で再会した後、お互いに情報交換をするために一室用意してもらったのだが、まだ俺と大樹しか集まっていない。
 テラダイナス市長のパトリシアさんは第五聖殿の事後処理で忙しく、仲間のクロード達は使用人服に着替え中で、俺だけ先んじて会議室に来ていたのだ。

「もう少ししたらみんなも来るよ。というか大樹も一人? 他のみんなは?」
身支度みじたくで遅れるってよ。伝言のために俺が先行して来たんだが、必要なかったかな」

 小さく笑う大樹からは余裕が感じられた。肉体も半年前よりたくましくなって、女性化した俺とは正反対の成長に、若干の嫉妬しっとを感じてしまう。

「半年会わない間にちょっと逞しくなったね、大樹」
「そうか? だといいんだけどなぁ」

 大樹はそう言って苦笑した。この半年間、彼らは異世界でどんな旅をしてきたんだろう……?
 用意されていた紅茶に口をつけながら、俺は対面に座る大樹を見つめた。


       ◆ ◆ ◆


 俺の名前は新藤大樹。昨日十七歳になったばかりの、どこにでもいる高校二年生だ。
 身長百八十六センチ。部活には入っていないが、鍛えているから体格はいい方だと思う。
 顔はまあ、普通かな? 髪はさっぱりとした短髪。彼女は絶賛募集中だ!
 趣味はちょっとオタクな美少女フィギュア集め……それがなければ女子にモテるだろうに、と言われはするが、好きなものは好きなんだからどうしようもない。
 ――趣味はともかく、人を見る目は結構ある方だと自認している。だから……。

「ようこそお越しくださいました、皆様。そしてどうか、この世界をお救いください」

 突然こんなことを言ってくる人間を、はいそうですか、と信じるわけがなかった。
 ちょっと、状況を整理してみようと思う。


 確か……昨日は俺の誕生日だった。放課後、親友の響生が誕生日プレゼントを持ってきてくれた。
 以前から俺が欲しいと言っていた、アニメ『魔女っ子エルフ! スタナチアちゃんの冒険』の限定フィギュア、『裸エプロンスタナチアちゃん』である。
 予想外のサプライズに俺は狂喜乱舞きょうきらんぶした。なぜならこれは、抽選プレゼントで限定百名しか入手できない非売品。抽選にれた俺はずっとくやしい思いを抱えていた。
 だって可愛いじゃん、スタナチアちゃん。金髪美人巨乳エルフ、える。
 その限定フィギュアがなんと俺の目の前に! さすがは俺の親友だと超めまくったね。
 まあそんな想いも、響生の言葉で一気に霧散してしまったのだが。

「ああ、これ? この前知り合ったお姉さんがくれたんだ」

 ……喜色にあふれていた俺の表情が苦々しいものに一変した。だって、金髪美人巨乳OLからもらったって言うんだぞ!? 何だそのうらやましい知り合いは! ……ねたましい。
 響生はすぐに『お姉さん』と仲良くなる。
 当初は年上の彼女が何人もいる女たらし野郎なのかとも疑ったが、今となっては、ただの『お姉さんホイホイ』に過ぎないのだと理解している。
 オタクの俺には分かる。あいつは『天然系鈍感主人公』を地で行く奴なのだ。
 両手では数えきれない年上美人を無自覚に魅了し、好意を持たれていることに一切気付かない。あいつの中で、彼女達は友人の域を出ていなかった。
 事実は小説より奇なりとはよく言ったものだ。なんだよ、お姉さんホイホイって……。
 ……いや、全然普通じゃないことは重々承知しているが、響生については後回しだ。
 とりあえず、昨夜は俺の家で、二人で深夜まで遊び尽くしたわけだ。
 翌日は夏休み前の終業式があるから、本当ならもっと早くお開きにすればよかった。
 しかし喜びでハイになっていた俺は、すっかり夏休み気分だったらしい。
 眠そうにふらつきながら帰る響生を見送って、俺は就寝した。
 んで、当然ながらちょっと寝過ごした。慌てて着替えて、学校へ全力疾走である。
 その甲斐もあり、ホームルームにはどうにか間に合ったようだ。
 息を切らしながら教室の前側の扉を開ける。

「……あ、おはよう。新藤君」
「はぁ、はぁ……おぉ? ああ、一ノ瀬いちのせか。おはよう」

 扉に一番近い席についていた同級生、一ノ瀬晴香はるかと挨拶を交わした。三つ編み眼鏡という、今時珍しいテンプレ学級委員長だ。他薦で就任することになった点も含めてテンプレである。

「ギリギリだったね。先生はまだ来ていないみたいだよ」
「そうか。はぁ、はぁ……間に合って、よかった。んじゃな」
「うん」

 軽く手を振って一ノ瀬と別れると、俺は自分の席にドカリと腰掛けた。天井を見上げながら息が整うのを待つ。
 明日が夏休みだってのに、今日遅刻なんてしてみろ。どんな罰則が来るか分かったもんじゃない。
 少しして、ようやく呼吸が楽になった頃、担任の葉渡はわたり候一こういち先生が教室にやってきた。

「全員席に着くように。出席を取ったら体育館に行くぞ」
「「「はーい」」」

 ちなみに、今軽快な返事をしたのはクラスの女子陣である。身長百八十センチのさわやか系イケメンである先生は、妬ましいことに全校の女子に人気がある。
 ただこの先生、真面目まじめな性格もあって、あまり笑顔を見せることはない。女子はギャップ萌えだとか言って喜んでいるみたいだが、俺は知っている。
 あの人が満面の笑みを見せる相手は、この世にたった一人だけである。
 まあ、先生のことは別にいいのだが、ふと思い出す。響生は遅刻しなかっただろうか、と。
 あいつの席に振り向こうとした時だった。教室を、まばゆい光が包み込んだ。
 まぶしくて閉じていた目を開けると、そこは教室ではなかった。
 宗教色の強い神殿のよう……とでも言えばいいのか、石造りのドーム状の建物。
 天井はガラス張りで、青い空から光が差し込んでいる。地面には見たこともない模様が……いて言えば、魔法陣のようなものが描かれている。
 教室にいたメンバーを取り囲むように、ローブ姿の者達が数十人。
 そして俺達の正面には、フルプレートに身を包んだ六人の男達と、少女が一人。
 たなびく銀の髪と輝く金の瞳。身にまとう涼やかな水色のドレスには、繊細せんさいで高級そうな装飾がちりばめられており、一目で少女が一般人ではないと分かった。
 ……突然起こった眩い光に、知らない場所。いかにもな魔法使い、騎士、姫。
 俺のオタク的思考が、ある一つの結論を導き出す……マジかよぉ……。
 少女は俺達の前にそっとひざまずくと、うるんだ瞳を向けてこう告げた。

「ようこそお越しくださいました、皆様。そしてどうか、この世界をお救いください」

 うへぇ。異世界に拉致らちられた……それが、俺がこの世界で最初に抱いた感想だった。


       ◆ ◆ ◆


 ファンタジー小説では割と定番な勇者召喚。信じられないことだが、どうやらそんな物語みたいな状況に遭遇してしまったようだ。まさかのクラスメイト全員で。

「わたくしの名はレシィリアラ・フォン・レール・マルヴェーラ。クリューヌ王国第二王女です」

 こちらの困惑など知らぬとばかりに、少女が自己紹介をした。テンプレ通り王女様らしい。
 レシィリアラ王女はそっと立ち上がると、物憂ものうげで悲しそうな表情をこちらに向けた。
 抗議の声を上げようとした者が何人かいたが、超絶美少女のあんな顔を見せられては、「今から説明させていただきます」という言葉に口を閉じるしかなかった。
 王女の説明によれば、やはり俺達はこの世界に召喚されてしまったらしい。
 それを実行したのも、目の前にいるレシィリアラ王女だ。
 俺達が召喚されたこの国は『クリューヌ王国』。ユーティリスティナ大陸西端に位置する中堅国家だ。国土の西が海に面しており、漁業などが盛んなこの国に、大変な脅威きょういが迫ろうとしていた。
 南の大森林を抜けた先にある魔族の国『バランステア魔国』が、侵攻を狙っているらしい。

「魔族はこの世界で最も強い種族です。まさに一騎当千。十年前、一人の魔族がこの国に侵入してきた際には、約二百名の命が犠牲となりました。その魔族は当時の王国騎士団長がどうにか撃退したのですが、彼もまた命を落とすこととなり……」

 こぼれそうになる涙をこらえ、気丈に振る舞うレシィリアラ王女。その肩は小刻みに震えている。
 幾人かの生徒は、そんな王女の様子に心打たれたのか、釣られるように涙ぐんでいる。
 王国と魔国の間に広がる大森林にはエルフの国があるらしく、魔国の軍勢が大森林を通ることを許していないため、今すぐに王国が攻められることはない。
 だが一騎当千の魔族が相手では、地の利があるとはいえエルフ達もいずれは敗れるだろう。
 エルフが負ければ、次はクリューヌ王国。そしてその被害は大陸全土に及んでしまう。
 魔国によって、一体どれほどの犠牲者が生まれることになるか見当もつかない。

「何より、バランステア魔国を治める国王、魔王はあまりにも強い。私達だけではとても太刀打たちうちできないのです」
(ま、魔王キター!)
(テンプレキター!)

 王女が説明する中、浮かれたような小声が俺の耳に届いた。まあ、その手のラノベをたしなむ身として、そう言いたくなる気持ちが分からないわけではないが、暢気のんきなものだ。
 要するに、王女が何のために俺達を召喚したかというと……。

「この世界に無関係な皆様をお呼びしたことは、大変申し訳なく思っております。ですが、わたくし達だけではとても魔王に対抗できないのです。勝手なお願いだとは重々承知しております。ですが、ですがどうか、力をお貸しくださいませ、異世界の勇者様!」

 心を射抜くような、悲痛の叫びに聞こえた。
 俺達を見つめる王女の双眸そうぼうから、とめどなく涙が流れ落ちる。そして彼女は深々と頭を下げた。
 その真摯しんしな態度に、多くのクラスメイトから憐憫れんびんの感情が見て取れた。同年代ということもあり、何かしら共感したのかもしれない。
 ……まあ、俺は全く共感していないんだけど。
 いや、分かるんだよ? 国が脅威にさらされて存亡の危機かもしれないって話だろう?
 でもさ、なんで俺達にその助力を求めるんだよ? 俺達はただの高校生だぞ。
 第一、これを地球に置き換えて考えてみようか。全く知らないどこかの国が、近隣の国に攻め入られようとしているところに俺達高校生を呼び寄せ、戦争に参加してくれと頼む。
 ……拉致らちじゃん! それ以外になんて表現すればいいんだ。
 いくら泣いて訴えられてもさ、できることとできないことがあるわけよ。
 みんな涙ぐみながら「可哀相かわいそう、力になってあげたい」とか「俺達が助けになるなら……」とか呟いてるけど、なんで既に協力する方向に傾いてんだよ!?
 周囲の様子に戸惑っているのは俺だけではなかった。
 俺達の中で唯一の大人が、王女の前に躍り出た。葉渡先生だ。

「お話は分かりました。しかし、彼らは戦うことなど知らぬ学生です。私どもがその力になれるとは思えませんが?」

 俺は後ろの方にいるから先生の表情は見えないが、先生の声からは王女に対する同情や憐憫なんて感情はこれっぽっちも感じられなかった。さすが先生である。異世界に来ても全くブレない。
 慌てて涙を拭うと、王女は先生の質問に答えた。

「ご懸念けねん、ごもっともだと思います。ですが、皆様には大いなる力が眠っているはずです。世界には上位と下位という概念があり、皆様が過ごされていた世界は、私達からすれば上位世界。上位世界では一般人だったとしても、この世界においては、皆様はきっと高い能力と希少な職業に就くことができるでしょう」
「……職業?」
「この世界では成人した者は皆、神々の恩恵により職業を得るのです。主に自身が持つ才能や気質をもとに、職業を得ると聞き及んでおります。異世界の方々は、この世界の常識とは違う枠組みの中にいらっしゃるので、希少な職業をお持ちになることが多いのです」
「……この世界では勇者召喚が頻繁ひんぱんに行われているのですか?」
「いいえ。勇者召喚はそうできることではありません。しかし、時折異世界の方がこの世界に迷い込む事象があるようで、歴史書では幾人かが伝説として紹介されています」
「……」

 考え込む先生。話を信じるなら、俺達には魔族に対抗しうる潜在能力があるようだ。
 まあ、異世界召喚のテンプレである。俺TUEEEである……まさか、ハーレ……いや、俺は主人公ってキャラじゃないから、そんな展開にはならないだろう。
 それに、たとえ力があっても、無関係な俺達が戦う道理も義理もない事実は変わらない。
 だというのに、うちのクラスで一番主人公づらした男が、空気を読まずに飛び出してきた。

「先生! 彼女を、いえこの世界を助けてあげましょう!」

 所謂いわゆるクラスカースト一位の男子、羽鳥結城はとりゆうきである。ドイツ人の血が入ったクオーターで、日本人離れした顔立ちと天然の金髪。俺にも負けない長身に、脱げば見事な細マッチョのイケメンだ。
 ついでに家は金持ち。性格も温和で紳士的。女子にモテない要素がない……妬ましい。
 当然クラス内の影響力は強いため、このような場で迂闊うかつなことは言ってほしくないのだが……。

「俺達に戦う力があるのなら、助けてあげるべきです」
「羽鳥……」

 おっと。先生の声に少し苛立いらだちを感じるぞ。「空気読めバカ」と言っているようだ。

「必ずしも全員が強いとは限らないし、戦うことに戸惑う者も少なくないだろう。俺は教師としてお前達の安全を守る義務がある。そう易々やすやすと引き受けるわけにはいかない」
「戦えない者にまで強制するつもりはありませんよ、先生。でも、助けを求めている人が目の前にいるにもかかわらず、最初からそれを無下むげにすることはないと思います」

 一応どっちも正論ではあるんだが、俺としては先生しである。だが、どうにも周囲の反応としては羽鳥に軍配が上がりそうな雰囲気だ……皆、なんで戦争に参加するつもりなんだ?
 意見が膠着こうちゃく状態におちいった二人だったが、そんな二人を前に王女がある提案をした。

「それでは皆様の職業と能力を確認してはいかがでしょう。魔法道具『鑑定石』を用意しておりますので、そちらで皆様のステータスを見ることができます。その上でご協力いただけるかお決めいただくというのはいかがでしょうか?」
(((ステータスキターーーーーーー!!)))

 オタクな生徒達が騒ぎ始める。小声でうるせえ!
 気持ちが分からないわけではないが、いろんなジャンルのファンタジー小説を読んできた俺としては、あまり好ましい展開とは思えない。
 ローブ姿の者達(もう魔法使いでいいや)が、バスケットボールくらいの大きな水晶玉を王女の前に運んできた。どうやらあれが『鑑定石』らしい。

「こちらの石に手を触れるだけで、皆様の前に職業や能力を記した『ステータス』が表示されます。一般的には本人だけが見られる設定なのですが、今回は皆様も不安でしょうし、ステータスの内容が皆様にも見えるように設定してあります」

 ……うわぁ嫌な展開。なんでみんな、自分から手の内を晒すことを受け入れてるんだよ。
 どうするかな。俺だけ反対しても、王女に目を付けられそうだし。
 悩む俺とは裏腹に、全く不審に思っていない様子の羽鳥が、鑑定第一号として『鑑定石』に手を載せた。鑑定石が淡い光をともし、その光は近くの壁に照射され、まるでプロジェクターのように羽鳥のステータスを映し出した。
 それを見た騎士や魔法使い、そして何より王女が驚きのあまり目を丸くする。

「ああ、何てこと。勇者様……」

【 名 前 】羽鳥結城
【 性 別 】男
【 年 齢 】16
【 種 族 】ヒト種
【 職 業 】勇者(レベル1)
【 レベル 】1
【 H P 】245/245
【 M P 】110/110
【 S P 】100/100
【物理攻撃力】93
【物理防御力】75
【魔法攻撃力】94
【魔法防御力】75
【 俊敏性 】141
【 知 力 】40
【 精神力 】110
【  運  】60

【固有スキル】『火帝の聖剣レベル1』『精霊の守護膜』
【技能スキル】『聖剣技レベル1』『剣技レベル1』『片手剣技レベル1』『盾技レベル1』
       『槍技レベル1』『体術レベル1』『瞬脚レベル1』『豪腕レベル1』
       『体幹制御レベル1』『威嚇レベル1』
【魔法スキル】『炎魔法レベル2』『光魔法レベル2』『土魔法レベル1』
【 称 号 】『召喚されし者』『火帝のいとし子』

 これが羽鳥のステータスだ。あの野郎、クラスで主人公面していると思ったら、こっちの世界でも職業『勇者』ですか……妬まし……いや、今回に限っては妬ましくないな、うん。
 クラスメイト達からも「おお!」と歓声が上がる。

「何ということだ。まさか一人目から神選職が……」
「これも神の、精霊のお導き……」

 鑑定石に触れたまま、騎士や魔法使いの反応を聞いている羽鳥の表情は、どことなく満足げだ。
 きっと「俺は選ばれし者」とか思っているのだろう。

「王女様、私のステータスはご満足いただけたでしょうか」

 白い歯がキランと光りそうな、イケメンスマイルを王女に向ける羽鳥。
 王女は王女で、そんな羽鳥の笑顔にポッと顔を赤らめる。

「……ええ、ええ。もちろんですわ、勇者様」
「よかった。王女様、勇者として俺はあなたに協力します! 一緒にこの世界を救いましょう!」
「はい、勇者様!」
「俺の名前は羽鳥結城。どうぞユウキとお呼びください」
「……はい、ユウキ様!」

 美男美女ってのはいつでもどこでも絵になるなぁ。頬を赤らめて熱視線を送る王女は、まるで恋する乙女おとめのよう……出会って数分でこの雰囲気! 妬ましい! イケメン爆発しろ!
 一人目から勇者なんて如何いかにもな職業が出たこともあり、それから続々とクラスメイト達は鑑定石でステータスの確認を始めた。
 二番目は、近くにいた葉渡先生あたりが鑑定するのかと思ったが、いつの間にか先生の姿はなく、別の生徒が鑑定をしていた。先生、どこ行ったんだ?
 クラスメイト達の鑑定が行われるたびに、こっちの世界の人達から歓声が上がる。
 どうやら俺達のステータスは想像以上に高いようだ。
 職業についても、何人かは希少なものを得ているらしい。
 正直、ステータスの数値に関してはよく分からないが、レベル1の時点でクラスメイト達の能力値は、一般的なステータスのレベル10に相当するそうだ。
 その分伸び代が大きく、今から鍛えれば相当強くなれるはずだと、王女は大喜びしていた。
 中でも羽鳥のステータスは、現時点でレベル15相当らしい。さすが勇者。さすゆうである。
 既に十人以上の確認が終わったが、俺はまだ鑑定を受けていない。さっきも考えたことだが、こちらの手の内を晒すなんて真似、できればお断りしたい。
 ……俺は、あそこで笑顔を振りまくレシィリアラ王女が信じられなかった。
 さっきの涙は、嘘には見えなかった。さっきの笑顔も、偽りだとは思えなかった。彼女が俺達に向ける感情は全てが本物に見えるのに……俺は王女を信用できない。
 何だろう、この感じ。みんなが気持ちを高ぶらせるほどに、俺は冷静になっていくみたいだ。
 ステータス。職業。レベル。スキル。魔法……まるでゲームのような世界。
 みんなが自分のステータスに興味を持ち、期待に胸をふくらませている。そんな様子をうかがいながら、俺は自分の手を見つめた。
 ステータスか……鑑定石で確認する前に、自分で把握しておけると助かるんだけどなぁ。
 そう思った時――俺の耳元を小さな風が通り抜けた。


『ほほほほ、「能力把握ステータスチェック」すればよかろうて』

「……ステータスチェック? ――っ!?」

 一瞬、誰かのささやき声が聞こえた気がした。
 俺がポツリと呟くと、俺の脳裏に『ステータス』が浮かび上がった。


【 名 前 】新藤大樹
【 性 別 】男
【 年 齢 】17
【 種 族 】ヒト種
【 職 業 】勇者(レベル1)
【 レベル 】1
【 H P 】280/280
【 M P 】90/90
【 S P 】162/165
【物理攻撃力】108
【物理防御力】99
【魔法攻撃力】85
【魔法防御力】69
【 俊敏性 】122
【 知 力 】45
【 精神力 】121
【  運  】35

【固有スキル】『風帝の聖剣レベル1』『精霊の守護盾』
【技能スキル】『聖剣技レベル1』『剣技レベル1』『弓技レベル1』『斧技レベル1』
       『槌技レベル1』『体術レベル1』『流脚レベル1』『精密剣レベル1』
       『体幹制御レベル1』『能力把握レベル1』
【魔法スキル】『嵐魔法レベル1』『光魔法レベル1』『水魔法レベル1』
【 称 号 】『召喚されし者』『風帝の愛し子』

 ……マジか! 俺、勇者なの!? そ、それはともかく、俺は自分でステータスを見ることができるらしい。おそらく技能スキル『能力把握』のおかげだ。
 あとは、どうにか鑑定石で鑑定をしないか、俺のステータスを誤魔化ごまかすことでもできればいいんだが……二人目の勇者なんて、絶対にいいことねえよなぁ。
 勇者同士で変な派閥はばつができるとか、王女が必要としている勇者は一人だけで、俺はいらないからって暗殺されちゃうとか。悪い方に考えようと思えばいくらでも思いつきそうだな。
 それはそうと、この世界の勇者は複数いるものなのか。
 うーん。とりあえず後で色々と調べる必要がありそうだな。
 それにしても、さっき誰かに囁かれた気がするんだが、周りには誰もいなかった。
 あれは一体……いや、今はそれよりも……。
 俺は、クラスメイト達の鑑定結果を見つめる王女に視線を向けた……できるか? 『能力把握』。


【 名 前 】レシィリアラ・フォン・レール・マルヴェーラ
【 年 齢 】16
【 職 業 】巫女姫(レベル15)
【 レベル 】20

【固有スキル】『精霊祈願』
【技能スキル】『杖技レベル5』『短剣技レベル4』『診察レベル1』『誘導レベル6』
【魔法スキル】『回復魔法レベル4』『隷属れいぞく魔法レベル7』『闇魔法レベル5』『光魔法レベル4』
【 称 号 】『クリューヌ王国の死神姫』『簒奪さんだつ者』

 飲み物も飲んでいないのに、思わず噴き出しそうになった。
 何だよこのステータス!? あと称号! 死神姫!? 簒奪者って……この姫やべえ!

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