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2巻
2-9
◆ ◆ ◆
「みんな、シルバールビーウルフがこっちに向かってくる!」
「ご主人さま、数は?」
「三十匹くらい! クロードを取り囲んでいた奴らの一部だ!」
土の獅子に跨りクロードの元へ急ぐ俺達を通すまいと、シルバールビーウルフの群れが迫っていた。クロードは健在だ。ここで仕留められればクロードの助けになる。
「散開した! 正面から六、右側面が八、左側面は十だ! 残り六匹は正面後方! 温存かな? シルバールビーウルフはそんなに知恵の回る魔物なの?」
「きっとシルバーダイヤモンドウルフが仕切っているにゃ。ジュエルウルフ種の最上位種なら、下位種を服従させるくらいできてもおかしくないにゃ」
「そうか……でも、どうしてあんな危険な魔物が東の森に……」
「こうなるとさっき会ったイヴェルとかいう女が怪しいにゃ。あいつが現れなかったら、ヴェネ達は森の奥に入ることも、シルバーダイヤモンドウルフと遭遇することもなかったはずにゃ。へらへら笑って気持ち悪い奴だったにゃ。ご主人さまの毒だってあいつが仕組んだのかもしれないにゃ!」
「……あの、木の実?」
「それはちょっと話が飛躍しすぎじゃない?」
「そうかもしれにゃいけど……あの顔、どっかで見た気がするんにゃけど、どこだったかにゃ?」
「とりあえず今は戦闘に集中しよう! ヴェネくん指示を!」
「しょうがないにゃね。――ご主人さま、こっちは気にしなくていいから正面に集中して確実に全部潰してにゃ。リリアンちゃんは数が多い左側面から対応を。右側面は風魔法『防風膜』にゃ。終わり次第右側面も叩きのめすにゃ! 今のリリアンちゃんなら全然余裕にゃ。解放された賢者の魔力を見せつけてやるのにゃ!」
「「了解!」」
クロード不在の今、人生(猫生?)経験豊富なヴェネくんが俺達の司令塔だ。
シルバーダイヤモンドウルフ戦を前に、とうとうヴェネくんはリリアンの魔力を一割から三割に一気に解放させた。
つまり単純計算で今のリリアンの魔力は今までの三倍だ。もうそれくらいなら制御可能らしい。
狼達は三方向からの同時攻撃を狙っているようだ。既に配置に就いた正面の奴らは、側面部隊の到着を今か今かと待っている。あと一分くらいだろうか?
だが、それを待ってやる道理はない。まずリリアンが『防風膜』で右側を防御。俺も弓を持ち正面の敵に備える。
右を終わらせたリリアンは、次に左側面の敵に向けて意識を集中させると――。
「エメラルドへの、仕返しは、お前達にする、の! 植物魔法『樹木鞭』!」
「ギャワワンッ!」
狼達の悲鳴が聞こえ、『世界地図』から四つの赤点が消失した。
『世界地図』であらかじめ敵の正確な位置を把握できる以上、奴らの不意打ちは成功しない。むしろ俺達が奴らに奇襲を仕掛ける側だ。
周囲の木々の根や枝を鞭のように、触手のように操り敵を打ち据える魔法『樹木鞭』。先ほどのシルバーエメラルドウルフは、主にこの魔法でリリアンを苦しめた。
当てつけのように同じ魔法で敵を屠るとは、なかなかリリアンも容赦がないというか、怒らせたら怖いというか。ジュエルさんを見て何か学んだんだろうか……ちょっとだけ心配になる。
い、いや、ジュエルさんのせいではないんだけどね! 思ってない、思ってないから! 俺は凍ると死んじゃうからね!
とにかく、この調子なら側面は問題なさそうだ。むしろ俺自身の方が心配かも。
――『世界地図』に反応あり!
「敵正面が来る! 側面も、今の悲鳴を聞いて動き出してるから気を付けて!」
「分かったの!」
「正面は頼むにゃ、ご主人さま! リリアンちゃん、敵は二十メートル先にゃ。切り刻むにゃ!」
「うん! 風魔法『ウインドカッター』!」
「ギャワンッ!」
よし、リリアンは大丈夫みたいだ。改めて自分の戦闘に集中しよう。
俺が弓をコントロールできるのはせいぜい三十メートルまで。神弓と精霊弓術をもらったはいいけど、射程距離に入ってから六匹を狙うのではおそらく間に合わない。
『サポちゃんより報告。弓を構えてください。固有スキル『識者の眼レベル2』なら問題ありません。サポちゃんより以上』
敵との距離はあと二百メートルほど。黒い影が見えるような見えないような……。
とにかく、サポちゃんがそう言うなら従おう。俺のサポちゃんへの信頼度って物凄く高いな。
【固有スキル『識者の眼』が命中精度を計測中…………敵総数六。左から順に壱から陸と呼称】
【スキル所持者は現在、敵弐を選択中………………命中精度四十六パーセント】
急に視界に変化が!
敵を狙った瞬間『識者の眼』が発動した。正面の敵全ての急所(頭)に赤色のバツ印が表示され、俺の矢の向きが青色のバツ印として表示された。この二つを重ねてみる。
【命中率百パーセント】
俺は、弓を引いた――。
「ギャインッ!」
その距離百メートル。短弓で命中する距離じゃない。というか届くんだ……。
弓か矢か、はたまた両方か、とにかくこの距離でも光の矢は敵に届き一撃のもとに奴らを屠った。
『識者の眼』の照準補正に従い軽く弓を引き続けること五回。
「ギャインッ!」×5
ものの一分足らずで、俺担当の狼達は撃破完了となった。……いや、これ……いいの?
とはいえ悩んでいる暇はない。温存組の六匹が向かってきたのだ。まあ、あれだけ瞬殺されれば温存もへったくれもないもんなぁ。
悲しきかな、その六匹も一分ほどで片付いてしまった。
『識者の眼』と光の矢のコンボが想像以上に強すぎる。威力は俺の攻撃力に依存するとはいえ、命中率百パーセントの照準補正がついた光速の矢だなんて、回避不能の虐殺兵器ですか?
「お兄ちゃん、こっちは終わった……の。すごいの!」
「へぇ、やるもんにゃね、ご主人さま。一人で十二匹も倒したにゃ?」
気がつけばリリアン達も戦闘を終えたらしい。俺は手に入れてしまった新しい力に少しドン引き……いや、今から役に立つはずだ。引いてないで活用しなくちゃな。
「と、とりあえず先へ進もう。『世界地図』に反応があった。残りのシルバールビーウルフ達がこちらに向かっている。クロードがシルバーダイヤモンドウルフと戦い始めた!」
「――!? 急ぐの! もっと速く走って!」
土の獅子が雄たけびを上げ、速度を増して走り出す。迫りくる狼達にもはや作戦などなく、それぞれが突進してくるばかりだった。俺は弓で、リリアンは風魔法で倒していく。
「これで、最後だ!」
「ギャインッ!」
最後の一匹の脳天を光の矢が貫く。とうとう全てのシルバールビーウルフを片づけた。あとはシルバーダイヤモンドウルフだけだ。倒せなくてもいい。とにかくクロードを連れて離脱を!
「クロード!」
「クロさん!」
木々を抜け、クロードと別れた場所に辿り着く。木々が少ない窪んだ大地。よし、間に合――。
「ぐあああああああああああああああああ!」
まるで断末魔の叫びのような絶叫が森に響く。ブチリと肉の引きちぎられる音が耳に届く。
巨大な銀色の狼が、クロードの脇腹を食いちぎっていた。口元は血にまみれ赤く染まり、流れ落ちるよだれと血が地面を汚す。
意識を失ったクロードからは、栓を閉め忘れた蛇口のように血が流れる。
ゴクンと不快な音を立てて肉を嚥下した狼は、俺達を見つめながら不気味な笑みを浮かべていた。
「クロードオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
反射的に弓を引く。このままあいつをクロードのそばにいさせたくない! だが――。
【命中率ゼロパーセント】
「――!?」
二つのバツ印は正確に重なったのに、俺の矢は当たらないと『識者の眼』が告げた。何かの間違いかと矢を射るが、『識者の眼』が告げた通り、掠りもしなかった。
光の矢は奴に届く直前で何かにぶつかり、弾けて消滅してしまったのだ。よく見れば奴の正面に、まるでカッティングされたダイヤモンドのような透き通った何かがある。あれは一体?
「シルバーダイヤモンドウルフの固有スキル『金剛障壁』にゃ! 桁違いの防御力にゃ!」
そして奴は、再びクロードの体を食おうと大きな口を開けた。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
叫んだ瞬間、俺の右手が、『真正主従契約』の霊紋が輝きを放つ。クロードの霊紋も同じだった。
【『真正主従契約』発動。主は従者を求めたり『従者召喚』】
次の瞬間、シルバーダイヤモンドウルフのそばにいたクロードが、光とともに俺の目の前に移動した。
突然のクロードの出現に、俺達が乗っていた土の獅子はバランスを崩し倒れてしまう。そして衝撃で土に還った。俺達はクロードの体を必死に支え、どうにか地面に降り立つ。
「クロード!」
今もなお腹から大量の血が溢れ出ている。内臓の一部が食われ、呼吸も浅く不規則だ。すぐにでも治療を施さなければクロードが死んでしまう!
【技能スキル『医学書』により『診察』を開始します】
「魔力完全開放にゃ! リリアンちゃん!」
「風魔法『空気弾』!」
俺の背後から突然の叫び声と衝撃波が! 驚き振り返ると、シルバーダイヤモンドウルフが宙を舞っていた。いつの間にか奴は、俺達の背後に回り込んで襲い掛かろうとしていたのだ。
「リリアンちゃん、数分だけ魔力完全開放にゃ! 今はリリアンちゃんだけが頼りにゃ! 奴を突き放す防御一択にゃ! クロードが治り次第、即撤退にゃ!」
「う、うん! 風魔法『防風膜』!」
リリアンの魔法により見えない風の防壁が形成される。風の轟音を伴う全方位の盾。こちらに気取られない速さで動く奴相手では常に全体防御を張らざるを得ない。
リリアンはこの二ヶ月で鍛えた魔力制御能力でどうにか俺達を守ってくれていた。
攻撃を防がれ不機嫌な唸り声を上げ、シルバーダイヤモンドウルフが『防風膜』に向かって突進する。風を通して伝わる衝撃で、ようやく攻撃されたのだと気がつく。
ダメだ、とてもじゃないがまともに相手などできない。クロードを治療したら全力で逃げなければ……『診察』が終わった。
【『医学書』による診察が完了しました】
【症状① 腹部損傷による大量出血】
【症状② 内臓欠損による機能不全】
【症状③ 体内に致死率の高い毒素を検出……成分名『ディエリス毒』】
【治療方法を検索】
【治療手順① ディエリス毒の除去。この毒を除去しない限り怪我の治療は不可】
【治療手順② 腹部の治療。欠損復元はポーションでは不可。魔法を推奨】
【詳細説明① ディエリス毒の除去方法】
解毒薬での除去は不可。回復魔法『ハイパーキュア』を使用。消費MP250
【詳細説明② 腹部欠損部位の回復方法】
推奨順位一位:回復魔法『パーフェクトヒール』消費MP400(完全回復)
推奨順位二位:回復魔法『エクストラヒール』消費MP250(損傷のみ回復)
「――っ! またディエリス毒!? とりあえず『ハイパーキュア』を!」
白い光がクロードの毒を散らしていく。でも、クロードはクリコの実を食べていない。少なくとも毒はイヴェルのせいじゃない? ……まさか!
【技能スキル『鑑定レベル4』を行使します】
【 名 前 】シルバーダイヤモンドウルフ
【 性 別 】オス
【 状 態 】猛毒(ディエリス毒)・服従(魂魄分与『アナスタシア・フェーレン』)
【 レベル 】88
【 H P 】2419/3429
【 M P 】901/1008
【 S P 】2005/2638
【物理攻撃力】1469
【物理防御力】1360
【魔法攻撃力】503
【魔法防御力】890
【 俊敏性 】1509
【 知 力 】308
【 精神力 】720
【 運 】30
【固有スキル】『金剛障壁』『状態異常無視:猛毒』
【技能スキル】『狼牙レベル9』『瞬脚レベル7』『気配察知レベル6』
『狼族支配レベル8』『威圧レベル6』『威嚇レベル5』
【魔法スキル】なし
【 備 考 】ジュエルウルフ最上位種。猛毒状態のため死期が近い。
嗜虐的で残忍な性格だが、穢れた人間の魂が混ざったことで更に悪化。
【技能スキル『辞書』を行使します】
固有スキル『状態異常無視』
特定の状態異常に対してその影響を無視できるスキル。しかし、あくまで無視しているだけで無効化しているわけではないため、体を侵されることに変わりはない。
なんだ、このステータス!? あいつ自身も猛毒に侵されている? 『状態異常無視』で我慢しているだけ?
まさか……俺達の回復を妨害するために自ら猛毒状態に? いやでも、『服従』している……アナスタシア・フェーレンって人に……あれ? この名前、いつだったかどこかで……。
【『ディエリス毒』の解毒が完了しました】
――はっ、今はそれどころじゃない。とにかくクロードを完全回復させないと!
【『医学書』より回復魔法『パーフェクトヒール』を抽出します】
【MP不足のため抽出に失敗しました】
「……え? どうして?」
リリアンのMPはまだ十分残っているはず。俺のMPと一緒に使えば足りないなんてことは……。
――!? リリアンのMPがリアルタイムでどんどん減少している!? ――まさか!
【技能スキル『鑑定レベル4』を行使します】
【 魔法名 】『防風膜』
【 魔法名 】『防風膜』
【 魔法名 】『防風膜』……消失しました。
【 魔法名 】『防風膜』
【 魔法名 】『防風膜』……消失しました。
【 魔法名 】『防風膜』……消失しました。
【 魔法名 】『防風膜』
俺は目の前の『防風膜』を鑑定した。リリアンの『防風膜』は何重にも展開され、一撃を受けるたびに破壊され消失していた。リリアンはそれを何度も張り直していたんだ。
こんなのMPを消耗して当然だ。むしろこのままじゃいずれ防御を貫かれる。
時間がないと考えた俺は『パーフェクトヒール』を諦め、『エクストラヒール』でクロードを治療した。
白銀の光がクロードの傷口を修復していく。食いちぎられた脇腹も再生し、傷跡ひとつ残っていない。だが、『エクストラヒール』は失った血液までは戻してくれない。
怪我が治っても、血が足りないクロードは生気がなく、ピクリとも動かなかった。
「……ヒ、ビ…………きさ………………ま」
「クロード!」
うっすらと、弱々しく瞼が開き、瞳が俺に向けられた。力無い口の動きでどうにか言葉を紡ぐ。
「ど、う……か…………おに……げ……く…………」
その瞳に生きようとする意志は感じられず、自身を見捨てて早く逃げろと言う。それを聞いた俺は、気がつけばポタポタと涙を零していた。俺の涙がクロードの頬に、口元に落ちる。
「そんなことできなかったからここにいるんじゃないか!」
「……もし……わ…………け……ござ……い……」
俺の泣き顔を見たクロードはわずかに瞠目し、涙を流して俺に謝罪した。
……一体どうすればいいんだ。クロードが動けるようになるには『パーフェクトヒール』しか方法がない。でも、もうその魔法は使えない。
リリアンに守ってもらいながら逃げる? それとも奴が毒で死ぬまでここで粘るか? いい答えが見つからない。
だが現実は俺に悩む時間さえ与えてはくれなかった。後方から爆音と衝撃波、悲鳴が聞こえた。
「きゃああああああああああああ!」
「にゃああああああああああああ!」
俺が使った『エクストラヒール』のせいで、リリアンのMPがとうとう無くなってしまった。
風の防壁を失った以上、身を守ることなどできるはずもなく、二人は衝撃波に飛ばされてしまったのだ。
「リリアン! ヴェネくん!」
気絶してしまったのか、二人はピクリとも動かない。振り向けばシルバーダイヤモンドウルフの勝ち誇った顔が……。口元を緩め、ゆっくりと、堂々と歩を進めてくる。
もう対抗手段がない。諦めたくないのに……どうしていいのか分からない。
奴はリリアン達を無視して俺とクロードに迫る。まずは意識が残っている俺達からか……。
俺はクロードに顔を向けた。彼は涙を流しながら「逃げろ」と訴えかけてくる。今更逃げたところで意味がないと分かっていても。
また、俺の涙がクロードの顔に落ちる。これは何の涙だろう? 我慢してもポロポロと零れて止まってくれない。
悲しみかな? それとも死の恐怖? みんなを失う、みんなと別れる絶望?
……考えたくない。苦しい。この涙は嫌だ。流したくない。涙を止めたくて、ぎゅっと瞼を閉じて視界を真っ暗にする。
みんなと別れる日が来ることは分かっていたけど………………こんな別れ方は、嫌だよ。
(嫌なら目を開けて。想いを言葉に。願いを言葉に。それが君の……真実になる)
………………主神様?
閉じていた瞼が開く。視界に映るのは、俺を見つめ続ける俺の従者、クロード。
目が合った。今だって涙は止まらない。苦しい、つらい、悲しい……それが俺の言葉?
――想いを言葉に。――願いを言葉に。
……今のクロードにこんなこと言っちゃいけない。分かってる。でも――。
「……クロード。俺のこと……守ってくれるって、言ったじゃないか。…………たす、けて。俺達のこと、助けてよ……クロード」
鼻をすすり、涙で顔をぐちゃぐちゃにして、身動きひとつできないクロードに助けを求めた。
こんなのただの八つ当たりじゃないか。動けないクロードを俺が助けてあげなきゃいけないのに。
それでも、俺の言葉を聞いたクロードは、さっきまで開けることも億劫だったはずの目を大きく見開き、俺を見つめていた。
【固有スキル『識者の眼レベル2』が『開眼モード』を起動しました】
【何人もその瞳を偽ることはできず、あるべき姿を世界に晒す。制限時間百二十秒】
(さあ、出番だよ。『地帝の勇者』クロード・アバラス!)
◆ ◆ ◆
今、この場で起きている不幸は全て私のせいだった。
あれは――シルバーダイヤモンドウルフは、かつての仲間、アナスタシアが送り込んだ刺客だった。彼女の魔法なら、死後であっても不可能なことではない。彼女は、私を殺したかったのだ……死んだ後も。
そして、私は主の命を危険に晒した。いや、このままいけば本当にヒビキ様も殺されてしまう。
私にできることは「逃げろ」と伝えることだけ……くそ、くそっ、くそくそくそくそくそっ!
そんなことしか、できない……。私の前で堪え切れずに泣いているヒビキ様に何もしてさしあげられない。置いて行け、逃げろと告げても、そんなことはできないと仰る。
情けない。情けなさすぎる。自嘲にも似た涙を流すことしかできないとは。
……私にはもう、この方をお守りすることはできない。
『何たる体たらく! オマエ、それでもワタシが選んだ勇者なの!?』
――!? 地帝、様……?
『もう! オマエが死にそうだからって腑抜けすぎよ! そんなだから主ひとり守れないのよ!』
……申し訳ございません。
『――何ソレ? ワタシに謝って何の意味があるの? それで終わりにするつもり? オマエ、それで満足なの? 胸を張って魂を神域に還せるの?』
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