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01 イチゴケーキの寝言
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私の名前はアナベル。ほんとはもっと長いのだけど、今は覚える必要がないとメリーに言われた。
メリーは私の専属メイド。お母様のいない私の代わりに、私を育ててくれた。
私の育ったこの城は、私以外の子供がいない。
メリーと、メイド数人。それと兵士しか見たことがない。
「姫様。せっかくの青く美しい御髪が泥だらけですよ。先月4つになられたのですから、もう少し落ち着きをお持ち下さいね。」
「はーい。でもアナつまんないよ。遊べるお友達がいないんだもん。早く城離れしたいなあ。」
「あと数週間お待ち下さい。」
「はーい。」
城離れとは、4つになる王族の子供が、その身を護るため今まで育った城を離れ、首都から遠く離れた山奥の城に移り住む、というものだ。
私は、このアルチェアリ王国のお姫様。
なぜ私がこんなにも城離れを楽しみにしているかというと、
「ねえねえ!城離れで一緒に過ごす子って誰?メリーだけじゃないんでしょ?私と同じくらいの子が来るってきいたわ。」
「あらまあ、そのような情報どこで手に入れたのかしら。それで城離れを楽しみにしてらしたのですね。」
城離れには、王族の子の遊び相手が一人来るからだ。その人物は、将来姫の側近となる。
「当日までお待ち下さい。きっと驚かれますわ。」
そう言って、メリーはふふっと笑った。
メリーの本名は、メリエルと言ってこの国で王様(つまり私のお父様)の次に偉い家の人だ。
その所作一つ一つに、高貴さがにじみ出ている。
私もいつかこうなりたい。
その日の午後。私は中庭にいた。
唯一一人の時間。春のぽかぽか陽気と、柔らかい芝生の絨毯が、まぶたを重くする。
毎日この時間はここで日光浴をする。寝ちゃう時もあれば、ひらひらちょうちょを追いかける時もある。でももう飽きてしまった。
「だあれかこっないっかなあ~。」
そう言って、芝生に寝転ぶ。
そしてそのまま寝てしまった。
目を覚ますと、視界の上に、男の子がいた。
びっくりして飛び起きる。
男の子もびっくりしていた。
しばらくの静寂のあと、男の子が口を開いた。
「キミだあれ?」
「あなたこそだれ?ここは子供は入っちゃだめなのよ?」
「キミは子供だ。」
「アナはいーの!」
自分と、同じくらいの年齢の子供。
茶髪に金色のかかった茶色の瞳。そして頭に大きな………獣の耳?
とりあえずもう一度聞き返す。
「あなたはだあれ?」
「………ボク、リデオ。この近くに住んでる。大っきな寝言が聞こえたから…。」
「アナはアナベル。この国のお姫様だよ。」
自慢気な自己紹介。しかし…。
「お姫様?そうは見えないよ。だって絵本の中のお姫様は寝言で、大っきなイチゴケーキ~なんて言わないもん。」
この子は信じない。私は少しムキになった。
「もういいもん!あなたなんか知らない。」
しばらくそっぽを向いていると、いつの間にか男の子はいなくなっていた。
悲しくなった。少しだけ。
メリーのイチゴケーキが食べたいな。
メリーは私の専属メイド。お母様のいない私の代わりに、私を育ててくれた。
私の育ったこの城は、私以外の子供がいない。
メリーと、メイド数人。それと兵士しか見たことがない。
「姫様。せっかくの青く美しい御髪が泥だらけですよ。先月4つになられたのですから、もう少し落ち着きをお持ち下さいね。」
「はーい。でもアナつまんないよ。遊べるお友達がいないんだもん。早く城離れしたいなあ。」
「あと数週間お待ち下さい。」
「はーい。」
城離れとは、4つになる王族の子供が、その身を護るため今まで育った城を離れ、首都から遠く離れた山奥の城に移り住む、というものだ。
私は、このアルチェアリ王国のお姫様。
なぜ私がこんなにも城離れを楽しみにしているかというと、
「ねえねえ!城離れで一緒に過ごす子って誰?メリーだけじゃないんでしょ?私と同じくらいの子が来るってきいたわ。」
「あらまあ、そのような情報どこで手に入れたのかしら。それで城離れを楽しみにしてらしたのですね。」
城離れには、王族の子の遊び相手が一人来るからだ。その人物は、将来姫の側近となる。
「当日までお待ち下さい。きっと驚かれますわ。」
そう言って、メリーはふふっと笑った。
メリーの本名は、メリエルと言ってこの国で王様(つまり私のお父様)の次に偉い家の人だ。
その所作一つ一つに、高貴さがにじみ出ている。
私もいつかこうなりたい。
その日の午後。私は中庭にいた。
唯一一人の時間。春のぽかぽか陽気と、柔らかい芝生の絨毯が、まぶたを重くする。
毎日この時間はここで日光浴をする。寝ちゃう時もあれば、ひらひらちょうちょを追いかける時もある。でももう飽きてしまった。
「だあれかこっないっかなあ~。」
そう言って、芝生に寝転ぶ。
そしてそのまま寝てしまった。
目を覚ますと、視界の上に、男の子がいた。
びっくりして飛び起きる。
男の子もびっくりしていた。
しばらくの静寂のあと、男の子が口を開いた。
「キミだあれ?」
「あなたこそだれ?ここは子供は入っちゃだめなのよ?」
「キミは子供だ。」
「アナはいーの!」
自分と、同じくらいの年齢の子供。
茶髪に金色のかかった茶色の瞳。そして頭に大きな………獣の耳?
とりあえずもう一度聞き返す。
「あなたはだあれ?」
「………ボク、リデオ。この近くに住んでる。大っきな寝言が聞こえたから…。」
「アナはアナベル。この国のお姫様だよ。」
自慢気な自己紹介。しかし…。
「お姫様?そうは見えないよ。だって絵本の中のお姫様は寝言で、大っきなイチゴケーキ~なんて言わないもん。」
この子は信じない。私は少しムキになった。
「もういいもん!あなたなんか知らない。」
しばらくそっぽを向いていると、いつの間にか男の子はいなくなっていた。
悲しくなった。少しだけ。
メリーのイチゴケーキが食べたいな。
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