陽だまりの中のキミとボク

御社こはく

文字の大きさ
1 / 2

01 イチゴケーキの寝言

しおりを挟む
 私の名前はアナベル。ほんとはもっと長いのだけど、今は覚える必要がないとメリーに言われた。
メリーは私の専属メイド。お母様のいない私の代わりに、私を育ててくれた。
私の育ったこの城は、私以外の子供がいない。
メリーと、メイド数人。それと兵士しか見たことがない。

「姫様。せっかくの青く美しい御髪が泥だらけですよ。先月4つになられたのですから、もう少し落ち着きをお持ち下さいね。」

「はーい。でもアナつまんないよ。遊べるお友達がいないんだもん。早く城離れしたいなあ。」

「あと数週間お待ち下さい。」

「はーい。」

城離れとは、4つになる王族の子供が、その身を護るため今まで育った城を離れ、首都から遠く離れた山奥の城に移り住む、というものだ。

私は、このアルチェアリ王国のお姫様。
なぜ私がこんなにも城離れを楽しみにしているかというと、

「ねえねえ!城離れで一緒に過ごす子って誰?メリーだけじゃないんでしょ?私と同じくらいの子が来るってきいたわ。」

「あらまあ、そのような情報どこで手に入れたのかしら。それで城離れを楽しみにしてらしたのですね。」

城離れには、王族の子の遊び相手が一人来るからだ。その人物は、将来姫の側近となる。

「当日までお待ち下さい。きっと驚かれますわ。」

そう言って、メリーはふふっと笑った。
メリーの本名は、メリエルと言ってこの国で王様(つまり私のお父様)の次に偉い家の人だ。
その所作一つ一つに、高貴さがにじみ出ている。
私もいつかこうなりたい。




その日の午後。私は中庭にいた。
唯一一人の時間。春のぽかぽか陽気と、柔らかい芝生の絨毯が、まぶたを重くする。

毎日この時間はここで日光浴をする。寝ちゃう時もあれば、ひらひらちょうちょを追いかける時もある。でももう飽きてしまった。

「だあれかこっないっかなあ~。」

そう言って、芝生に寝転ぶ。
そしてそのまま寝てしまった。








目を覚ますと、視界の上に、男の子がいた。
びっくりして飛び起きる。
男の子もびっくりしていた。
しばらくの静寂のあと、男の子が口を開いた。

「キミだあれ?」

「あなたこそだれ?ここは子供は入っちゃだめなのよ?」

「キミは子供だ。」

「アナはいーの!」

自分と、同じくらいの年齢の子供。
茶髪に金色のかかった茶色の瞳。そして頭に大きな………獣の耳?
とりあえずもう一度聞き返す。

「あなたはだあれ?」

「………ボク、リデオ。この近くに住んでる。大っきな寝言が聞こえたから…。」

「アナはアナベル。この国のお姫様だよ。」

自慢気な自己紹介。しかし…。

「お姫様?そうは見えないよ。だって絵本の中のお姫様は寝言で、大っきなイチゴケーキ~なんて言わないもん。」

この子は信じない。私は少しムキになった。

「もういいもん!あなたなんか知らない。」

しばらくそっぽを向いていると、いつの間にか男の子はいなくなっていた。

悲しくなった。少しだけ。

メリーのイチゴケーキが食べたいな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...