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侯爵家の女主人
第四話
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呆然とした様子のマクルフォンの姿に、私もまた混乱する。
「……私、何かおかしいこといったかしら?」
「い、いえ……」
その私の言葉を咄嗟に否定しながらも、未だぬぐい去れない困惑を顔に浮かべてマクルフォンは告げる。
「カズタリア様から聞いた話では、奥様は趣味に没頭されるという話だったので……」
「ええ、そのつもりだけど」
そう言うと、マクルフォンの顔がさらに困惑する。
それにようやくお互いのすれ違いに気づいた私は、笑いながら告げる。
「ああ、なるほどね。別に私は遊んで暮らしたいって言って訳じゃないのよ」
「……そうなのですか?」
「確かに趣味に色々と融通はして欲しいわ。でも、それとこれは別。働かざるもの食べるべからず、でしょう?」
その私の言葉を耳にし、マクルフォンは目をみはる。
「別におかしなこと言ったつもりはないんだけど……」
「いえ、貴族令嬢からそんな言葉を聞くとは思っていませんでしたので。特にあの、アズヒリア伯爵令嬢からそのようなことを言って頂けるとは思っておらず……」
その言葉に私は、思わず苦笑する。
アズヒリア伯爵家。
今の貴族社会でその名前を聞けば、成金だの貴族のプライドを捨てたなど散々な評価をされるだろう。
ただ、幸運にも魔道具職人が居着いた場所と。
しかし、誰も知らない。
過去、アズヒリア伯爵家は使用人さえ雇えないほどに困窮していたことを。
「……性分なだけよ」
そのすべての思いを胸のうちに押し込め、私は告げる。
「まあ、ただご飯を食べるだけというのが私には居心地が悪いのよ。だから、最低限やって欲しいことを教えてちょうだい」
「ですが……」
私の言葉に、マクルフォンが思案げに口を開く。
その顔に浮かぶのは、葛藤。
それに一押し必要だと判断した私は、私はさらに続ける。
「別に私に教えたくない情報は与えなくて大丈夫よ。なんなら、掃除でもいいけど」
「掃除!?」
「なんなら、何もくれないなら侍女に混じって勝手に働くけど」
その言葉にマクルフォンが絶句する。
もちろん、立場上実際にそうする訳には行かない。
けれど、別にやれと言われたら私はやるのが苦でもない。
そんな私の内心を読みとったのか、マクルフォンが深々とため息をはく。
「……旦那様が手玉に取られた理由が理解できました」
「あら、人聞きの悪い」
にっこりと笑って見せると、もう何も言わずにマクルフォンは告げる。
「それでは、女主人として使用人たちの管理をお願いしてよろしいでしょうか?」
そうして私は初の仕事を与えられることになった。
「……私、何かおかしいこといったかしら?」
「い、いえ……」
その私の言葉を咄嗟に否定しながらも、未だぬぐい去れない困惑を顔に浮かべてマクルフォンは告げる。
「カズタリア様から聞いた話では、奥様は趣味に没頭されるという話だったので……」
「ええ、そのつもりだけど」
そう言うと、マクルフォンの顔がさらに困惑する。
それにようやくお互いのすれ違いに気づいた私は、笑いながら告げる。
「ああ、なるほどね。別に私は遊んで暮らしたいって言って訳じゃないのよ」
「……そうなのですか?」
「確かに趣味に色々と融通はして欲しいわ。でも、それとこれは別。働かざるもの食べるべからず、でしょう?」
その私の言葉を耳にし、マクルフォンは目をみはる。
「別におかしなこと言ったつもりはないんだけど……」
「いえ、貴族令嬢からそんな言葉を聞くとは思っていませんでしたので。特にあの、アズヒリア伯爵令嬢からそのようなことを言って頂けるとは思っておらず……」
その言葉に私は、思わず苦笑する。
アズヒリア伯爵家。
今の貴族社会でその名前を聞けば、成金だの貴族のプライドを捨てたなど散々な評価をされるだろう。
ただ、幸運にも魔道具職人が居着いた場所と。
しかし、誰も知らない。
過去、アズヒリア伯爵家は使用人さえ雇えないほどに困窮していたことを。
「……性分なだけよ」
そのすべての思いを胸のうちに押し込め、私は告げる。
「まあ、ただご飯を食べるだけというのが私には居心地が悪いのよ。だから、最低限やって欲しいことを教えてちょうだい」
「ですが……」
私の言葉に、マクルフォンが思案げに口を開く。
その顔に浮かぶのは、葛藤。
それに一押し必要だと判断した私は、私はさらに続ける。
「別に私に教えたくない情報は与えなくて大丈夫よ。なんなら、掃除でもいいけど」
「掃除!?」
「なんなら、何もくれないなら侍女に混じって勝手に働くけど」
その言葉にマクルフォンが絶句する。
もちろん、立場上実際にそうする訳には行かない。
けれど、別にやれと言われたら私はやるのが苦でもない。
そんな私の内心を読みとったのか、マクルフォンが深々とため息をはく。
「……旦那様が手玉に取られた理由が理解できました」
「あら、人聞きの悪い」
にっこりと笑って見せると、もう何も言わずにマクルフォンは告げる。
「それでは、女主人として使用人たちの管理をお願いしてよろしいでしょうか?」
そうして私は初の仕事を与えられることになった。
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