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第11話 伯爵ヤラム・マークタット
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アグルスのその言葉に対し、しばしの間私は反応を返すことが出来なかった。
アグルスの言葉、そのあまりの衝撃に一瞬私は理解するのを放棄したのだ。
「では。これで私は」
「っ!待って!」
……けれども、それだけを告げてこの場を後にしようとするアグルスに対し、だんまりを決め込むことはできなかった。
「いきなり何を言うのだ!貴様は自分がどれ程非常識なことを言っているのか理解できていないのか!」
私は私を押し退けこの場から去ろうとするアグルスの肩を掴み、そう叫んだ。
正直、私には何故アグルスがいきなりこんな言葉を言い出したのか全く理解できなかった。
なにせルスタニアの大陸連盟の加盟についてはもう既に決まったことな上、ルスタニアとアレスターレの間には全くなんの問題も起きていないのだから。
「一歩間違えればアレスターレとルスタニアとの戦争だぞ!何故こんな非常なことを……」
だから私はアグルスがルスタニアの外交官であることも忘れ、そう怒鳴りつけていた。
目の前の男は化け狐とよばれ、アレスターレの文官にずっと恐れられていた存在なのだ。
なのに何故こんな簡単なことも理解出来ないのか、私は首を傾げそうになる。
「……はぁ。ここまでマーセリア孃の後任が愚かだとは思わなかった」
「なっ!?」
……けれども、その私の言葉に対するアグルスの対応は呆れの嘆息だった。
そしてそのアグルスの顔に私の顔は怒りで朱に染まることになる。
相手がおかしいのは分かりきっているのにもかかわらず、逆に馬鹿にされたという事実は私のプライドを痛く傷つけることになったのだ。
そして次の瞬間、その怒りを抑えることができず、私はアグルスに向かって口を開いていた。
「ふ、ふざけるな!愚かだと言いたいのはこちらの方だ!大きな問題など起きてもいないのに一方的に加盟を破棄……」
「大きな問題が起きていない?」
「っ!?」
……だが、アグルスに対する怒りを私は最後まで言い切ることが出来なかった。
私の言葉が終わるより先にアグルスが話の言葉を遮り声をあげたのだ。
今までとは違う、怒気を露にした声を。
今までアグルスは不機嫌さを露にしながらも、それでもそのようすは何時もの好好爺然とした態度から逸脱するものではなかった。
……けれども、今目の前で怒気を露にするアグルスは先程までの好好爺然とした様子が嘘のような威圧感を放っていた。
今目の前にいるのは歴戦の猛者といわれても信じてしまいそうな威圧感を。
「ひ、ひぃっ!」
そしてそのアグルスを前にして私は恐怖を隠すことが出来なかった。
今までアグルスに怒りを抱いたことさえ忘れ、私はがたがたと体を震わす。
「マーセリア孃を追い出したことが大事でない?貴様はマーセリア孃がいなくなれば大陸連盟が成り立たなくなることさえ理解できんのか。……本当にマーセリア孃は上の人間に恵まれなかったようだ」
そんな私を汚物でも見るような目で一別し、アグルスはそう憐れみのこもった言葉を漏らした。
それはアグルスのマーセリアにたいする敬意が浮かんだ言葉だった。
そしてそのアグルスの敬意には、マーセリアが老練な外交官でさえ認める能力を有していることを示していて。
「……けるな」
「何か」
「ふざけるな!あの女はただの無能だ!」
……けれども、その事を私は認めることが出来なかった。
アグルスの言葉、そのあまりの衝撃に一瞬私は理解するのを放棄したのだ。
「では。これで私は」
「っ!待って!」
……けれども、それだけを告げてこの場を後にしようとするアグルスに対し、だんまりを決め込むことはできなかった。
「いきなり何を言うのだ!貴様は自分がどれ程非常識なことを言っているのか理解できていないのか!」
私は私を押し退けこの場から去ろうとするアグルスの肩を掴み、そう叫んだ。
正直、私には何故アグルスがいきなりこんな言葉を言い出したのか全く理解できなかった。
なにせルスタニアの大陸連盟の加盟についてはもう既に決まったことな上、ルスタニアとアレスターレの間には全くなんの問題も起きていないのだから。
「一歩間違えればアレスターレとルスタニアとの戦争だぞ!何故こんな非常なことを……」
だから私はアグルスがルスタニアの外交官であることも忘れ、そう怒鳴りつけていた。
目の前の男は化け狐とよばれ、アレスターレの文官にずっと恐れられていた存在なのだ。
なのに何故こんな簡単なことも理解出来ないのか、私は首を傾げそうになる。
「……はぁ。ここまでマーセリア孃の後任が愚かだとは思わなかった」
「なっ!?」
……けれども、その私の言葉に対するアグルスの対応は呆れの嘆息だった。
そしてそのアグルスの顔に私の顔は怒りで朱に染まることになる。
相手がおかしいのは分かりきっているのにもかかわらず、逆に馬鹿にされたという事実は私のプライドを痛く傷つけることになったのだ。
そして次の瞬間、その怒りを抑えることができず、私はアグルスに向かって口を開いていた。
「ふ、ふざけるな!愚かだと言いたいのはこちらの方だ!大きな問題など起きてもいないのに一方的に加盟を破棄……」
「大きな問題が起きていない?」
「っ!?」
……だが、アグルスに対する怒りを私は最後まで言い切ることが出来なかった。
私の言葉が終わるより先にアグルスが話の言葉を遮り声をあげたのだ。
今までとは違う、怒気を露にした声を。
今までアグルスは不機嫌さを露にしながらも、それでもそのようすは何時もの好好爺然とした態度から逸脱するものではなかった。
……けれども、今目の前で怒気を露にするアグルスは先程までの好好爺然とした様子が嘘のような威圧感を放っていた。
今目の前にいるのは歴戦の猛者といわれても信じてしまいそうな威圧感を。
「ひ、ひぃっ!」
そしてそのアグルスを前にして私は恐怖を隠すことが出来なかった。
今までアグルスに怒りを抱いたことさえ忘れ、私はがたがたと体を震わす。
「マーセリア孃を追い出したことが大事でない?貴様はマーセリア孃がいなくなれば大陸連盟が成り立たなくなることさえ理解できんのか。……本当にマーセリア孃は上の人間に恵まれなかったようだ」
そんな私を汚物でも見るような目で一別し、アグルスはそう憐れみのこもった言葉を漏らした。
それはアグルスのマーセリアにたいする敬意が浮かんだ言葉だった。
そしてそのアグルスの敬意には、マーセリアが老練な外交官でさえ認める能力を有していることを示していて。
「……けるな」
「何か」
「ふざけるな!あの女はただの無能だ!」
……けれども、その事を私は認めることが出来なかった。
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