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サラベルトとの会談があった翌日、私は自室でマーレイアと共に荷物を纏めていた。
「……お嬢様、私が荷物を畳まさせて頂こうと思っているのですが」
当然のような顔をして、荷物を纏める私に、マーレイアが半眼でそう告げる。
本来、荷物を纏めるのはメイドや侍女達の仕事で、貴族の令嬢がするものではない。
と、そう言いたげにマーレイアはこちらに視線を向けてくる。
「いいじゃないの。もう時間も無いのですし」
だが私は、まるで応えた様子なくそれだけ告げて、作業を続行する。
その言葉通り、バーベスト家の一員などではなった私は、明日明後日には、馬車でこの場所を去ることになっている。
出来る限り早めに荷物を整えておかなくてはならないのだ。
「結構です。私で十分間に合います」
「あ、ちょっ、」
……だが、そんな言い訳でマーレイアが頷く訳がなかった。
取り付く暇もなく、マーレイアは私の言葉を否定し、こちらの手に持っている荷物を奪いにくる。
どうやら実力行使に出るつもりらしい。
だが、そうなれば私も手段を選ぶつもりはなかった。
「ほら、これでどうかしら」
「くっ!」
次の瞬間、私は自分の持っている荷物を天高く持ち上げた。
そうすると、発育があまり良くないというか、発達途中(希望)であるマーレイアの高さでは届かないのだ。
何とかマーレイアは背伸びをして、荷物を奪おうとするが、残念ながらそれではまだ届かない。
マーレイアは私の顔を見上げ、さも悔しげな顔を浮かべるが、私はまるで気にしない。
マーレイアは私が時々間諜としての役目を頼むだけあり、かなり身体能力が高い。
だから飛ぶことが出来れば、私の手に持っている荷物も取れるが、最近お堅く振る舞うようになったマーレイアには、主人である私の目の前で飛ぶことなんて出来ないだろう。
それを確信した私は、得意げな笑みを浮かべ、口を開いた。
「少しぐらい私が手伝ってもいいじゃないの。ほら、今まで私が掃除や洗濯などもしていた時期もあったじゃない」
「それは、事情が、あったからで」
その私の言葉に対し返信しながら、マーレイアは少しつっかえながら返答する。
途中荷物を取ろうと背伸びするせいで、言葉が途切れているのだ。
「今はやらなくてもいいではないですか!貴族社会で、お嬢様が雑用もしていると噂になればどうするのですか!」
だが、マーレイアは最終的に荷物を取ることを諦め、私の説得にかかる。
どうやら何としてでも、私が手伝うことを防ごうと考えているらしい。
だが、もうすでに貴族社会での噂は最悪なのに、今さら評判と言われたところで私が躊躇するわけがなかった。
「だから、今さら……」
その事をマーレイアに伝えるべく、私は口を開く。
「え……?」
私の自室の扉が、音をたてて開いたのはそのときだった。
侯爵令嬢である自分の部屋が、挨拶どころかノックさえなく開いたことに驚きながら、私は扉へと顔を向ける。
「ここが、ネストリアの部屋ね」
そこにいたのは、婚約破棄の時私に勝ち誇った笑みを見せてきた、マークの浮気相手の男爵令嬢だった。
「……お嬢様、私が荷物を畳まさせて頂こうと思っているのですが」
当然のような顔をして、荷物を纏める私に、マーレイアが半眼でそう告げる。
本来、荷物を纏めるのはメイドや侍女達の仕事で、貴族の令嬢がするものではない。
と、そう言いたげにマーレイアはこちらに視線を向けてくる。
「いいじゃないの。もう時間も無いのですし」
だが私は、まるで応えた様子なくそれだけ告げて、作業を続行する。
その言葉通り、バーベスト家の一員などではなった私は、明日明後日には、馬車でこの場所を去ることになっている。
出来る限り早めに荷物を整えておかなくてはならないのだ。
「結構です。私で十分間に合います」
「あ、ちょっ、」
……だが、そんな言い訳でマーレイアが頷く訳がなかった。
取り付く暇もなく、マーレイアは私の言葉を否定し、こちらの手に持っている荷物を奪いにくる。
どうやら実力行使に出るつもりらしい。
だが、そうなれば私も手段を選ぶつもりはなかった。
「ほら、これでどうかしら」
「くっ!」
次の瞬間、私は自分の持っている荷物を天高く持ち上げた。
そうすると、発育があまり良くないというか、発達途中(希望)であるマーレイアの高さでは届かないのだ。
何とかマーレイアは背伸びをして、荷物を奪おうとするが、残念ながらそれではまだ届かない。
マーレイアは私の顔を見上げ、さも悔しげな顔を浮かべるが、私はまるで気にしない。
マーレイアは私が時々間諜としての役目を頼むだけあり、かなり身体能力が高い。
だから飛ぶことが出来れば、私の手に持っている荷物も取れるが、最近お堅く振る舞うようになったマーレイアには、主人である私の目の前で飛ぶことなんて出来ないだろう。
それを確信した私は、得意げな笑みを浮かべ、口を開いた。
「少しぐらい私が手伝ってもいいじゃないの。ほら、今まで私が掃除や洗濯などもしていた時期もあったじゃない」
「それは、事情が、あったからで」
その私の言葉に対し返信しながら、マーレイアは少しつっかえながら返答する。
途中荷物を取ろうと背伸びするせいで、言葉が途切れているのだ。
「今はやらなくてもいいではないですか!貴族社会で、お嬢様が雑用もしていると噂になればどうするのですか!」
だが、マーレイアは最終的に荷物を取ることを諦め、私の説得にかかる。
どうやら何としてでも、私が手伝うことを防ごうと考えているらしい。
だが、もうすでに貴族社会での噂は最悪なのに、今さら評判と言われたところで私が躊躇するわけがなかった。
「だから、今さら……」
その事をマーレイアに伝えるべく、私は口を開く。
「え……?」
私の自室の扉が、音をたてて開いたのはそのときだった。
侯爵令嬢である自分の部屋が、挨拶どころかノックさえなく開いたことに驚きながら、私は扉へと顔を向ける。
「ここが、ネストリアの部屋ね」
そこにいたのは、婚約破棄の時私に勝ち誇った笑みを見せてきた、マークの浮気相手の男爵令嬢だった。
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