婚約破棄されましたが、特に問題ありませんでした

影茸

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 「それじゃ、無事妹が帰ってきたことに感謝して」

 そんな義兄の言葉と共に、食事は始まる。
 しかしその頃になっても、義兄が私に何かいうことはなかった。

 ……その頃になれば、さすがの私も不信感を隠すことは出来なかった。

 義兄の態度、それは何時もと変わらないものだ。
 だが、家を出る前にあれだけ喧嘩したにも関わらず、まるで変わっていない私への接し方は明らかに不審だった。

 「……お兄様は怒っていないのですか?」

 そしてその感覚に耐えきれず、私は思わずそう声を上げていた。
 本来ならば、黙って気づかない振りをしているのが賢明なのかもしれないが、今回に関しては私も押し黙っていることはできなかった。

 「いや、今回に関しては過度に君を責めるつもりはない」

 しかし、その私の言葉にも義兄はそう告げるだけだった。
 まるでそんなこと、大したことではないと言いたげに。

 ……そしてその義兄の様子を見て、私はなぜ義兄が自分に怒りを示さないのか、その理由を理解した。

 どうやら義兄は今、私に対する怒りが薄れるほどの興奮状態にあるらしい、と。
 義兄にはある癖があり、何か大きな仕事にか変わっていたり喜びを感じていたりすると、極度の興奮状態に陥る。
 そうなれば、大抵どんなことがあっても大きく感情を動かさなくなるのだ。
 つまり今、義兄は相当大きな仕事にか関わっているのだろう。

 「だが、当主の命令に反した罰は受けてもらわないとならない」

 次の瞬間、そう告げた義兄の声に力が込められていることを目敏く感じとり、私は今から義兄が告げようとしている内容がその仕事であることを理解する。
 どうやら義兄は、罰という名目で私を仕事に噛ませようとしているのだろう。
 そう理解した私は、落ち着いた状況で義兄の次の言葉を待つ。

 「ネストリア、お前にはまた新しく嫁いでもう」

 「……え?」

 しかし次の義兄の言葉に、私は動揺を隠せなかった……
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