20 / 26
謎の女性 Ⅱ
しおりを挟む
うつむき、動かないその姿を見ながら私の頭は高速で回転していた。
確かに、シャルルとお義父様、お義母様と会いに行ったとき、アイラはこの部屋で待機してもらっていた。
だが、シャルルを追い出した際に、この女性も追い出すように命じたはず。
間違いなくバルドスがその命令を出していて……なのになぜアイラがここにいる?
アイラがゆっくりと顔をこちらに向けたのは、そんな疑問を抱いていた時だった。
「……マルシア様? よかった私は運が良かったみたいですね」
長い前髪で覆われたその顔は、まだ明らかになっていない。
だが、それがなおさら不気味さを際立てていた。
「誰か来て!」
そう叫びながら私は反射的に、自分の懐にある魔術具へと手をかける。
今持っているのは、この街でも最高峰のもので、シャルルにも効果があると思われるものだ。
アイラが何かたくらんでいたとしても、助けが来るまでは持つはずだ。
アイラが困惑する様子を見せたのは、その時だった。
「そ、その。どうか、そう警戒しないでください」
謎の手段を使い、部屋に陣取る謎の女性。
にもかかわらず、目の前の困惑するアイラはどこか気が抜ける雰囲気を漂わせていて、私は眉をひそめる。
「私はただ、お話がしたいだけで……」
「ほぼ忍び込むような手段を使って? それも、その手段さえ分からない謎の相手に?」
そういいながら、私はさらに警戒を強める。
アイラは確かに、悪人と考えるにはそぐわない雰囲気をまとっていた。
しかし、それだけで警戒を解くには、目の前の女性はあまりにも謎の固まりだった。
私の脳裏に、シャルルといた時のアイラの姿が浮かぶ。
その時のアイラは、なにが起ころうがほとんど身動きもせず、まるで人形かのような態度で過ごしていた。
そしてそれ故に、目の前のアイラはなにもかもが謎だった。
動機も、目的も、そして人間性すらも。
「マルシア様!」
私の声を聞いた衛兵が部屋にかけ込んできたのは、ちょうどその時だった。
私は咄嗟に、警戒を促すように声を上げる。
……しかし、その時既に遅かった。
「気をつけなさい。何か特殊な……え?」
「あ、あ……」
会話の途中であったはずなのにも関わらず、衛兵の手から握られた魔術具がこぼれ落ちる。
信じられない光景に視線を前に戻すと、そこには信じられない姿をしたアイラが立っていた。
「こんなもの、見せたくはなかったのですが」
そう唇をかみしめるアイラは、伸びた前髪を手でかき分けていた。
──そこから覗いていたのは、目が離せなくなるような整い、異常に魅力的に感じる顔だった。
確かに、シャルルとお義父様、お義母様と会いに行ったとき、アイラはこの部屋で待機してもらっていた。
だが、シャルルを追い出した際に、この女性も追い出すように命じたはず。
間違いなくバルドスがその命令を出していて……なのになぜアイラがここにいる?
アイラがゆっくりと顔をこちらに向けたのは、そんな疑問を抱いていた時だった。
「……マルシア様? よかった私は運が良かったみたいですね」
長い前髪で覆われたその顔は、まだ明らかになっていない。
だが、それがなおさら不気味さを際立てていた。
「誰か来て!」
そう叫びながら私は反射的に、自分の懐にある魔術具へと手をかける。
今持っているのは、この街でも最高峰のもので、シャルルにも効果があると思われるものだ。
アイラが何かたくらんでいたとしても、助けが来るまでは持つはずだ。
アイラが困惑する様子を見せたのは、その時だった。
「そ、その。どうか、そう警戒しないでください」
謎の手段を使い、部屋に陣取る謎の女性。
にもかかわらず、目の前の困惑するアイラはどこか気が抜ける雰囲気を漂わせていて、私は眉をひそめる。
「私はただ、お話がしたいだけで……」
「ほぼ忍び込むような手段を使って? それも、その手段さえ分からない謎の相手に?」
そういいながら、私はさらに警戒を強める。
アイラは確かに、悪人と考えるにはそぐわない雰囲気をまとっていた。
しかし、それだけで警戒を解くには、目の前の女性はあまりにも謎の固まりだった。
私の脳裏に、シャルルといた時のアイラの姿が浮かぶ。
その時のアイラは、なにが起ころうがほとんど身動きもせず、まるで人形かのような態度で過ごしていた。
そしてそれ故に、目の前のアイラはなにもかもが謎だった。
動機も、目的も、そして人間性すらも。
「マルシア様!」
私の声を聞いた衛兵が部屋にかけ込んできたのは、ちょうどその時だった。
私は咄嗟に、警戒を促すように声を上げる。
……しかし、その時既に遅かった。
「気をつけなさい。何か特殊な……え?」
「あ、あ……」
会話の途中であったはずなのにも関わらず、衛兵の手から握られた魔術具がこぼれ落ちる。
信じられない光景に視線を前に戻すと、そこには信じられない姿をしたアイラが立っていた。
「こんなもの、見せたくはなかったのですが」
そう唇をかみしめるアイラは、伸びた前髪を手でかき分けていた。
──そこから覗いていたのは、目が離せなくなるような整い、異常に魅力的に感じる顔だった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
3,097
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる