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謎の女性 Ⅲ
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「……っ」
露わとなったアイラの顔を見つめながら、私は固まった衛兵の気持ちを理解することになった。
こんなものを見せられると、確かに見つめる以外になにもできなくなると。
私も衛兵も固まる中、アイラが衛兵へと口を開く。
「マルシア様と二人で話したいの。貴方は離れていて」
「……はい」
背後で聞こえる遠ざかる足音、それを聞きながら私はここにアイラが居続けたからくりを理解する。
こうして、アイラは私が来るのを待っていたのだろうと。
衛兵が去ったのを確認すると、アイラは改めて私の方に向き直る。
同姓でありながら、魅力的に感じてならないその顔が、私を見ている。
そのことで、私の胸が歓喜で沸き立つ。
「こ、の……!」
しかし、その衝動を何とかこらえ、私は自分の顔をアイラからそらした。
「魔術師でもない一般人が自力で……?」
そんな私に、アイラの驚いた声が響く。
しかし、そんな声さえ気にならない焦りが私の中には存在していた。
……アイラに対抗できる魔術師が来るまで、私は一人で耐え抜かねばならないのかと。
とはいえ、決して勝機がないわけではなかった。
この魅力は、何らかの魔術的な力だろう。
アイラが魔力を持った人間であることは明らかだ。
だが、みる限りアイラが正式に訓練した魔術師であるようには見えない。
つまり、扱える力はこの魅力だけの可能性がある。
そうであれば、私が持つ魔術具でどうにかなる可能性があった。
油断はできないが諦める状況ではない。
そう私は覚悟を決め……急に体にかかる圧力が消えたのはその瞬間だった。
「突然の無礼、誠に申し訳ありませんマルシア様。ですがどうか、話を切いてくださいませんでしょうか」
くぐもった懇願の言葉に、振り返った私の目に入って来たのは、その場にひざを突いて頭を下げるアイラの姿だった。
「……調子が狂うわね」
その姿に、私は脱力してしまう。
これから、強力な魔術師と戦わねばならない。
そう覚悟を決めていたからこそなおさら。
まだ警戒を解くわけにはいかない。
けれど、話ができない訳ではないと判断した私は、口を開く。
「貴女、その力は自分で発動を切り替えられるの?」
「……いえ、強引に抑えていると言った状態に近いです」
未だ頭を下げたまま、アイラは続ける。
「この力を私は魅了と呼んでます。子供の頃からの力で、目で人を見るとその人を魅了してしまいます」
「なるほど、先天魔法ね」
魔法、それは魔術と同じく魔力を使う力でありながら、発動の原理の判明しない力だった。
大概その力は先天的なものであり、先天魔法とも呼ばれる。
それは魔術と同じように、いやそれよりも貴重な才能とされている。
しかしその一方で、その力を制御できず不幸な目に遭う人間も多い。
……目の前のアイラのような。
「はい、そうだと思います。……彼にそう教えてもらいました」
その彼が誰か、名前を聞くまでもなく私には理解できた。
そう、シャルル以外に存在しないと。
「なるほど、それで髪で目を隠していたのね。それは理解できたわ。では本題に入りましょうか」
未だ頭を下げたままのアイラへと、私は問いかける。
「ここは魔術師の多くいる街。いくら先天魔法があっても無事に私に会える保証なんてない。──そのリスクを背負ってまで私にあいに来た貴女の目的はなに?」
しばらく、返答はなかった。
ゆっくりと、まるで言葉を選ぶような沈黙の後、アイラは口を開く。
「貴女様の元婚約者シャルル、その対応を変えていただきたく、この場にやってきました。……彼は私に魅了された被害者です」
露わとなったアイラの顔を見つめながら、私は固まった衛兵の気持ちを理解することになった。
こんなものを見せられると、確かに見つめる以外になにもできなくなると。
私も衛兵も固まる中、アイラが衛兵へと口を開く。
「マルシア様と二人で話したいの。貴方は離れていて」
「……はい」
背後で聞こえる遠ざかる足音、それを聞きながら私はここにアイラが居続けたからくりを理解する。
こうして、アイラは私が来るのを待っていたのだろうと。
衛兵が去ったのを確認すると、アイラは改めて私の方に向き直る。
同姓でありながら、魅力的に感じてならないその顔が、私を見ている。
そのことで、私の胸が歓喜で沸き立つ。
「こ、の……!」
しかし、その衝動を何とかこらえ、私は自分の顔をアイラからそらした。
「魔術師でもない一般人が自力で……?」
そんな私に、アイラの驚いた声が響く。
しかし、そんな声さえ気にならない焦りが私の中には存在していた。
……アイラに対抗できる魔術師が来るまで、私は一人で耐え抜かねばならないのかと。
とはいえ、決して勝機がないわけではなかった。
この魅力は、何らかの魔術的な力だろう。
アイラが魔力を持った人間であることは明らかだ。
だが、みる限りアイラが正式に訓練した魔術師であるようには見えない。
つまり、扱える力はこの魅力だけの可能性がある。
そうであれば、私が持つ魔術具でどうにかなる可能性があった。
油断はできないが諦める状況ではない。
そう私は覚悟を決め……急に体にかかる圧力が消えたのはその瞬間だった。
「突然の無礼、誠に申し訳ありませんマルシア様。ですがどうか、話を切いてくださいませんでしょうか」
くぐもった懇願の言葉に、振り返った私の目に入って来たのは、その場にひざを突いて頭を下げるアイラの姿だった。
「……調子が狂うわね」
その姿に、私は脱力してしまう。
これから、強力な魔術師と戦わねばならない。
そう覚悟を決めていたからこそなおさら。
まだ警戒を解くわけにはいかない。
けれど、話ができない訳ではないと判断した私は、口を開く。
「貴女、その力は自分で発動を切り替えられるの?」
「……いえ、強引に抑えていると言った状態に近いです」
未だ頭を下げたまま、アイラは続ける。
「この力を私は魅了と呼んでます。子供の頃からの力で、目で人を見るとその人を魅了してしまいます」
「なるほど、先天魔法ね」
魔法、それは魔術と同じく魔力を使う力でありながら、発動の原理の判明しない力だった。
大概その力は先天的なものであり、先天魔法とも呼ばれる。
それは魔術と同じように、いやそれよりも貴重な才能とされている。
しかしその一方で、その力を制御できず不幸な目に遭う人間も多い。
……目の前のアイラのような。
「はい、そうだと思います。……彼にそう教えてもらいました」
その彼が誰か、名前を聞くまでもなく私には理解できた。
そう、シャルル以外に存在しないと。
「なるほど、それで髪で目を隠していたのね。それは理解できたわ。では本題に入りましょうか」
未だ頭を下げたままのアイラへと、私は問いかける。
「ここは魔術師の多くいる街。いくら先天魔法があっても無事に私に会える保証なんてない。──そのリスクを背負ってまで私にあいに来た貴女の目的はなに?」
しばらく、返答はなかった。
ゆっくりと、まるで言葉を選ぶような沈黙の後、アイラは口を開く。
「貴女様の元婚約者シャルル、その対応を変えていただきたく、この場にやってきました。……彼は私に魅了された被害者です」
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