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謎の女性 Ⅷ
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「……魔術師、なにを言っているのですか? 私にはそんなお金なんて」
困惑を隠せない様子で、アイラが告げた声。
それは、隠すことなど不可能な程に震えていた。
それも当たり前だろう。
普通、平民が魔術を学ぼうとすれば、多大な資金が必要になるのだから。
野良魔術師、なんて物がはびこるのも、きちんとした資格を得るのには様々な知識が必要となるのが原因だからだ。
それを理解した上で、私は当然のように告げる。
「あら、その魅了を一切コントロールもできなくて仕事になるとも?」
「……それは」
途端に無言になるアイラ。
しかし、すぐに何らかの決意を固めたような顔で告げる。
「私のこの力なら、色仕掛けを仕掛けることも可能です。マルシア様がお望みなら!」
「そんな物騒な手、誰が好んで使うのよ……」
その言葉に、私は呆れた様子も隠さずに告げる。
「貴女程度が考えたことなど、私が想像していないとでも?」
「……いえ、それは」
私の言葉に、萎縮したようにアイラが俯く。
内心、罪悪感が浮かぶがそれを私が表に出すことはなかった。
「私が価値を見いだしたのは、魅了以外の部分よ。先天魔法持ちの人間は強大な魔術師になる可能性がある。邪魔にしかならない能力は早くコントロールしてほしいだけ」
私の言葉に、アイラの体が硬直するのが分かる。
それがアイラの動揺を物語っていることを理解しながらも、私は続ける。
「分かったら、明日ここに来るようシャルルには伝えて頂戴。それ以降、貴女にはこの屋敷で過ごしてもらうわ」
「……はい」
絞り出すようなかすかな声でそう告げたアイラは、自ら扉を開く。
そして、今度こそ屋敷を去っていった……。
◇◆◇
「相変わらず、きつい言葉ですね」
私のそばにいた魔術師がそう口を開いたのは、アイラが去って完全に足音も聞こえなくなった時だった。
その言葉に、私は思わず顔をゆがめる。
つきあいが比較的長くなると、内心を見抜いてこようとして困ると。
「……何のことかしら?」
「私相手に、そんな雑なやり方でごまかせると思います?」
つん、とそっぽを向く私に呆れを隠さない様子で彼は告げる。
「かつて同じやり方で引き抜いた人間を相手ですよ、私は」
そう告げる彼に、私の頭にかつての記憶が蘇る。
それは、今目の前にいる魔術師、カルタナと出会ったときの記憶。
……そしてそれは、確かに先ほどのアイラと似た出会いであった。
「お、覚えてないわ」
「それなら、その口ごもり様はなんですか」
蒸し返すな、と沈黙で圧をかける私に失笑しながら、カルタナは告げる。
「私はよく覚えていますよ。──無才、そう呼ばれた私を貴女がスカウトに来た時を」
困惑を隠せない様子で、アイラが告げた声。
それは、隠すことなど不可能な程に震えていた。
それも当たり前だろう。
普通、平民が魔術を学ぼうとすれば、多大な資金が必要になるのだから。
野良魔術師、なんて物がはびこるのも、きちんとした資格を得るのには様々な知識が必要となるのが原因だからだ。
それを理解した上で、私は当然のように告げる。
「あら、その魅了を一切コントロールもできなくて仕事になるとも?」
「……それは」
途端に無言になるアイラ。
しかし、すぐに何らかの決意を固めたような顔で告げる。
「私のこの力なら、色仕掛けを仕掛けることも可能です。マルシア様がお望みなら!」
「そんな物騒な手、誰が好んで使うのよ……」
その言葉に、私は呆れた様子も隠さずに告げる。
「貴女程度が考えたことなど、私が想像していないとでも?」
「……いえ、それは」
私の言葉に、萎縮したようにアイラが俯く。
内心、罪悪感が浮かぶがそれを私が表に出すことはなかった。
「私が価値を見いだしたのは、魅了以外の部分よ。先天魔法持ちの人間は強大な魔術師になる可能性がある。邪魔にしかならない能力は早くコントロールしてほしいだけ」
私の言葉に、アイラの体が硬直するのが分かる。
それがアイラの動揺を物語っていることを理解しながらも、私は続ける。
「分かったら、明日ここに来るようシャルルには伝えて頂戴。それ以降、貴女にはこの屋敷で過ごしてもらうわ」
「……はい」
絞り出すようなかすかな声でそう告げたアイラは、自ら扉を開く。
そして、今度こそ屋敷を去っていった……。
◇◆◇
「相変わらず、きつい言葉ですね」
私のそばにいた魔術師がそう口を開いたのは、アイラが去って完全に足音も聞こえなくなった時だった。
その言葉に、私は思わず顔をゆがめる。
つきあいが比較的長くなると、内心を見抜いてこようとして困ると。
「……何のことかしら?」
「私相手に、そんな雑なやり方でごまかせると思います?」
つん、とそっぽを向く私に呆れを隠さない様子で彼は告げる。
「かつて同じやり方で引き抜いた人間を相手ですよ、私は」
そう告げる彼に、私の頭にかつての記憶が蘇る。
それは、今目の前にいる魔術師、カルタナと出会ったときの記憶。
……そしてそれは、確かに先ほどのアイラと似た出会いであった。
「お、覚えてないわ」
「それなら、その口ごもり様はなんですか」
蒸し返すな、と沈黙で圧をかける私に失笑しながら、カルタナは告げる。
「私はよく覚えていますよ。──無才、そう呼ばれた私を貴女がスカウトに来た時を」
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