裏切り者、そう呼ばれた令嬢は

影茸

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第43話

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 マーリスの部屋を後にした私は、ある人物と会うために足を進めていた。
 廊下の奥、何者かが走ってやってくるのに私が気づいたのはその時だった。
 一瞬、私はそれが誰か分からず目を細める。

 「っ!」

 だが次の瞬間、その相手がアーステルト家当主様──私が会いたいと思っていた相手であることを理解した瞬間、目を見開くこととなった。

 「サラリア嬢、この度のことアーステルト家の代表として謝罪させて頂きたい!」

 そして、そう私が混乱している間に、当主様は私へと深々と頭を下げた。
 それは、今回の件を考えれば当然の反応だろう。

 「っ!」

 しかし、それを理解しながらも頭を下げる当主様の姿に私が覚えたのは、隠しきれない罪悪感だった。
 何故なら今回の件で、一番のとばっちりを受けることになったのが彼であることを、私は理解していたのだから。

 私にとって、当主様は叔父のような存在だった。
 幼少の頃から知っている存在で、だからこそ彼はマーリスを止めようとしていただろうことも理解出来ている。

 「……いえ、謝罪するべきはこちらです」

 それを理解できているからこそ、私は気づけばそう頭を下げていた。
 最早、家族といってもいい存在だったからこそ、絶対に彼は許してくれない。
 そう理解しながらも、私は謝罪の言葉を重ねる。

 「……本当に、申し訳ありません。これで、アーステルト家はかなり辛い道を歩むことになるでしょう。全て、私の責任で」

 そう言葉を重ねながらようやく私は気づいていた。
 最初、屋敷の中に入った時に抱いた胸の痛み。
 それは、当主様に対する罪悪感だったのだろうと。

「当家は、いえ、私は、これからアーステルト家に援助を申し出さて頂くつもりです。けれど、それもアーステルト家の領民を満足に食べさせられるほどでは……」

 その罪悪感に唇を歪みながら、私はアーステルト家当主様に告げようと考えていた本題を口にする。
 何とか、これでアーステルト家が没落することだけは無いようにと願い、どの顔をしてと怒鳴られることを覚悟でそう告げる。

 「いえ、そんなものいりませんよ」

 「………え?」

 けれど、怒鳴られるのを覚悟していた私に帰ってきたのは、柔らかい慰めるような言葉だった。
 その言葉が信じられず、呆然とする私に当主様は再度頭を下げて口を開いた。

 「そして感謝の言葉を。サラリア嬢、私に新しい機会を与えてくれたこと、感謝いたします」


 ◇◇◇

 更新遅れてしまい申し訳ありません……想像以上に昨日バタバタしておりました。

 そしてこれは、私の作品である「パーティー追放された治癒師、実は最強につき」と読まれている方用の、一応の報告です。(読まれていない方は無視で大丈夫です)

 「パーティー追放された治癒師」は、この度書籍化したためアルファポリスから取り下げさせて頂きました。一日連絡だけして急に下げてしまったため、一応ここでもご報告させて頂きます。
 なろうでは連載中なので、近況報告にURL置いております!いつのまにか消えていた、という方はそこから是非。
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