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第46話
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「……何で、今こんな無駄な時間を」
とうとうやってきた王族主催のパーティー。
その会場に足を踏みいれながら、私は思わずそんな言葉を漏らしていた。
その顔に浮かぶのは、隠し切ることのできない焦燥と不安。
そう、未だ私はあの男性を見つけることが出来ていなかった。
このパーティーの招待状を貰ってから、この日が来るまでの二日間の期間があったにも関わらず。
……ここまで来れば、最早私はあの男性の安全を無条件に信じることなど出来なかった。
それを理解してから、私は出来る限りの手段を用いて男性の行方を調べまわった。
にも関わらず、唯一得られた手かがりは一つだけ。
それも、酷く疲れた表情をしたマーリスの時間が経てば分かる、というまるで参考にならないもの。
男性の消息さえ不明な今、正直私はこのパーティーに出たくはなかった。
いや、王族主催でさえ無ければ、私はなんらかの理由をつけてこのパーティーの出席を断っていただろう。
「くっ!」
そう考えて、私は強く唇を噛みしめる。
こんなことになるならば、《仮面の淑女》をあの場で明らかにするのではなかったと。
「おお、サラリア嬢!お久しぶりです!私です!アーマルドです!」
次の瞬間、自分へとかけられた声に、自分には後悔している時間さえないことを私は理解する。
顔を上げると、そこにいたのはまるで見覚えもない中年の貴族。
彼との面識は、一度どこかのパーティー会場ですれ違った程度のものだろう。
「いやはや、こうしてまたお会い出来るのも運命でしょうなあ。私としては、こうして貴方と会える運命を定めてくださった創造神様へ、感謝の念が絶えません」
しかし、そんなことを気にすることもなくその貴族はまるで私と知己であるように振る舞い、こちらの距離を詰めてくる。
……全ては《仮面の淑女》の代表である私に顔を覚えさせるために。
そんな考えを抱いているのは、その彼だけではない。
「これはこれはサラリア嬢。お初にお目にかかります」
さまざまな貴族達が、私と縁を持とうと押し寄せてくる。
その光景を前に、私は顔を引攣らないようにするのが精一杯だった。
もちろん私は、《仮面の淑女》であることを明かせば、こんな事態になることを覚悟していた。
けれど、覚悟をしていたところでめんどくさいことは変わらない。
「どうか、この私めと一曲」
だからといって、めんどくさがったところでこの事態が変わるわけではない。
そう理解している私は、私を自家に取り込もうとギラギラとした目で迫ってくる貴族達の誘いを断るべく口を開こうとして──若い男性らしき声が響いたのは、その時だった。
「すまない。サラリア嬢とのダンスは私が先約でな」
とうとうやってきた王族主催のパーティー。
その会場に足を踏みいれながら、私は思わずそんな言葉を漏らしていた。
その顔に浮かぶのは、隠し切ることのできない焦燥と不安。
そう、未だ私はあの男性を見つけることが出来ていなかった。
このパーティーの招待状を貰ってから、この日が来るまでの二日間の期間があったにも関わらず。
……ここまで来れば、最早私はあの男性の安全を無条件に信じることなど出来なかった。
それを理解してから、私は出来る限りの手段を用いて男性の行方を調べまわった。
にも関わらず、唯一得られた手かがりは一つだけ。
それも、酷く疲れた表情をしたマーリスの時間が経てば分かる、というまるで参考にならないもの。
男性の消息さえ不明な今、正直私はこのパーティーに出たくはなかった。
いや、王族主催でさえ無ければ、私はなんらかの理由をつけてこのパーティーの出席を断っていただろう。
「くっ!」
そう考えて、私は強く唇を噛みしめる。
こんなことになるならば、《仮面の淑女》をあの場で明らかにするのではなかったと。
「おお、サラリア嬢!お久しぶりです!私です!アーマルドです!」
次の瞬間、自分へとかけられた声に、自分には後悔している時間さえないことを私は理解する。
顔を上げると、そこにいたのはまるで見覚えもない中年の貴族。
彼との面識は、一度どこかのパーティー会場ですれ違った程度のものだろう。
「いやはや、こうしてまたお会い出来るのも運命でしょうなあ。私としては、こうして貴方と会える運命を定めてくださった創造神様へ、感謝の念が絶えません」
しかし、そんなことを気にすることもなくその貴族はまるで私と知己であるように振る舞い、こちらの距離を詰めてくる。
……全ては《仮面の淑女》の代表である私に顔を覚えさせるために。
そんな考えを抱いているのは、その彼だけではない。
「これはこれはサラリア嬢。お初にお目にかかります」
さまざまな貴族達が、私と縁を持とうと押し寄せてくる。
その光景を前に、私は顔を引攣らないようにするのが精一杯だった。
もちろん私は、《仮面の淑女》であることを明かせば、こんな事態になることを覚悟していた。
けれど、覚悟をしていたところでめんどくさいことは変わらない。
「どうか、この私めと一曲」
だからといって、めんどくさがったところでこの事態が変わるわけではない。
そう理解している私は、私を自家に取り込もうとギラギラとした目で迫ってくる貴族達の誘いを断るべく口を開こうとして──若い男性らしき声が響いたのは、その時だった。
「すまない。サラリア嬢とのダンスは私が先約でな」
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