16 / 24
ようやくの理解
しおりを挟む
その瞬間、私がその場で気を失わなかったのは奇跡に近かった。
……聖獣とは、王国内においてそれだけの存在なのだ。
そしてそんな存在が、私に対して怒りを露わにしている。
それは王国にすむ人間にとって考え得る限り最悪な状況で、そんな状況に私がいるなど知られる訳にはいかない。
その焦りのままに、私は口を開く。
「ち、違うのです! マレシアが偽聖女であることも私は知ら……」
「……この上、さらに我を怒らす気なのか?」
けれど、その私の言葉はさらに聖獣の怒りに油を注ぐだけだった。
このままでは私は殺されるのではないか、そんな想像に私の背中を悪寒が走る。
それでも、私は必死に言い募る。
「待ってください、長年聖獣の寵愛を受けてきた王族である私と、偽聖女であるマレシア、どっちを信用……」
「長年の、寵愛?」
聖獣の身にまとう空気がはっきりと変わったのは、その瞬間だった。
「寵愛? そんなものを我がこの国の王族に持っていると思っていたのか? 我を利用して成り上がった男の一族に?」
「は?」
「は、このことも知らないのか。お前の一族が聖獣の血を引いているというのはただのでたらめだ」
「……っ!」
その信じられない情報に、私はただ呆然と立ち尽くす。
聖獣のいった言葉は、今まで王族に信じられていた言葉を覆すものだった。
これを知られれば、王族は一気に力を失うだろう、それほどのものだ。
故に呆然と立ち尽くすことになった私を、聖獣はあざ笑う。
「本当に何も知らない凡人か。まあ、だからマレシアを誘拐するなどと言う恐れ知らずで、恩知らずなことをできただろうがな」
「……それは、どういう」
「何で我の言葉を勝手に告げる人間を見逃してやったと思う? 誰が、我にそのことを頼み込んだと思う?」
その問いかけに、私は一瞬言葉を失う。
もちろん、そんな話しを私は本人から聞いたことはない。
ただ、一体誰がそんなことをしたのか……いや、できたのか想像はついていた。
「マレ、シア?」
「正解だ。これくらいは想像できたか」
かすれた声でそう答えた私に、聖獣はそう告げて。
次の瞬間、殺意を露わにした。
「そして理解できたな? お前はその恩人の恩に仇を持って返し──我の慈悲に泥を浴びせたことを」
その瞬間、ようやく私は自分がやってはならない禁忌を犯したことを理解した。
……即ち、自分は聖獣の逆鱗に触れたことを。
……聖獣とは、王国内においてそれだけの存在なのだ。
そしてそんな存在が、私に対して怒りを露わにしている。
それは王国にすむ人間にとって考え得る限り最悪な状況で、そんな状況に私がいるなど知られる訳にはいかない。
その焦りのままに、私は口を開く。
「ち、違うのです! マレシアが偽聖女であることも私は知ら……」
「……この上、さらに我を怒らす気なのか?」
けれど、その私の言葉はさらに聖獣の怒りに油を注ぐだけだった。
このままでは私は殺されるのではないか、そんな想像に私の背中を悪寒が走る。
それでも、私は必死に言い募る。
「待ってください、長年聖獣の寵愛を受けてきた王族である私と、偽聖女であるマレシア、どっちを信用……」
「長年の、寵愛?」
聖獣の身にまとう空気がはっきりと変わったのは、その瞬間だった。
「寵愛? そんなものを我がこの国の王族に持っていると思っていたのか? 我を利用して成り上がった男の一族に?」
「は?」
「は、このことも知らないのか。お前の一族が聖獣の血を引いているというのはただのでたらめだ」
「……っ!」
その信じられない情報に、私はただ呆然と立ち尽くす。
聖獣のいった言葉は、今まで王族に信じられていた言葉を覆すものだった。
これを知られれば、王族は一気に力を失うだろう、それほどのものだ。
故に呆然と立ち尽くすことになった私を、聖獣はあざ笑う。
「本当に何も知らない凡人か。まあ、だからマレシアを誘拐するなどと言う恐れ知らずで、恩知らずなことをできただろうがな」
「……それは、どういう」
「何で我の言葉を勝手に告げる人間を見逃してやったと思う? 誰が、我にそのことを頼み込んだと思う?」
その問いかけに、私は一瞬言葉を失う。
もちろん、そんな話しを私は本人から聞いたことはない。
ただ、一体誰がそんなことをしたのか……いや、できたのか想像はついていた。
「マレ、シア?」
「正解だ。これくらいは想像できたか」
かすれた声でそう答えた私に、聖獣はそう告げて。
次の瞬間、殺意を露わにした。
「そして理解できたな? お前はその恩人の恩に仇を持って返し──我の慈悲に泥を浴びせたことを」
その瞬間、ようやく私は自分がやってはならない禁忌を犯したことを理解した。
……即ち、自分は聖獣の逆鱗に触れたことを。
298
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
婚約破棄をされ、谷に落ちた女は聖獣の血を引く
基本二度寝
恋愛
「不憫に思って平民のお前を召し上げてやったのにな!」
王太子は女を突き飛ばした。
「その恩も忘れて、お前は何をした!」
突き飛ばされた女を、王太子の護衛の男が走り寄り支える。
その姿に王太子は更に苛立った。
「貴様との婚約は破棄する!私に魅了の力を使って城に召し上げさせたこと、私と婚約させたこと、貴様の好き勝手になどさせるか!」
「ソル…?」
「平民がっ馴れ馴れしく私の愛称を呼ぶなっ!」
王太子の怒声にはらはらと女は涙をこぼした。
魅了から覚めた王太子は婚約者に婚約破棄を突きつける
基本二度寝
恋愛
聖女の力を体現させた男爵令嬢は、国への報告のため、教会の神官と共に王太子殿下と面会した。
「王太子殿下。お初にお目にかかります」
聖女の肩書を得た男爵令嬢には、対面した王太子が魅了魔法にかかっていることを瞬時に見抜いた。
「魅了だって?王族が…?ありえないよ」
男爵令嬢の言葉に取り合わない王太子の目を覚まさせようと、聖魔法で魅了魔法の解術を試みた。
聖女の魔法は正しく行使され、王太子の顔はみるみる怒りの様相に変わっていく。
王太子は婚約者の公爵令嬢を愛していた。
その愛情が、波々注いだカップをひっくり返したように急に空っぽになった。
いや、愛情が消えたというよりも、憎悪が生まれた。
「あの女…っ王族に魅了魔法を!」
「魅了は解けましたか?」
「ああ。感謝する」
王太子はすぐに行動にうつした。
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
契約破棄された聖女は帰りますけど
基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」
「…かしこまりました」
王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。
では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。
「…何故理由を聞かない」
※短編(勢い)
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。
嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる