偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸

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ようやくの理解

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 その瞬間、私がその場で気を失わなかったのは奇跡に近かった。
 ……聖獣とは、王国内においてそれだけの存在なのだ。
 そしてそんな存在が、私に対して怒りを露わにしている。
 それは王国にすむ人間にとって考え得る限り最悪な状況で、そんな状況に私がいるなど知られる訳にはいかない。
 その焦りのままに、私は口を開く。

「ち、違うのです! マレシアが偽聖女であることも私は知ら……」

「……この上、さらに我を怒らす気なのか?」

 けれど、その私の言葉はさらに聖獣の怒りに油を注ぐだけだった。
 このままでは私は殺されるのではないか、そんな想像に私の背中を悪寒が走る。
 それでも、私は必死に言い募る。

「待ってください、長年聖獣の寵愛を受けてきた王族である私と、偽聖女であるマレシア、どっちを信用……」

「長年の、寵愛?」

 聖獣の身にまとう空気がはっきりと変わったのは、その瞬間だった。

「寵愛? そんなものを我がこの国の王族に持っていると思っていたのか? 我を利用して成り上がった男の一族に?」

「は?」

「は、このことも知らないのか。お前の一族が聖獣の血を引いているというのはただのでたらめだ」

「……っ!」

 その信じられない情報に、私はただ呆然と立ち尽くす。
 聖獣のいった言葉は、今まで王族に信じられていた言葉を覆すものだった。
 これを知られれば、王族は一気に力を失うだろう、それほどのものだ。
 故に呆然と立ち尽くすことになった私を、聖獣はあざ笑う。

「本当に何も知らない凡人か。まあ、だからマレシアを誘拐するなどと言う恐れ知らずで、恩知らずなことをできただろうがな」

「……それは、どういう」

「何で我の言葉を勝手に告げる人間を見逃してやったと思う? 誰が、我にそのことを頼み込んだと思う?」

 その問いかけに、私は一瞬言葉を失う。
 もちろん、そんな話しを私は本人から聞いたことはない。
 ただ、一体誰がそんなことをしたのか……いや、できたのか想像はついていた。

「マレ、シア?」

「正解だ。これくらいは想像できたか」

 かすれた声でそう答えた私に、聖獣はそう告げて。

 次の瞬間、殺意を露わにした。

「そして理解できたな? お前はその恩人の恩に仇を持って返し──我の慈悲に泥を浴びせたことを」

 その瞬間、ようやく私は自分がやってはならない禁忌を犯したことを理解した。

 ……即ち、自分は聖獣の逆鱗に触れたことを。
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