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第30話 違和感
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アルフォートの突然の婚約者宣言。
それに私は驚きを隠すことができなかった。
決してアルフォートが好みじゃないとか、嫌という訳ではないが、アルフォートに対して私は今までそんなことを考えたことが無かったのだから。
……けれども、その一方で私の頭にはとある記憶が浮かんでいた。
私はこの場所にくることは、竜神の生贄、つまり物理的に食べられるのだと思い込んでいた。
だが、私は王家がなんといって生贄を求めていたかを思い出す。
即ち、竜神の花嫁を求めるとそういってはいなかっただろうか?
「あ、あ、ああ!」
そしてその瞬間私は全てを悟った。
つまり、竜神の生贄などというのは全て私達、貴族の被害妄想でしかないことを。
本当に王家は花嫁を、そうアルフォートの婚約者を求めていたということを。
「ーーーっ!」
つまり、アルフォートの言葉は別に冗談でも何でもないのだ。
そのことを悟った瞬間、私の頬は真っ赤に染まった。
◇◆◇
アルフォートの言葉が真実であると悟った瞬間私は気恥ずかしさでアルフォートの顔を見ることが出来なくなっていた。
どうしようもなく恥ずかしくて、けれどもなぜかその感覚は嫌なものではなかった。
「あう……」
……そしてその摩訶不思議な感覚に私は戸惑いを隠すことが出来なかった。
確かにアルフォートは見るからに綺麗な人だし、そして何より酷く優しい人だ。
だから、アルフォートと婚約者になることに対して喜びを感じてもおかしくないかもしれない。
けれども私は自分がそんなことで喜びを感じるとは思えなかった。
それは決してアルフォートの魅力がないとか、そんな理由ではない。
その理由は婚約者に裏切られたあの時の感覚が私に恋愛に関することについて恐怖があるからだった。
裏切られたあの時から私は自分でも明らかに感じられるほど婚姻に関しては苦手に感じていた。
「えっと、その……」
ーーー なのに、アルフォートの婚約者と言う言葉を聞いた瞬間私の胸に浮かんだのは溢れんばかりの歓喜だった。
何故そんな感情を感じているのか私は自身のことでありながら分からなかった。
けれどもそんな私をその歓喜から生まれた衝動が突き動かす。
アルフォートの言葉を了承しようとする、そんな衝動が私の口から溢れそうになるのだ。
これが一時の衝動であろうことを私は理解していた。
何故なら今まで私は本当に恋愛に関して苦手意識を持っていたのだ。
なのにこんな風な気持ちにすぐなるなんて、明らかにおかしいのだから。
「わ、私……」
けれども、何故かアルフォートの言葉を了承しようとするそんな衝動を私は耐えられなくて……
「すまない、急なことだったな」
「……え」
……けれども、その衝動が溢れ出すその直前にアルフォート自身が口を開いた。
それは全く想像していなかったことで私は思わず呆気に取られてしまう。
「私はこう思っているそのことだけは頭に入れておいてくれると嬉しい」
けれども、何故かそんな私の様子にアルフォートは焦ったような表情を浮かべて、あっさりと部屋を後にしてしまった。
「え、ええ……」
そして最後、私だけが部屋に残されることとなった……
溢れる衝動を堪えることができた、それは本来なら私の目論見通りの結果だった。
……けれどもなぜか私はどうしようもなく叫びたい気分になって、気づけば枕に口を当てて大声で叫んでいた。
「ゔわぁぁぁぁぁぁぁあ!なんれ!あのたいみんふでどっかいちゃうのよ!」
……後に、この叫びをアルフォートが聞いていたと知って私が赤面することになることをこの時の私は知る由もなかった。
それに私は驚きを隠すことができなかった。
決してアルフォートが好みじゃないとか、嫌という訳ではないが、アルフォートに対して私は今までそんなことを考えたことが無かったのだから。
……けれども、その一方で私の頭にはとある記憶が浮かんでいた。
私はこの場所にくることは、竜神の生贄、つまり物理的に食べられるのだと思い込んでいた。
だが、私は王家がなんといって生贄を求めていたかを思い出す。
即ち、竜神の花嫁を求めるとそういってはいなかっただろうか?
「あ、あ、ああ!」
そしてその瞬間私は全てを悟った。
つまり、竜神の生贄などというのは全て私達、貴族の被害妄想でしかないことを。
本当に王家は花嫁を、そうアルフォートの婚約者を求めていたということを。
「ーーーっ!」
つまり、アルフォートの言葉は別に冗談でも何でもないのだ。
そのことを悟った瞬間、私の頬は真っ赤に染まった。
◇◆◇
アルフォートの言葉が真実であると悟った瞬間私は気恥ずかしさでアルフォートの顔を見ることが出来なくなっていた。
どうしようもなく恥ずかしくて、けれどもなぜかその感覚は嫌なものではなかった。
「あう……」
……そしてその摩訶不思議な感覚に私は戸惑いを隠すことが出来なかった。
確かにアルフォートは見るからに綺麗な人だし、そして何より酷く優しい人だ。
だから、アルフォートと婚約者になることに対して喜びを感じてもおかしくないかもしれない。
けれども私は自分がそんなことで喜びを感じるとは思えなかった。
それは決してアルフォートの魅力がないとか、そんな理由ではない。
その理由は婚約者に裏切られたあの時の感覚が私に恋愛に関することについて恐怖があるからだった。
裏切られたあの時から私は自分でも明らかに感じられるほど婚姻に関しては苦手に感じていた。
「えっと、その……」
ーーー なのに、アルフォートの婚約者と言う言葉を聞いた瞬間私の胸に浮かんだのは溢れんばかりの歓喜だった。
何故そんな感情を感じているのか私は自身のことでありながら分からなかった。
けれどもそんな私をその歓喜から生まれた衝動が突き動かす。
アルフォートの言葉を了承しようとする、そんな衝動が私の口から溢れそうになるのだ。
これが一時の衝動であろうことを私は理解していた。
何故なら今まで私は本当に恋愛に関して苦手意識を持っていたのだ。
なのにこんな風な気持ちにすぐなるなんて、明らかにおかしいのだから。
「わ、私……」
けれども、何故かアルフォートの言葉を了承しようとするそんな衝動を私は耐えられなくて……
「すまない、急なことだったな」
「……え」
……けれども、その衝動が溢れ出すその直前にアルフォート自身が口を開いた。
それは全く想像していなかったことで私は思わず呆気に取られてしまう。
「私はこう思っているそのことだけは頭に入れておいてくれると嬉しい」
けれども、何故かそんな私の様子にアルフォートは焦ったような表情を浮かべて、あっさりと部屋を後にしてしまった。
「え、ええ……」
そして最後、私だけが部屋に残されることとなった……
溢れる衝動を堪えることができた、それは本来なら私の目論見通りの結果だった。
……けれどもなぜか私はどうしようもなく叫びたい気分になって、気づけば枕に口を当てて大声で叫んでいた。
「ゔわぁぁぁぁぁぁぁあ!なんれ!あのたいみんふでどっかいちゃうのよ!」
……後に、この叫びをアルフォートが聞いていたと知って私が赤面することになることをこの時の私は知る由もなかった。
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