籠の雛鳥〜高雛零梛は世の中を知らない〜

缶ジュース

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鳩代弥衣は天使に出会う4

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「彼女は台風の中それを実行することで後を追わせないようにする予定だった。しかし、上手くはいかなかった。彩美は2人の子どもを預けたから」

 高雛彩美はあの日零梛くんと稜梛ちゃんを預けた。


「計画には稜梛ちゃんは不要であったから彼女は困って置いていくことにしたんだろう。近くで休んでいた私の元へ稜梛が来て言うんだ。「弟が攫われた」とね」
「でもそれだと報道と食い違うところが、血を流したマネージャーの隣で彼女は泣いていた筈です」
「ここからは私も驚いたよ」

「ホテルを出たところでマネージャーに追いついて私は彼女を取り押さえたんだ」
「鷲倉先生一人で行かれたんですか?」
「あぁ、稜梛が「貴女以外に恩は売れない」はっきりとそう言って私一人で向かうことを執拗に強調したんだ」
「5歳の女の子が…ですか?」
「あぁ、ここからまだ続くんだ」

「取り押さえた彼女から稜梛は零梛を奪い取って少し離れたところに座らせてこちらに戻ってきたんだ。すると彼女は一切表情を変えず彼女の持てるほどの石で頭を殴ろうとしたんだ」

「え、」

 私は絶句した。5歳の少女にそんな発想ご果たしてあるのだろうかにわかに信じがたいが、聞き進める他ない。

「結果は運良く気絶だけしてくれたよ。殺してしまっていたらどうしようかと思った。そして稜梛は私に言うんだ。「この石と弟を隠してくれませんか?」」

「私の返事を待たずに続けて言うんだ。「私はここで泣いたフリでもして架空の犯人像を適当に話しますから、弟を全てから守ってください。母じゃだめです。あと、皆さんをなんとかこの辺りまで連れてきてもらえませんか?」」

 事件の様子の裏と確かに辻褄が合っている。実際、稜梛ちゃんの証言は重要視されて操作は進められている。

「言い終わると彼女はマネージャーを引きずったり、泥をつけたりして抵抗した様子を演出する作業を始めたんだ。私は彼女に言われた通り零梛を自分の車に隠していると都合よく稜梛のいる玄関の方に雷が落ちたらしく轟音が鳴って物陰から二人の元に人が来ているのを確認してから雨の中から無理矢理にでも逃亡したの」

 実際に鷲倉小夜は台風が酷くなる前に帰ったとされている。
 事件の裏側は稜梛ちゃんが操っていたとは信じられないが、この鷲倉小夜と天使様もとい零梛くんの関係は良好と思われるし、姿をくらませることで面倒な注目を有耶無耶にできている。婚姻や精液の話は彼が居ないのに成立するはずもなく、彼の捜索、発見に目的がにすり替わった。

「一旦信じることにします。しかし、私が過激派だとしたらどうするつもりだったんですか?あなたを殺してでも彼を連れ去ることもできるのですよ?」
「関係ないさ。彼を前にした大抵の雌は絆されるに決まっているからね」
「…すごい自信ですね。否定はしないですけど」
「あの子は男性特有の嫌悪感のようなものを与えない。特に彼個人を見てくれたらより強くわかるはず」

 女性だからと無視されることも、嫌がられることも傲慢に振る舞われることも、金銭を要求されることも、暴力に訴えかけられることもない。

 それどころか抱きしめてくれたり、お世話してくれたり、他の男なんて見られなくなるくらい彼は優しくてかっこいいしかわいい。

「短い時間ですけどわかります」

 ガチャと扉が開き、何かが入ってくる。

「お風呂いただきましたぁ~」

 零梛くんの声がする。
(あれ鼻血が…)
 零梛くんは犬の着ぐるみパジャマを着て入ってきた。腕を捲っているので白い綺麗な腕が露わになっている。

 視線をグッと鷲倉小夜の方へ向ける。すると彼女は笑顔で言った。

「あれは私の趣味だ!」

(お姉様!ついていきます!!!!)




 それから私は零梛くんが作ったご飯を食べさせてもらった。美味しい。男性の手料理なんて初めて…鷲倉小夜は毎日こんな生活を…!?嫉妬という感情も湧かず只々羨ましい。
 
 そして、目の前の尊い光景や、今私のいる状況は犯罪の上に成り立つっているのだと思うと、もし彼が高雛零梛ではなかったなら、鷲倉小夜の息子であったのならそんなことを思ってしまう。二人に対して失礼な話だ。

 そんなことを思ってしまう私だからこそ二人のことを口外できるはずもなかった。

 

 その日は泊めてもらい翌日には天気も良くなっていて昼頃には帰れそうな状態だった。今日が休みで助かった。

 とても惜しいが帰る用意を整えて二人に礼を言って帰る。

 鷲倉小夜は私に言った。「また来てくれ」と、彼女は最後まで「誰にも言うな」とは言わなかった。彼女は彼女なりに思うところがあるのだろう。

 事件の真相が本当だったとしても嘘だったとしても、高雛零梛は幸せに健全に育っているという事実が私の中では大切で気に入った。だから私は「はい!また来ます!」と返した。

「彼女にはしてやらないのか?」
「あれは、先生だからやったんですよ」
「でも彼女にはまた来てほしいんだろ?ただいまのためのいってきますをしなければ戻ってきてはくれないかもしれないぞ?」
「確かにそれは嫌ですね」

 そういうと零梛くんは私の方へ寄る。彼は私をちょいちょいと手招きして頭を下げさせる。すると彼は「いってらっしゃい」と私の額にキスをした。

(!!!!!!????!??!!?!)

「いってらっしゃいの時にはこうするんです。お姉さんは僕の鼻先にキスしてください。ちなみにただいまの時には両頬にしあうんですよ」

 これは鷲倉小夜のデビュー作のカップルのワンシーンだ。世の中の読者が憧れたラブシーンの一つをこの子はあっさりと…真っ赤になった顔を彼に向けて鼻先にキスをする。

「お、お邪魔しました!いってきます!!」


 そこからの記憶はない。ただ幸福感と高揚で絶対また来ようと思った。
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