籠の雛鳥〜高雛零梛は世の中を知らない〜

缶ジュース

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予兆

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 心地の良い朝日に僕は目を覚ます。顔を洗って歯を磨く着ぐるみパジャマから着替える。着ぐるみパジャマは先生の趣味だから先生の満足するまで来てあげようと思う。

 キッチンに向かい朝食を作りコーヒーを入れる。昨日から弥衣さんが泊まっているから紅茶も淹れる。先生と僕はコーヒー派だけど弥衣さんは紅茶がお好きなようで、よく来てくれるのでうちにも良い紅茶が置かれるようになった。

「おはようございます」

 弥衣さんが寝室から出てきた。僕の人生で関わったことのある数少ない人間だ。弥衣さんは優しくて記者をしている。3年ほど前大雨の日にここを訪ねて来た日から忙しいはずなのに定期的に足を運んでくれる。

「おはよう!私の天使様!」

 弥衣さんはこんな調子で僕のことを天使と呼ぶ。なんだか天の使いなんて大袈裟で恥ずかしいと思っていたけど慣れてしまった。

「天使様?怖い夢見たのぉ、ぎゅーってして?」
「そうなんですね。いいですよ」

 そう言い終わるより先に弥衣さんは僕に抱きついて来ていた。そしてそっと抱き締めると頬ずりされて恥ずかしい気持ちになった。

「もういつの間にか背も私より高くなっちゃうし、筋肉もついてなんてえっちな……相変わらずいい匂い…」
「ええと…」

 僕の身長は173cmになったところだった。弥衣さんは164、先生は168らしい。

 そんなことよりも弥衣さんとの密着や胸が当たって身体が火照る。そんな風に思ってはいけないのに!でも喜んでもらえるし、僕もハグ好きだからなんだか離したくないな…

「君はいつからそんなスケベになってしまったんだ?」
「せ、先生!?違うんです!!」
「え~?もしかして天使様発情してるんですか~?」
「うぅ、」

 二人して僕をいじめてくる。もとはと言えば先生が書斎に官能小説を置いていたのが悪い。思春期真っ只中の僕の刺激には十分すぎたんだ。

「ここは責任持ってお姉さんが天使様を~」
「いいですから!」
「きゃっ」

 弥衣さんをもっと強く抱きしめた。

「恥ずかしいからそんな風にいじめないでください…我慢できなくなったら…どうするんですか…」
「か、かわいいいいいいいいぃ。いいよぉ!!お姉さんはうぇるかむー!!!」
「せ、先生!どうすれば!」
「半分くらい君が悪い!ただし弥衣よ。恋仲になってからの方が零梛は喜ぶと思うぞ」

 先生まで何を言って…お二人とも敬愛してますけど。恩人でそんな、性的に見ちゃいけないんだもん!

「冗談はさておき朝食を食べよう。冷めてしまう」
「はーい」
「ふぅ…用意しますね」


 一人の時は家事と勉強と読書くらいしか出来ないから二人が居てくれる時間はとても幸せなんだ。

 今日は先生と弥衣さんプールで泳いだり、たくさん話したりした。伸びてきていた髪の毛を先生が整えてくれて、本当に幸せだなと思う。僕は二人にもらってばかりで何もできない。本当にだめだなぁ、大人になんてまだまだなれなさそうだ。

「なぁ、君は外に出たら何がしたい?」
「唐突ですね。分かりません。何も知りませんので、それに先生がいて、弥衣さんが訪ねて来てくれる今が僕は好きです。これ以上の望みはないです」

 弥衣さんが泣いているが僕にはなぜ泣いているのかわからない。先生は眉ひとつ動かさずため息をつく。

「その言葉は嬉しいが欲はないのか?」
「世界なら本で広がります。知識も得られますし、ここには楽器やプールもあって退屈もしません」

 先生がこんなこと言うのは…なんでだ…

「その、先生は僕に出て行って欲しいんですか…?何から何まで甘えてしまっていますし…」
「え、?」

 先生が戸惑ったような様子を見せるのは初めてだ。

「僕にとってこの家の扉の向こうは存在しないに等しいんです。先生が好きで先生との日々に満足することはいけないことですか?先生は僕を拒絶するんですか?」
「君は狡いね私が君を手放したいと願っているわけがないのをわかって弱みに漬け込むんだ」
「はい。愛されるものの特権ですから」

 そう言って先生に抱擁を求める。しかし、先生は僕が求めていることをわかって無視をする。

「私は君の親じゃない。君を名前で呼ばないのも私にはその権利がないからだ」
「知ってますよそんなこと。僕と先生に血の繋がりは感じません」

 先生は美しい黒髪の女性で僕はプラチナブロンドの髪目の色も先生は黒曜石のような瞳をしているのに僕は灰色の目をしている。遺伝子という範疇を超えている。

 名前についてもそうだ。呼び方ではない。先生が僕を呼んでいる事実だけが大切なんだ。血の繋がりとか権利とかそんなつまらない話はいらない。

「先生が…小夜さんが呼んでくれるならどんな呼び方でも僕はかまいません。今も僕が先生と呼ぼうと小夜さんと呼ぼうと先生は僕の目を見てくれる。僕らの間にはそれで十分ではないですか?」
「うまく言いくるめられないな。言葉は作家の専売特許のはずなんだがな」
「相手が悪かったですね。言葉はその人から学んだんです」

 先生は「そうだったな」と笑って僕を抱きしめた。


 弥衣さんは帰って、僕と先生だけの時間が訪れる。先程のやりとりで僕には先生が僕を外に出そうと、先生の元から離れさせようとしているように感じて先生の言葉を聞くのが怖かった。
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