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朝
しおりを挟む「長い。それなのに弥衣はまだ処女なの?」
「残念ながら」
「いいんです!一時の感情で流されなくてよかったでしょ?」
「ディープキスはしたくせに」
「おっ?キスは搾精に関係ないよな~」
「勘弁してください…昂って好きな人にキスしちゃったんです。許してください」
「「かわいい」な君は」
二人にいじられてたあと弥衣さんは仕事へ戻っていった。忙しいのに来てくれていたのか。検査結果は明日全て揃うらしいのでそれまではゆっくり休むことになった。
何気に疲れが溜まっていたようで時間も早いうちに眠った。
目が覚めるとまだ日が昇り始めたほどの時間だった。僕の病室は僕だけで誰もいない。
あの家以外の場所で目覚めるなんて考えたこともなかった。窓から外を覗くと沢山の建物が見える。わくわくもしないし、面白くもない。窓を開ければ心地の良い風が吹き、季節の流れを感じることさえできない無機質な様子に僕はあの家が恋しくなっていた。
ここは男性病棟の男性用の部屋らしい。部屋にはテレビやソファ、ユニットバス、ポットなど物が充実していた。
朝の習慣のようにコーヒーを淹れる。朝食を作れないのは仕方がないけれど諦めるしかない。
椅子に腰をかけて外を見ながらコーヒーを飲む。なんとなくテレビをつけてみる。使い方は教えてもらっている。
テレビでは美術品を解説するような番組をやっていた。先生にこれも教えてもらったなと思いながらコーヒーを一杯目最後の一口を煽る。
特にやることもなくて部屋を出る。部屋を出てはいけないなんて事言われていない。スリッパを履いて人を探して歩いてみる。
結局見つからないまま一階へ降りることにした。えれべーたーというものがあるが一人で乗るのは初めてだ。乗り込んで数字のボタンを押す。便利なものだな。
一階へ到着すると受付の奥で看護師さん達が仕事をしている。きっと声はかけない方がいいのだろう。外に目を向けると芝生が敷かれている。
黙って外へ出ると舗装された道と芝生、丸く椅子に囲まれた木などがあった。その辺りを歩き回りながらベンチに腰をかける。
僕は今までこんな見慣れた草木でさえもガラス越しで触れることもほとんどなかったなと思う。
ぼうっとしていると建物から朝日さんが出てくる。
「おはようございます」
「おはよう。早いねぇ」
「日課でしたから、それくらいしか役に立てなかったので」
「姉さんは朝弱めだから」
「そうなんですよ!でも時々すごい早い時もあって!」
「ふふっ、楽しそうな顔をしている」
僕が話せることなんて先生の話題くらいなものだから朝日さんとの会話は自分の話したいことがスルスルと出てきて楽しい。
「少しコーヒーの匂いがするがコーヒーを飲むのか?」
「はい、先生が毎朝飲まれるので」
「ほ~、姉さん実家にいた時は苦いもの苦手だったはずなんだけどね」
確かに僕が淹れるようになってから飲み始めたような気がする。
そして察する。先生が最初に教えてくれたのがコーヒーだった、湯を沸かしてそのお湯を挽いてあるコーヒー豆にかけるというところから教えてもらった。
何か手伝いをしたくてわがままを言ってやらせてもらったのを覚えている。きっと先生は簡単で比較的安全にできるものから僕に教えてくれていたんだ。先生が苦いものが苦手とも知らないで嬉しそうに僕がコーヒーを先生に渡すから飲んでくれていたんだな。
「きっと僕を喜ばせようとしたんですよね…」
涙が溢れる。先生のことを知れば知るほど僕を大切にしてくれていたことが伝わってきて、先生の側に居られないことと、先生が犯罪者として扱われてしまっていることが辛くて涙が止まらない。
「姉さんは君を深く愛していたんだな」
「はい…」
「余談だけど。姉さんは私の知る限りしつこくて、めんどくさい女だよ」
そう言って朝日さんは僕の頭を撫でる。
「君の前ではカッコ付けていたかも知れないけどそういう女だ」
涙でくしゃくしゃの顔を上げると朝日さんが微笑んでいる。
「君のような素敵なやつを姉さんは諦めたりしないよ。だから君は君のまま進めばいい。そう遠くない未来で君と姉さんはまた交わるよ」
言葉があったかくて僕の希望を肯定してもらえるのが嬉しくて。一層涙が止まらない。
「朝日さん…少し胸貸してください」
「えっ!…あぁ、いいよ」
朝日さんの腰に手を回し静かに泣いた。落ち着くまで朝日さんは僕を抱きしめてくれていて、その雰囲気は先生との血の繋がりを感じた。
「ごめんなさい。ありがとうございます。落ち着きました」
「そう、それはよかった」
朝日さんをゆっくり離すと隣に腰掛けた。
「君は誰にでもこんなことを頼むのかい?」
「誰にでもというか、僕は先生と弥衣さんしかいませんでしたから」
「これからは気をつけた方がいい。男性の性犯罪の被害は多いの。今のだって相手が相手なら襲われたよ」
「でも、朝日さんは大丈夫でしょ?」
「姉さんはどうやってこんなに男の子を取り込んだんだか」
朝日さんはどこか呆れたように頭を抱える。
「気をつけるのは気をつけます」
「それがいい、何かあったら私を頼るといい力になる」
朝日さんは電話番号を書いた紙を僕に渡すと病院の中へ戻っていった。
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