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第53話 業務連絡に顔文字の方入れさして頂く形でよろしかったでしょうか
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――冗談じゃないよ。
地球は珍しく、比喩的に頭にきていた。珍しく――否、この太陽系宇宙の中に星として誕生して以来、四十五億五千万年来、初めてのことかも知れなかった。
――高度生命体を、加えるだって? 岩石の中に?
そのまま冷えて固まって、地球の――つまり自分の活動システム、ということは多分エネルギー循環サイクルのダイナミズム、或いは遷移するエネルギーそのものへの耐性が生まれる、だって?
――冗談じゃないよ!
「岩っちー」鯰が、どこか遠慮がちな声音で問いかけてくる。「あいつら何か、妙なこと言ってたけど……大丈夫なの?」そう問いかけておいて「……大丈夫、だよねえ」と、小さな声で付け足す。
「うん」地球は短く答えた。「大丈夫」
――そんなこと、どうして思いつけるんだ?
生命体というのは、神がこの地球上に――地球が知る限りでは地球上だけに、発生させ大切に護り育ててきたものだ。それを地殻に――いわば“地球のシンボル”ともいえる花崗岩の殻に融合させるという、恐るべき発想。
――私を、手中に収めたものとでも思い込んでいるのか?
そう思ううちにもむかむかと怒りが湧き起こってくる――とはいえそれが地球のコアやマントル、いわんや大気や海洋、それらの活動に圧力や温度の面で影響を与えるということは決してなかった。システムは飽くまでシステムとして、地球の気分や感情とは別の次元で地道に活動し続けるものなのだ。
ふう、と比喩的に息をつく。安全だ。まず安心していい。システムは狂わない。
とにかく、そんな、神が拵えた“異物”を、気安くこの星のシステムに組み入れて欲しくはない。誤解しているのかも知れないが、自分は生まれてからこの方、そんな意志をもって神の造りし生物たちを呑み込んできたことなど一度もないのだ。確かに、自分の活動の中に巻き込んでしまった生き物たちは、数え切れないほどいる、けれど。
――私は、
地球は比喩的に、ほんの少し眉をひそめた。
――神の影響を、多少受けてしまっているのかな。
何故そんなことを思うのかというと、
――哀しいと、思ってでもいるのかな。
まさか。地球はすぐに、比喩的に苦笑し否定した。
◇◆◇
「芽衣莉ちゃん。結城君。時中君」酒林が続けざまに呼びかける。「聞えてる?」
「聞えてないみたい」天津が首を振る。
「声が届いてない」木之花が叫ぶ。「恵比寿さん、システム見直して。急いで」
「今やってる」恵比寿が叫び返す。
「てっきり武器として買い取るつもりなのかと思ってたが」鹿島は厳しい表情で呟いた。「まさか防護壁の材料として活用しようとするなんてなあ」
「どっちにしてもあり得ない、ですよね」恵比寿も眉を思い切りしかめて応えた。
鹿島はただPCのモニタを厳しい表情のまま注視し続けていた。
「わあ」結城が目も口も真ん丸く開き呆けた声を挙げ、周囲をぐるりと見渡した。「消えた」
「音もしない」時中が右耳の後ろに手を当て音を探ろうと試みる。「地球が消したのか」
「皆さまどちらに行ってしまわれたのでしょうか」本原は左頬に左掌を当て問いかけた。「お亡くなりになったのですか」
「死んではいないと思う」時中は考えを述べた。「依代だけが消滅させられた……マヨイガは出現物だから、それも消された。我々は生身の人間で、無事――だということは、まだ神の保護下にあるということか」
「おーい」結城が両手を丸めて口に当て大声で呼ぶ。「天津さーん。酒林さーん。スサノオー」
「うるさい」時中は苦痛に顔を歪めコメントし、
「うるさい」本原が耳を塞ぎ苦情を述べた。
「馬ー」結城は最後にそう付け足してから両手を下ろし、「もしかして消えたの俺らの方だったりしてね」と眸をきらきらさせながら二人に向かって思いつきを伝える。
「ある意味ではそうとも言えるだろうな」時中が同意しながらも嬉しそうに顔を輝かせる結城からはすぐに目を逸らした。
「これから私たちはどうすればよいのでしょうか」本原は耳から手を離し問いかけた。
「どの方向に向かえばいいのか」時中は前後左右に視線を巡らせた。「わからないな」
「適当に進むか」結城は大きく一歩を踏み出すが、すぐに止まる。「でもこう真っ暗で後も先も見えないんじゃあなあ」
「ここはどこなのでしょうか」本原が上下を見渡す。「洞窟の中でしょうか」そして思い出したように、ウエストベルトから携帯してきた業務用の黒い端末を引き抜く。
その表面には、見たこともないような線文字――あるいは記号が並んでいた。
「バグってるじゃん」結城が覗き込んで言う。「使えねえな」
「動き始めました」本原が告げる。
その言葉通り、機器画面の上を白く輝く文字列――数列がくるくると回り出していた。
[皆、無事?]
突如、黒端末の画面にSNSのメッセンジャーさながらの日本語文字列が現れた。
「あれっ」結城が叫び、
「何だ」時中が確認し、
「まあ」本原が口を押えた。
メッセージ文の左側には、七福神の恵比寿のイラストがアイコンとして表示されている。[私、恵比寿です]そのアイコンから吹き出しが出、その中にそういった文言が示される。それはまさしく恵比寿神の自己紹介だった。
「よし、連絡取れた」鹿島部長がPCの前でガッツポーズを取る。
「あ」恵比寿は思わず笑顔を向ける。「はい、何とか」
「頑張れ、恵比寿君とやら」鹿島は恵比寿の方を見なかったが、PCに向かって激励した。「影ながら応援するぞ」
「――」恵比寿は笑顔を固まらせたまま、目をきょろきょろさせた。「――はい」ごく小さく返事する。
「恵比寿さん?」結城が訊き返す。「って、恵比寿課長? すか?」
[そうです]メッセージが出る。
「えっ、聞えるの?」結城が目を見開く。「ですか?」
[はい、聞えます]メッセージが出る。[他の社員にも聞えてます]
「皆さまどちらへいらっしゃったのですか」本原が、
「我々は今どういう状況なんですか」時中が、
「おほーすげえすげえさすが神システム」結城が、同時にそれぞれの思いを口にした。
メッセージが出るまで数秒のラグがあった。[天津君と酒林さんは皆さんの保護を続けています]
「そうなんだ」結城が言い、
「近くにいるのか」時中が言い、
「神さま」本原が両手を胸の前に組み合わせた。
[皆さんがいるのは、マリアナ海溝海底のホットスポットの下辺りです]
「えっ」
「何」
「まあ」恵比寿が返してきたメッセージに、新人たちは驚愕した。
「マリアナ海溝?」時中が眉をしかめ、
「またえらいとこまで来てんなおい」結城が目を見開き、
「車で海底まで来たのですか」本原が口を押えた。
[すぐに皆さんを現場まで戻すようにします]恵比寿のメッセージは続いた。[しばらくそのまま待機していて下さい]
「おお」結城が感慨の吐息を洩らす。
「待機ということは、ここから動くなという事ですね」時中が確認する。
「また車で移動するのでしょうか」本原が質問する。
[車が、出払ってしまってますので]恵比寿は申し訳なさそうな顔文字を交えてメッセージを寄越した。[神舟を差し向けます]
「カミフネ?」結城が訊き返し、
「神の舟か」時中が確認し、
「まあ」本原が頬を押える。「恵比寿さまや弁天さまなどがお乗りになっているお舟でしょうか」
[すみません、あれは宝船というもので、神舟とは別になります]恵比寿は再び、申し訳なさそうな顔文字を入れて返事を寄越した。
「ああ、じゃあ宝は乗ってないってことすね」結城が確認し、
「というか、実存するのか宝船というものは」時中が疑い、
「神さまがお乗りになっている舟なのでしょうか」本原が溜息混じりに囁く。
[一種の光速艇です]恵比寿は説明の文言を寄越した。
「あはは、誤変換してますよ。光の速さのコウソクテイになってる」結城が楽しげに笑って指摘する。
「高速艇なのか」時中が確認する。
「小さいお船なのですか」本原が質問する。
[そんなに大きくはないですが、速いですよ]恵比寿はそういうメッセージに続けて[一応光速で走ります]と繰り返した。
「まじか」結城が驚愕の声を出す。「ですか」
「大丈夫なのか」時中が危惧する。「人間が乗っても」
「三人乗れるのでしょうか」本原も確認する。「座れますか」
[大丈夫です]恵比寿はまた笑顔の顔文字をつける。
◇◆◇
「何邪魔してくれてんだよ」不服そうな声がどこからともなく聞えた。
スサノオだ。しかし地球は、それほど驚いたりしなかった。こうやって声をかけて来るだろうと、予測はついていたからだ。
「邪魔というか」スサノオはだるそうに息をつきながら続けた。「助けてくれた、てのか」
「あのまま放っておくと、マグマの熱で融けてしまってたからね」地球は答える。「退散してもらおうと思って」
「けど新人たちはまだあそこに残ってるだろ」スサノオは問う。
「対話用の空洞にいない限り、人間を直接扱うことはできないよ」地球は説明する。「出現物と同様の、分子レベルにまで分解するって扱いは」
「マヨイガは分解されたんだな」スサノオはまた問う。「もう奴は出現できないってわけか」
「いや、どうだろうね」地球は比喩的に首を傾げた。「私も出現物がどうして出現するのか、よく知らないんだ」
「ふうん」スサノオは少し考えている様子だった。「また“出現”して新人を攫いに来る可能性も、ゼロじゃあないって事か」
「後は神たちが早々にあの三人を運んで行ってくれればいいだけなんだけど……君は手伝わないの」地球はスサノオに訊ねた。
「俺が?」スサノオは不服そうな声を挙げた。「なんで俺が手伝うんだよ」
「だって君があんな場所まで連れて来たんでしょ、三人を」地球は指摘した。
「ああ」スサノオは悪びれもせず肯定する。「お前と対話させる為の空洞、用意してたんだよ」
「まだ残ってるの?」地球は問う。
「もちろん」スサノオの声に笑いが混じる。「まだあるぜ。お前があいつらを、分子レベルにまで分解できる空間な」
地球は珍しく、比喩的に頭にきていた。珍しく――否、この太陽系宇宙の中に星として誕生して以来、四十五億五千万年来、初めてのことかも知れなかった。
――高度生命体を、加えるだって? 岩石の中に?
そのまま冷えて固まって、地球の――つまり自分の活動システム、ということは多分エネルギー循環サイクルのダイナミズム、或いは遷移するエネルギーそのものへの耐性が生まれる、だって?
――冗談じゃないよ!
「岩っちー」鯰が、どこか遠慮がちな声音で問いかけてくる。「あいつら何か、妙なこと言ってたけど……大丈夫なの?」そう問いかけておいて「……大丈夫、だよねえ」と、小さな声で付け足す。
「うん」地球は短く答えた。「大丈夫」
――そんなこと、どうして思いつけるんだ?
生命体というのは、神がこの地球上に――地球が知る限りでは地球上だけに、発生させ大切に護り育ててきたものだ。それを地殻に――いわば“地球のシンボル”ともいえる花崗岩の殻に融合させるという、恐るべき発想。
――私を、手中に収めたものとでも思い込んでいるのか?
そう思ううちにもむかむかと怒りが湧き起こってくる――とはいえそれが地球のコアやマントル、いわんや大気や海洋、それらの活動に圧力や温度の面で影響を与えるということは決してなかった。システムは飽くまでシステムとして、地球の気分や感情とは別の次元で地道に活動し続けるものなのだ。
ふう、と比喩的に息をつく。安全だ。まず安心していい。システムは狂わない。
とにかく、そんな、神が拵えた“異物”を、気安くこの星のシステムに組み入れて欲しくはない。誤解しているのかも知れないが、自分は生まれてからこの方、そんな意志をもって神の造りし生物たちを呑み込んできたことなど一度もないのだ。確かに、自分の活動の中に巻き込んでしまった生き物たちは、数え切れないほどいる、けれど。
――私は、
地球は比喩的に、ほんの少し眉をひそめた。
――神の影響を、多少受けてしまっているのかな。
何故そんなことを思うのかというと、
――哀しいと、思ってでもいるのかな。
まさか。地球はすぐに、比喩的に苦笑し否定した。
◇◆◇
「芽衣莉ちゃん。結城君。時中君」酒林が続けざまに呼びかける。「聞えてる?」
「聞えてないみたい」天津が首を振る。
「声が届いてない」木之花が叫ぶ。「恵比寿さん、システム見直して。急いで」
「今やってる」恵比寿が叫び返す。
「てっきり武器として買い取るつもりなのかと思ってたが」鹿島は厳しい表情で呟いた。「まさか防護壁の材料として活用しようとするなんてなあ」
「どっちにしてもあり得ない、ですよね」恵比寿も眉を思い切りしかめて応えた。
鹿島はただPCのモニタを厳しい表情のまま注視し続けていた。
「わあ」結城が目も口も真ん丸く開き呆けた声を挙げ、周囲をぐるりと見渡した。「消えた」
「音もしない」時中が右耳の後ろに手を当て音を探ろうと試みる。「地球が消したのか」
「皆さまどちらに行ってしまわれたのでしょうか」本原は左頬に左掌を当て問いかけた。「お亡くなりになったのですか」
「死んではいないと思う」時中は考えを述べた。「依代だけが消滅させられた……マヨイガは出現物だから、それも消された。我々は生身の人間で、無事――だということは、まだ神の保護下にあるということか」
「おーい」結城が両手を丸めて口に当て大声で呼ぶ。「天津さーん。酒林さーん。スサノオー」
「うるさい」時中は苦痛に顔を歪めコメントし、
「うるさい」本原が耳を塞ぎ苦情を述べた。
「馬ー」結城は最後にそう付け足してから両手を下ろし、「もしかして消えたの俺らの方だったりしてね」と眸をきらきらさせながら二人に向かって思いつきを伝える。
「ある意味ではそうとも言えるだろうな」時中が同意しながらも嬉しそうに顔を輝かせる結城からはすぐに目を逸らした。
「これから私たちはどうすればよいのでしょうか」本原は耳から手を離し問いかけた。
「どの方向に向かえばいいのか」時中は前後左右に視線を巡らせた。「わからないな」
「適当に進むか」結城は大きく一歩を踏み出すが、すぐに止まる。「でもこう真っ暗で後も先も見えないんじゃあなあ」
「ここはどこなのでしょうか」本原が上下を見渡す。「洞窟の中でしょうか」そして思い出したように、ウエストベルトから携帯してきた業務用の黒い端末を引き抜く。
その表面には、見たこともないような線文字――あるいは記号が並んでいた。
「バグってるじゃん」結城が覗き込んで言う。「使えねえな」
「動き始めました」本原が告げる。
その言葉通り、機器画面の上を白く輝く文字列――数列がくるくると回り出していた。
[皆、無事?]
突如、黒端末の画面にSNSのメッセンジャーさながらの日本語文字列が現れた。
「あれっ」結城が叫び、
「何だ」時中が確認し、
「まあ」本原が口を押えた。
メッセージ文の左側には、七福神の恵比寿のイラストがアイコンとして表示されている。[私、恵比寿です]そのアイコンから吹き出しが出、その中にそういった文言が示される。それはまさしく恵比寿神の自己紹介だった。
「よし、連絡取れた」鹿島部長がPCの前でガッツポーズを取る。
「あ」恵比寿は思わず笑顔を向ける。「はい、何とか」
「頑張れ、恵比寿君とやら」鹿島は恵比寿の方を見なかったが、PCに向かって激励した。「影ながら応援するぞ」
「――」恵比寿は笑顔を固まらせたまま、目をきょろきょろさせた。「――はい」ごく小さく返事する。
「恵比寿さん?」結城が訊き返す。「って、恵比寿課長? すか?」
[そうです]メッセージが出る。
「えっ、聞えるの?」結城が目を見開く。「ですか?」
[はい、聞えます]メッセージが出る。[他の社員にも聞えてます]
「皆さまどちらへいらっしゃったのですか」本原が、
「我々は今どういう状況なんですか」時中が、
「おほーすげえすげえさすが神システム」結城が、同時にそれぞれの思いを口にした。
メッセージが出るまで数秒のラグがあった。[天津君と酒林さんは皆さんの保護を続けています]
「そうなんだ」結城が言い、
「近くにいるのか」時中が言い、
「神さま」本原が両手を胸の前に組み合わせた。
[皆さんがいるのは、マリアナ海溝海底のホットスポットの下辺りです]
「えっ」
「何」
「まあ」恵比寿が返してきたメッセージに、新人たちは驚愕した。
「マリアナ海溝?」時中が眉をしかめ、
「またえらいとこまで来てんなおい」結城が目を見開き、
「車で海底まで来たのですか」本原が口を押えた。
[すぐに皆さんを現場まで戻すようにします]恵比寿のメッセージは続いた。[しばらくそのまま待機していて下さい]
「おお」結城が感慨の吐息を洩らす。
「待機ということは、ここから動くなという事ですね」時中が確認する。
「また車で移動するのでしょうか」本原が質問する。
[車が、出払ってしまってますので]恵比寿は申し訳なさそうな顔文字を交えてメッセージを寄越した。[神舟を差し向けます]
「カミフネ?」結城が訊き返し、
「神の舟か」時中が確認し、
「まあ」本原が頬を押える。「恵比寿さまや弁天さまなどがお乗りになっているお舟でしょうか」
[すみません、あれは宝船というもので、神舟とは別になります]恵比寿は再び、申し訳なさそうな顔文字を入れて返事を寄越した。
「ああ、じゃあ宝は乗ってないってことすね」結城が確認し、
「というか、実存するのか宝船というものは」時中が疑い、
「神さまがお乗りになっている舟なのでしょうか」本原が溜息混じりに囁く。
[一種の光速艇です]恵比寿は説明の文言を寄越した。
「あはは、誤変換してますよ。光の速さのコウソクテイになってる」結城が楽しげに笑って指摘する。
「高速艇なのか」時中が確認する。
「小さいお船なのですか」本原が質問する。
[そんなに大きくはないですが、速いですよ]恵比寿はそういうメッセージに続けて[一応光速で走ります]と繰り返した。
「まじか」結城が驚愕の声を出す。「ですか」
「大丈夫なのか」時中が危惧する。「人間が乗っても」
「三人乗れるのでしょうか」本原も確認する。「座れますか」
[大丈夫です]恵比寿はまた笑顔の顔文字をつける。
◇◆◇
「何邪魔してくれてんだよ」不服そうな声がどこからともなく聞えた。
スサノオだ。しかし地球は、それほど驚いたりしなかった。こうやって声をかけて来るだろうと、予測はついていたからだ。
「邪魔というか」スサノオはだるそうに息をつきながら続けた。「助けてくれた、てのか」
「あのまま放っておくと、マグマの熱で融けてしまってたからね」地球は答える。「退散してもらおうと思って」
「けど新人たちはまだあそこに残ってるだろ」スサノオは問う。
「対話用の空洞にいない限り、人間を直接扱うことはできないよ」地球は説明する。「出現物と同様の、分子レベルにまで分解するって扱いは」
「マヨイガは分解されたんだな」スサノオはまた問う。「もう奴は出現できないってわけか」
「いや、どうだろうね」地球は比喩的に首を傾げた。「私も出現物がどうして出現するのか、よく知らないんだ」
「ふうん」スサノオは少し考えている様子だった。「また“出現”して新人を攫いに来る可能性も、ゼロじゃあないって事か」
「後は神たちが早々にあの三人を運んで行ってくれればいいだけなんだけど……君は手伝わないの」地球はスサノオに訊ねた。
「俺が?」スサノオは不服そうな声を挙げた。「なんで俺が手伝うんだよ」
「だって君があんな場所まで連れて来たんでしょ、三人を」地球は指摘した。
「ああ」スサノオは悪びれもせず肯定する。「お前と対話させる為の空洞、用意してたんだよ」
「まだ残ってるの?」地球は問う。
「もちろん」スサノオの声に笑いが混じる。「まだあるぜ。お前があいつらを、分子レベルにまで分解できる空間な」
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