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「先日はチャールズが失礼した。」
ダンスの途中であった。急にルイ王子殿下が詫びを入れて来た。色ボケ阿呆王子と心の中では既にコテンパンにしていたソフィアであったが、これには意外で少しばかり驚いた。
「いいえ、ご実家の伯爵家からもお詫びの文を頂戴しております。」
「はは、流石はソフィア嬢だね。」
ん?ん?なんか調子が狂う。
色ボケ阿呆が常識を語っている。
まあ、有らぬ疑いを掛けられて悪様に非難されるよりはずっとマシなので、王子の謝罪を受け取る事にした。
「青いリボンが好きなのかい?」
「?」
そうだ、今日は姉から貰った青いリボンを髪に結んでいた。
「良ければ僕からも贈らせてはもらえないだろうか。」
くれると言うなら貰おうではないか。
王子らしい常識的な態度にすっかり調子が狂ってしまったソフィアは、
「有難うございます。大切に致しますわ。」
思ってもいない返答をしてしまった。
「はは、君に喜んでもらえるとはね。」
何か悪い物でも食べたのだろうか?
王子の様子が変である。
ん?ん?と首を傾げたままダンスを終えたのであった。
意外な事に、王子とはダンスの相性は良かった。
ソフィアをホールドする腕は、見目は細いのに筋肉が付いているのが分かった。あれは多分鍛えている。
ターンをした際に、切りそろえた金の髪がふわりと広がって、それが羽衣のように美しかった。
ダンスの授業は、学園の休みの日を選んで、婚約者候補と第二王子が揃って行われる。
授業が終われば茶会の時間で、そこで仲を深めさせようと云う王家の目論見らしい。
けれども、王宮のお茶は格別に美味しい。
ソフィアはこのお茶会を楽しみにしているのであった。
煩わしいお喋りは公爵家令嬢のお姉様方が熟して下さる。
おっとりと人当たりの良いアナスタシアは頷きの女神、聞き上手である。
であればソフィアも、大人しく耳を傾ける風にひたすら紅茶を楽しむのであった。
時折、思い出したように王子から話題を振られるも、のらりくらり適当に答えていた。
そんな時に爆弾は投下された。
「ルイ殿下、わたくし少しばかり気になる事がありますの。」
公爵家令嬢が王子に問う。
「あの、アマンダと云う学生ですわ。彼女と殿下が近しくお付き合いをなさっておられるとかで、それは真のことなのでしょうか?」
良くぞ言ってくれたご令嬢。
「何かと不躾なご令嬢らしいですわね。殿下もお気をつけて下さいませ。」
いいぞいいぞ、もっと言ってやれー。
途端に瞳に光が宿ったソフィアに、アナスタシアが少しばかり引いている。
さあさあ、王子。どう出る?
ソフィアはわくわくと王子とご令嬢を交互に見る。すると、思わず王子と目が合った。え?私、何も言っておりませんよ。
戸惑うソフィアを置いてルイ王子殿下が答えた。
「彼女は学園での友人だよ。平民から貴族社会に入ったばかりで、まだ貴族の生活に慣れないらしくてね。少しばかり人付き合いが上手く出来ずにいるんだ。僕は話し相手をしているだけだよ。」
失望である。
可怪しい事は可怪しいのだ。
そこには、貴族も平民も有りはしない。
平民だからこそ貴族との付き合いに礼を欠かさないのだ。
大丈夫?
この王子、こんなに青く澄んだ瞳を持ちながら、さてはその瞳は節穴だな?
王子がこんなんだから側近が阿呆で当然か。
ダンスの授業で交わした会話が思いの外常識的で、寧ろ心地の良いものであったから、ソフィアの失望は余計に大きかった。
あんな軽薄で、子供でも付かない様な愚かな嘘を並べる人物に、違和感を感じない王子の危機管理能力の無さ。
この国、大丈夫?
胸の中のもやもやを発散出来ずにいた頃に、思わぬ来客があった。
「ご令嬢方、寛いでおられるか?弟を宜しく頼むよ。」
王太子殿下その人であった。
ロイヤルブルーの瞳が美しい。
誰かさんと同じ瞳だと言うのに、この方の瞳はきっと真実を見抜くのでしょうね。
ソフィアは、ついそんな贔屓な事すら考えてしまうのであった。
ダンスの途中であった。急にルイ王子殿下が詫びを入れて来た。色ボケ阿呆王子と心の中では既にコテンパンにしていたソフィアであったが、これには意外で少しばかり驚いた。
「いいえ、ご実家の伯爵家からもお詫びの文を頂戴しております。」
「はは、流石はソフィア嬢だね。」
ん?ん?なんか調子が狂う。
色ボケ阿呆が常識を語っている。
まあ、有らぬ疑いを掛けられて悪様に非難されるよりはずっとマシなので、王子の謝罪を受け取る事にした。
「青いリボンが好きなのかい?」
「?」
そうだ、今日は姉から貰った青いリボンを髪に結んでいた。
「良ければ僕からも贈らせてはもらえないだろうか。」
くれると言うなら貰おうではないか。
王子らしい常識的な態度にすっかり調子が狂ってしまったソフィアは、
「有難うございます。大切に致しますわ。」
思ってもいない返答をしてしまった。
「はは、君に喜んでもらえるとはね。」
何か悪い物でも食べたのだろうか?
王子の様子が変である。
ん?ん?と首を傾げたままダンスを終えたのであった。
意外な事に、王子とはダンスの相性は良かった。
ソフィアをホールドする腕は、見目は細いのに筋肉が付いているのが分かった。あれは多分鍛えている。
ターンをした際に、切りそろえた金の髪がふわりと広がって、それが羽衣のように美しかった。
ダンスの授業は、学園の休みの日を選んで、婚約者候補と第二王子が揃って行われる。
授業が終われば茶会の時間で、そこで仲を深めさせようと云う王家の目論見らしい。
けれども、王宮のお茶は格別に美味しい。
ソフィアはこのお茶会を楽しみにしているのであった。
煩わしいお喋りは公爵家令嬢のお姉様方が熟して下さる。
おっとりと人当たりの良いアナスタシアは頷きの女神、聞き上手である。
であればソフィアも、大人しく耳を傾ける風にひたすら紅茶を楽しむのであった。
時折、思い出したように王子から話題を振られるも、のらりくらり適当に答えていた。
そんな時に爆弾は投下された。
「ルイ殿下、わたくし少しばかり気になる事がありますの。」
公爵家令嬢が王子に問う。
「あの、アマンダと云う学生ですわ。彼女と殿下が近しくお付き合いをなさっておられるとかで、それは真のことなのでしょうか?」
良くぞ言ってくれたご令嬢。
「何かと不躾なご令嬢らしいですわね。殿下もお気をつけて下さいませ。」
いいぞいいぞ、もっと言ってやれー。
途端に瞳に光が宿ったソフィアに、アナスタシアが少しばかり引いている。
さあさあ、王子。どう出る?
ソフィアはわくわくと王子とご令嬢を交互に見る。すると、思わず王子と目が合った。え?私、何も言っておりませんよ。
戸惑うソフィアを置いてルイ王子殿下が答えた。
「彼女は学園での友人だよ。平民から貴族社会に入ったばかりで、まだ貴族の生活に慣れないらしくてね。少しばかり人付き合いが上手く出来ずにいるんだ。僕は話し相手をしているだけだよ。」
失望である。
可怪しい事は可怪しいのだ。
そこには、貴族も平民も有りはしない。
平民だからこそ貴族との付き合いに礼を欠かさないのだ。
大丈夫?
この王子、こんなに青く澄んだ瞳を持ちながら、さてはその瞳は節穴だな?
王子がこんなんだから側近が阿呆で当然か。
ダンスの授業で交わした会話が思いの外常識的で、寧ろ心地の良いものであったから、ソフィアの失望は余計に大きかった。
あんな軽薄で、子供でも付かない様な愚かな嘘を並べる人物に、違和感を感じない王子の危機管理能力の無さ。
この国、大丈夫?
胸の中のもやもやを発散出来ずにいた頃に、思わぬ来客があった。
「ご令嬢方、寛いでおられるか?弟を宜しく頼むよ。」
王太子殿下その人であった。
ロイヤルブルーの瞳が美しい。
誰かさんと同じ瞳だと言うのに、この方の瞳はきっと真実を見抜くのでしょうね。
ソフィアは、ついそんな贔屓な事すら考えてしまうのであった。
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