ままならないのが恋心

桃井すもも

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正直な気持ちを伝えましょう

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あれから図書室での試験勉強を諦めて、邸で大人しく勉強した。

ひたむきに机に向かう私の姿を、侍女も両親も、何処か痛ましく見ていたらしい。

試験も終わり暫く経った頃、夕食の席で正直に話した。

トーマス様には他に愛を覚えるご令嬢がいらっしゃる。
同じ学園の同じ教室で、共に学び共に愛を育んでおられる。

だから、この婚約を解消したい、と。

それは無理な話だとは、両親は言わなかった。

すっかり足の途絶えた婚約者、最近の私の様子。

何より、例の発熱時に、娘を失う恐怖を感じたらしく、生きていてくれるならそれで良い、と云う位に心配してくれていたらしい。

「貴女は同席せずとも良いわ」
後は任せておきなさいね、と母は言ってくれた。

婚約の解消は滞り無く行われた。
トーマス様は同席されず、両親達による大人の話し合いであった。

こんなにも簡単に無くなる縁なのね。
思えば、憂いのない付き合いが出来たのは僅か一年程であった。
彼にしてみれば、それから先の、彼女と出会った学園での年月の方が長いのだ。

心が傷まないわけが無い。
慕っていたのだもの。
この方の将来の妻として生きて行くのだ領地領民の為に生きるのだと心に決めて、いいえ、そんな建前ではなくて、ただ恋していたのだ。

失恋したのだわ。もうとっくにしていたのを、やっと手放したのだわ。

グッジョブ自分と褒めてあげたい。
正直な言葉を伝えられて、両親がそれを受け止めてくれて、最善の方法を取ってくれた。

「終わったのね」

独り言を言ったのだけれど、側に居た侍女のエレンに聞こえてしまったかもしれない。

優しい彼女はきっと胸を痛めていることだろう。

少ししたら、今後の事を考えよう。

少ししたら。今直ぐは少々辛いから。



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