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【29】✻
✻センシティブなシーンがございます。ご不安な方は読み飛ばして下さい。
澄んだ冬の空気にフレデリックの声が響く。
一言一言、彼が言葉を紡ぐ度に白い息が辺りに滲んで見えた。
学園でも、生徒会会長として壇上で演説をするフレデリックは堂々としていた。
耳に馴染む声音、一人一人に視線を合わせる誠実な眼差し。彼が何かを語ると、聴く人はすぐ先の未来に明るい兆しを感じとる。
今もこれほどの群衆に囲まれているのに、辺りは水を打った様に静まり返って、民の視点に降りて解かりやすい言葉で語り掛けるフレデリックのスピーチに誰もが聴き入っていた。
群衆の中には貴族の姿も見えた。女子供の姿もある。
フレデリックの統治する、この先の世界を見たいとイーディスはその背中に思った。
イーディスはロレインの背後にいる護衛の更に背後に控えていた。
スピーチは終盤に差し掛かっている。ロレインにとっては久しぶりの公務であった。それでも寒空に立つロレインの後ろ姿は揺るぎもせずに、長い睫毛がフレデリックを向いているのが後ろからも見えていた。
耳に痛みを感じるほどの喝采と拍手を浴びて、フレデリックのスピーチが終わった。忽ち辺りは騒然となり、その大半がフレデリックとロレインの名を呼ぶ声だった。騎士達に誘導されてその場を離れてからも、背後からカーテンコールのように、フレデリック殿下万歳、ロレイン妃万歳と響いて聴こえる。
少し歩くとその先は群衆の出入りを禁じているらしく、路沿いには護衛の騎士達が立ち並んでいた。
近衛騎士に四方を囲まれフレデリックが先に歩く。ロレインもまたイーディスを隣りに侍らせ騎士等に護られ石畳を歩いた。
「ロレイン様、寒くはございませんか?」
イーディスはロレインの身体が冷えてしまったのではないかと気が気でなかった。今すぐコートの上からファーを羽織らせ温めてあげたい。
だが、イーディスの心配を余所に、ロレインの頬は紅潮していた。薄っすら笑みを浮かべながら、
「フレデリック様は素晴らしかったわ。私、時が経つのを忘れていたの。ちっとも寒くなんてなかったわ」
そう、まるで自分自身に聞かせるように囁いた。
前方には騎士に囲まれるフレデリック。ジェフリーの赤髪が目印になっていた。直ぐ後ろをついて行った筈なのに、凍てつく路面をそろそろと歩むうちに、フレデリックとロレインの距離が少しずつ離れていく。
護衛もそれを承知して、ロレインが転倒などしない事を最優先に、歩みを急がせることはしなかった。
後ろにロレインの気配が無いのに気付いたのか、フレデリックが立ち止まりこちらを振り返った。
日陰の路面は凍結してツルツルと滑る。フレデリックや騎士等のブーツには金具が着いているから冬道も闊歩出来るが、生憎ロレインはそうは行かない。ブーツに滑り止めのリボンを巻いて、今もどうにか滑らず歩いているが、そもそもの歩幅が違う。一層のこと、フレデリックに許しを乞うて近衛騎士にロレインを抱えて欲しいとイーディスは思った。
フレデリックがこちらへ引き返そうとしたのか、側にいた騎士が声を掛けて止めている。イーディスはロレインの手を握り、慌てぬ様に転ばぬ様に、焦って無理な早足になるロレインを抑えながら歩いた。
路の向こうに王家の馬車が見えている。ロレインはそろそろ息が上がり始めていた。着膨れているからドレスも重い。慣れない冬道に焦る心。
イーディスはロレインが馬車を乗り込むまで、一瞬も気を抜かない様にと神経を集中させた。
それは突然の事だった。声ひとつ上がらなかったから解らなかった。ただならぬ気配に一瞬で場の空気が変わった。それに気付いた瞬間、馬車のすぐ手前の横道から、数人の男が現れた。横に延びる通路の左右、どちらからもばらばらと現れた得体の解らない男達。
「ロレイン様」
イーディスは透かさすロレインの肩を抱き寄せ歩みを止めた。刺客はフレデリックを狙うのか、それともこちらへ向かって来るのか。ばくばくと耳まで響く鼓動が胸を打って痛みを感じた。
護衛騎士が忽ちロレインを取り囲む。フレデリックも多分そうだろう。
「フレデリック様!」
「なりません、ロレイン様っ」
フレデリックへ駆け出そうと藻掻くロレインだったが、キンと響いた金属音に身体を硬直させて動きを止めた。
「い、い、イーディス、」
ロレインがひしとイーディスにしがみ付く。分厚いコート越しにロレインの身体が震え慄いているのが解って、イーディスはロレインを抱き寄せた。
激しく刃を打ち合う音。やあ!と響く太い声。
ロレインの視界を塞ぐ様に正面に背を向けて、イーディスはロレインを抱き締めた。
先を歩いていたフレデリック達が最初の標的になって、刺客はまだこちらへは来ていない。後ろへ逃げるべきか、だが、足の竦んでしまったロレインはもう一歩も歩けない。ならばここでロレインを護り切るより他は無い。
金属音が激しさを増す。フレデリックは無事なのか、ジェフリーは、近衛騎士等はどうなっている。
イーディスは、背を向けてロレインを抱き締めていたのを顔だけ振り返り、前方のフレデリック達を確かめた。
赤髪が舞っていた。
頭一つ大きなジェフリーが剣を振り翳している。背中にフレデリックを庇い、ぶつかる勢いで飛び込んで来た刺客を真正面から討ち取った。遠目で赤く見えたのは、ジェフリーの赤髪の残像か飛び散った返り血か。
一人、二人と刺客が倒れ、残ったうちの一人がこちらを見たのが解った。
来る。
イーディスは覚悟を決めて、ロレインに覆いかぶさった。ジェフリーがフレデリックを護るなら、イーディスの役目はただ一つ。未来の王国の頂に耀く二つの星を護り抜かねばならない。
スピーチをするフレデリックの後ろ姿が思い出された。それを見つめるロレインの横顔。王国の未来を担う二人の姿。
ロレインを護衛していた騎士達が前に進み、迎え討つのに走り出た。その隙を縫うように、騎士の間からするりと抜け出て刺客がこちらへ駆けて来る。
「イーディス!」
叫ぶ声はフレデリックの声に聴こえた。バタバタとぶつかり合う音がして、何者かが倒れて、それも走り寄って来る刺客に重なって見えなかった。
「イーディス!!」
振り返ったまま身体が自由を失って、イーディスはロレインを抱き締め震える腕に力を込めた。精一杯の力を振り絞って我が身を盾にロレインを抱え込む。
フレデリックの声と同時に刺客が剣を振り上げた。そのまま勢いを逃す事なく振り下ろそうとして、糸が切れた様に膝から崩れ落ちた。
ジェフリーが、イーディスに振り被った刺客を背中から斬り捨てた。頬に返り血を浴びている。頬ばかりか、肩も胸も血塗れで、瞳の深い森の色まで赤く見える様だった。
ジェフリーは鬼神であった。燃え滾る眼を憤怒に怒らせ大鉈を振るう鬼であった。
視界の端にフレデリックが見えた。こちらに来ようとするのを護衛達に止められている。
途端、地面を蹴る靴音がして、
「ジェフリー様!」
そこからは時が止まった様だった。細切れの活動写真を観るように、ひとコマひとコマゆっくりと目の前に展開される。ジェフリーの背後が一瞬キラリと光って、斜めに閃光が走って見えた。次の瞬間、ジェフリーの肩から何かが飛び散り、それがイーディスの頬にかかった。
背後から袈裟懸けに斬られたジェフリーの、熱い血飛沫がイーディスに降りかかる。
「ジェフリー様!!」
ジェフリーはイーディスを見つめながら、がくりと片膝を突いた。
真っ赤に染まったジェフリーを最後に、イーディスの目の前もまた真っ赤に染まった。
イーディスの世界はそこで閉じた。
澄んだ冬の空気にフレデリックの声が響く。
一言一言、彼が言葉を紡ぐ度に白い息が辺りに滲んで見えた。
学園でも、生徒会会長として壇上で演説をするフレデリックは堂々としていた。
耳に馴染む声音、一人一人に視線を合わせる誠実な眼差し。彼が何かを語ると、聴く人はすぐ先の未来に明るい兆しを感じとる。
今もこれほどの群衆に囲まれているのに、辺りは水を打った様に静まり返って、民の視点に降りて解かりやすい言葉で語り掛けるフレデリックのスピーチに誰もが聴き入っていた。
群衆の中には貴族の姿も見えた。女子供の姿もある。
フレデリックの統治する、この先の世界を見たいとイーディスはその背中に思った。
イーディスはロレインの背後にいる護衛の更に背後に控えていた。
スピーチは終盤に差し掛かっている。ロレインにとっては久しぶりの公務であった。それでも寒空に立つロレインの後ろ姿は揺るぎもせずに、長い睫毛がフレデリックを向いているのが後ろからも見えていた。
耳に痛みを感じるほどの喝采と拍手を浴びて、フレデリックのスピーチが終わった。忽ち辺りは騒然となり、その大半がフレデリックとロレインの名を呼ぶ声だった。騎士達に誘導されてその場を離れてからも、背後からカーテンコールのように、フレデリック殿下万歳、ロレイン妃万歳と響いて聴こえる。
少し歩くとその先は群衆の出入りを禁じているらしく、路沿いには護衛の騎士達が立ち並んでいた。
近衛騎士に四方を囲まれフレデリックが先に歩く。ロレインもまたイーディスを隣りに侍らせ騎士等に護られ石畳を歩いた。
「ロレイン様、寒くはございませんか?」
イーディスはロレインの身体が冷えてしまったのではないかと気が気でなかった。今すぐコートの上からファーを羽織らせ温めてあげたい。
だが、イーディスの心配を余所に、ロレインの頬は紅潮していた。薄っすら笑みを浮かべながら、
「フレデリック様は素晴らしかったわ。私、時が経つのを忘れていたの。ちっとも寒くなんてなかったわ」
そう、まるで自分自身に聞かせるように囁いた。
前方には騎士に囲まれるフレデリック。ジェフリーの赤髪が目印になっていた。直ぐ後ろをついて行った筈なのに、凍てつく路面をそろそろと歩むうちに、フレデリックとロレインの距離が少しずつ離れていく。
護衛もそれを承知して、ロレインが転倒などしない事を最優先に、歩みを急がせることはしなかった。
後ろにロレインの気配が無いのに気付いたのか、フレデリックが立ち止まりこちらを振り返った。
日陰の路面は凍結してツルツルと滑る。フレデリックや騎士等のブーツには金具が着いているから冬道も闊歩出来るが、生憎ロレインはそうは行かない。ブーツに滑り止めのリボンを巻いて、今もどうにか滑らず歩いているが、そもそもの歩幅が違う。一層のこと、フレデリックに許しを乞うて近衛騎士にロレインを抱えて欲しいとイーディスは思った。
フレデリックがこちらへ引き返そうとしたのか、側にいた騎士が声を掛けて止めている。イーディスはロレインの手を握り、慌てぬ様に転ばぬ様に、焦って無理な早足になるロレインを抑えながら歩いた。
路の向こうに王家の馬車が見えている。ロレインはそろそろ息が上がり始めていた。着膨れているからドレスも重い。慣れない冬道に焦る心。
イーディスはロレインが馬車を乗り込むまで、一瞬も気を抜かない様にと神経を集中させた。
それは突然の事だった。声ひとつ上がらなかったから解らなかった。ただならぬ気配に一瞬で場の空気が変わった。それに気付いた瞬間、馬車のすぐ手前の横道から、数人の男が現れた。横に延びる通路の左右、どちらからもばらばらと現れた得体の解らない男達。
「ロレイン様」
イーディスは透かさすロレインの肩を抱き寄せ歩みを止めた。刺客はフレデリックを狙うのか、それともこちらへ向かって来るのか。ばくばくと耳まで響く鼓動が胸を打って痛みを感じた。
護衛騎士が忽ちロレインを取り囲む。フレデリックも多分そうだろう。
「フレデリック様!」
「なりません、ロレイン様っ」
フレデリックへ駆け出そうと藻掻くロレインだったが、キンと響いた金属音に身体を硬直させて動きを止めた。
「い、い、イーディス、」
ロレインがひしとイーディスにしがみ付く。分厚いコート越しにロレインの身体が震え慄いているのが解って、イーディスはロレインを抱き寄せた。
激しく刃を打ち合う音。やあ!と響く太い声。
ロレインの視界を塞ぐ様に正面に背を向けて、イーディスはロレインを抱き締めた。
先を歩いていたフレデリック達が最初の標的になって、刺客はまだこちらへは来ていない。後ろへ逃げるべきか、だが、足の竦んでしまったロレインはもう一歩も歩けない。ならばここでロレインを護り切るより他は無い。
金属音が激しさを増す。フレデリックは無事なのか、ジェフリーは、近衛騎士等はどうなっている。
イーディスは、背を向けてロレインを抱き締めていたのを顔だけ振り返り、前方のフレデリック達を確かめた。
赤髪が舞っていた。
頭一つ大きなジェフリーが剣を振り翳している。背中にフレデリックを庇い、ぶつかる勢いで飛び込んで来た刺客を真正面から討ち取った。遠目で赤く見えたのは、ジェフリーの赤髪の残像か飛び散った返り血か。
一人、二人と刺客が倒れ、残ったうちの一人がこちらを見たのが解った。
来る。
イーディスは覚悟を決めて、ロレインに覆いかぶさった。ジェフリーがフレデリックを護るなら、イーディスの役目はただ一つ。未来の王国の頂に耀く二つの星を護り抜かねばならない。
スピーチをするフレデリックの後ろ姿が思い出された。それを見つめるロレインの横顔。王国の未来を担う二人の姿。
ロレインを護衛していた騎士達が前に進み、迎え討つのに走り出た。その隙を縫うように、騎士の間からするりと抜け出て刺客がこちらへ駆けて来る。
「イーディス!」
叫ぶ声はフレデリックの声に聴こえた。バタバタとぶつかり合う音がして、何者かが倒れて、それも走り寄って来る刺客に重なって見えなかった。
「イーディス!!」
振り返ったまま身体が自由を失って、イーディスはロレインを抱き締め震える腕に力を込めた。精一杯の力を振り絞って我が身を盾にロレインを抱え込む。
フレデリックの声と同時に刺客が剣を振り上げた。そのまま勢いを逃す事なく振り下ろそうとして、糸が切れた様に膝から崩れ落ちた。
ジェフリーが、イーディスに振り被った刺客を背中から斬り捨てた。頬に返り血を浴びている。頬ばかりか、肩も胸も血塗れで、瞳の深い森の色まで赤く見える様だった。
ジェフリーは鬼神であった。燃え滾る眼を憤怒に怒らせ大鉈を振るう鬼であった。
視界の端にフレデリックが見えた。こちらに来ようとするのを護衛達に止められている。
途端、地面を蹴る靴音がして、
「ジェフリー様!」
そこからは時が止まった様だった。細切れの活動写真を観るように、ひとコマひとコマゆっくりと目の前に展開される。ジェフリーの背後が一瞬キラリと光って、斜めに閃光が走って見えた。次の瞬間、ジェフリーの肩から何かが飛び散り、それがイーディスの頬にかかった。
背後から袈裟懸けに斬られたジェフリーの、熱い血飛沫がイーディスに降りかかる。
「ジェフリー様!!」
ジェフリーはイーディスを見つめながら、がくりと片膝を突いた。
真っ赤に染まったジェフリーを最後に、イーディスの目の前もまた真っ赤に染まった。
イーディスの世界はそこで閉じた。
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